This Category : 西尾維新

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『囮物語』 著/西尾維新

2011.07.01 *Fri
囮物語 (講談社BOX)囮物語 (講談社BOX)
(2011/06/29)
西尾 維新

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 誰かを好きになると言うのはとても素敵なことだと思います。
 それだけで生きていこうって気になって、それだけで元気になって、ふかふかのぽわぽわになるものだと思います。






 さて三ヶ月に一度の物語シリーズがやってきたぜ。
 今回のメインは、かつて蛇に憑かれた少女。作中において奇特で奇異な、徹頭徹尾被害者でいた少女。『暦お兄ちゃん』に思いを寄せる、いたいけな少女。
 千石撫子
 なでこメデューサ。

 前振りはあまり意味がないので単刀直入に。めっちゃおもしれぇぜ第二シーズンクライマックス。四作目にして100%首尾よく書かれたと言うだけのことはある出来栄え。伏線前振り重ねに重ね、ラスボス登場、囮物語。





 ここから先はネタバレありだよ、暦お兄ちゃん。







 とりあえず、読後の感想としてはやばかったの一言だわ。
 もうね、ただでさえ、普段本音隠しているキャラクターがエゴで行動するっていう展開大好きなのに、ここまでひっちゃかめっちゃかにされたら、興奮するしかないじゃねえですかい。

 これまでずっとネタ的に前振りだけされてきた撫子ラスボス説。キャラクター的に言えば、確かに『可愛い』『後輩』で『妹の』『友達』というポジションにいる、主人公に思いを寄せる女の子、というものなので、ネタにしやすかったのも確かなんだろうな、と思います。そのうえ、彼女は登場の時から言われていた、作中唯一の被害者で、庇護対象であるからこそ糾弾されるような立ち位置には絶対にならなかった。
 そうした、これまでの巻でネタにしてきた事柄に対してしっかりと向き合って、千石撫子という一人の少女のエゴを描ききったのが、今回のお話ということだろうなと思います。

 可愛いだけの女の子。
 大人しい子の誰もが善良であるわけじゃない、と言うのは当たり前の話ではありますけれど、実際それを実感するにはある程度その人との関係を埋めなければわからないことでもあります。特に撫子に関しては、化物語で描かれた『気弱な可愛い女の子』というキャラポジションを守りつつ、『決して真面目じゃない』っていうことが何度も強調されてきました。天然であることも演技とまでは言わずとも、どこかわざと現実に対して無頓着でいようとしていたのだということが今回で分かったことですし。

 加害者が被害者でないとは言えないように、被害者が加害者になることもある。

 僕なんかはもう被害者が加害者になる話って大好きでして、必死に溜めこんだ鬱憤が爆発する瞬間と言うのはそりゃもう素晴らしいものがあると思っています。
 それは、たった一つの恋だった。ずっと恋していられれば、それで良かった。『憧れのお兄ちゃん』に、『恋して』いられれば、それで、『良かった』
 月火に追及された撫子のエゴは、はっきり言ってかなり痛い思いでした。いや、だっておんなじこと自分も考えたことあるもん。恋愛って、必要以上にエネルギーがいるものだけど、その理由って、相手も生身の人間だからなんですよね。自分と同じように、相手にも自我があって感情があって気持ちがあって。自分が好きだからと言って、その好きが完全に相手と合同になることなんて、本当に奇跡が起きない限りありえなくて。だからこそ恋愛は面白いという見方もありますけれど、だからこそ恋愛は辛いとも言える。
 失恋は辛い。
 だから、たとえその恋がかなわなくても、恋し続けることができれば、失恋だけはしないですむ。

 テレビの中のアイドルに向けるような恋慕。漫画や小説のキャラクターに寄せる恋慕。二次元萌えが楽しいのは、そのまま月火がぶっちゃけたことが理由なんですよね。もちろんそれは分かってやっていることではあるけれど、こう改めて突っ込まれると痛いとこ突かれたなぁという感じです。ここまで嫌味なく正直に突っ込まれたら、反論のしようがねぇですし。

 けれど、そんな風に突っ込めるということは、それは月火が『強いから』に他ならないというのも事実としてあります。現実を生きて、現実の辛さにさらされてなお、『自分』を奮い立たせることができるような強さ。やっかみもありますけれど、そういうのってほんとすごいなと思います。僕自身が撫子と同じようにあまり現実と向き合うような強さを持っていないから余計にそうなんですが、月火の憤りも分かるし、それ以上に撫子の抱く『しんどい』っていう気持ちも痛いほどわかる。
 しんどいんです。人生って。
 人と適度にかかわり合って、ただなあなあに生きていけばそれで楽なのに、なぜか人生を送る上で誰かとの衝突は避けられない。それは敵対と言う意味だけじゃなくて、友人との関係にしたってそう。ちょっとした食い違いに歯がみして、イラついて、わかり合いたいのに分かり合えない。そんなことってしょっちゅうです。あと一歩踏み込めば分かり合えるのかもしれないけれど、それ以上傷つくのが嫌で面倒くさいから黙りこむ。処世術、と言えば聞こえはいいけれど、実際逃げてるだけ。逃げて逃げて、先送りにして。逃げるのは悪いことですけれど、逃げないで立ち向かうって、ほんとそれだけで強い力が必要なんです。
 けれど、手前勝手なことに逃げている間でも鬱憤だけはたまっているんですよね。無抵抗でいる人間が心まで無抵抗なわけがない。『出来ない』だけで『やれない』わけじゃない。たまりにたまった鬱憤はどこで晴らすのかは人それぞれですけれど、撫子の場合、そうした悪い感情は全部『暦お兄ちゃんへの恋』に向けることで処理していて、それがどうしようもなくなったから、今回の暴走が起きた。

 撫子がどうしようもなく可愛いところは、最後の選択がエゴなところだと思います。
 これが変に『暦お兄ちゃんへの愛』で更生したり、阿良々木くんを殺すことをためらったりするようだったら、彼女は結局のところ都合のいいキャラクターでしかなかった。けれど、最後に開き直った彼女は、ただ自分の好きなことをやろうとして、自分のために阿良々木くんを殺そうとした。自分のことしか考えていなくて、わが身だけが可愛くて、自分を可愛がるためだけに、行動する。それだけを見ると本当に最低最悪の悪女ですけれど、これまでの鬱憤の積み重ねと、千石撫子の中の『私』の感情を思うと、それがすごく愛おしくすら感じる。いや、まあ現実にこんな子がいたらドン引きですが、キャラクターとして、本当に『可愛い』女の子であるというのはブレなかったというのがすごいなと思います。『可愛い』は『いい子』の同義語じゃないし、『可愛い』は『邪悪』の対義語ではない。


 そんなわけで、いったん幕間。
 次回が臥煙伊豆湖事件(もうこう呼ぶしかないだろ)を消化して、最後の最後で決戦。分かりやすい『敵』をどういなすかわかりませんが、これで恋物語(ひたぎエンド)への前振りはなされました。よかったね、暦お兄ちゃん。
 まー、さすがにこの後に及んで予告詐欺とかしないだろー。うん、たぶん。



 あといくつか語ることあるな。

 撫子に関してもまだちょっと語り足りない感はあるんだけど、もう自分この話でますます撫子好きになっちまったぜ。とりあえず、教室での喝破のシーンは真剣にアニメで見たいと思ってしまった。いや、これたぶんそうとうカタルシスあると思うよ。あと最後の神社で待つ撫子とか。ってか、今回はほんとうにビジュアル的に映えるようなシーンが多かったと思う。ナレーションの痛々しさとかもあるしね。

 そして、今回めっちゃ目立ってた月火ちゃん。やばいなー、いい女すぎるなー。現実だとほんとつき合うのに力使うタイプの女の子だけど、だからこそ、もしうまく付き合えたら最高のパートナーになるだろうなと思う。羽川さんみたいな『正しい』子じゃなくて、悪いこともひっくるめたうえで自分を信じれいける強い子。阿良々木君があまり自分の考えを押し付けないタイプの主人公なので、月火の方がどちらかと言うと熱血主人公っぽい気がする。月火△
 月火に撫子が追求されるところはホント物語シリーズの中でもかなり好きなシーンになるかもしれない。精神的凌辱に近い情感があるんだけど、あれのおかげで撫子の中の見て見ぬふりしてきた深奥が暴かれたわけですしね。ってか、月火くらいはっきりいう女の子ってやっぱり魅力的だと思う。もちろん現実で付き合おうとするとすっごい傷つくと思うけど、それだけに腹を割った関係が築けるだろうし。そんな彼女を籠絡した蠟燭沢くんってほんとどんだけ出来た人間なんだ……。

 あとはまあ忍野扇か。ぶっちゃけラスボスって言うんならこいつこそがラスボスなんじゃねーかと思ってしまうけどな。まあ、撫子は自業自得の気があるから扇が何もしなくても何かしら問題起こしたと思うけれど、それにしても余計なことしやがってという感じはしないでもない。つか、今回また女の子になってるし。
 しかし、新学期の次点で当たり前のように駿河の前に現れてたりしたし、こいつはやっぱり問題を起こすとかそういうタイプの相手じゃないんだろうな。



 そんなわけで、個人的に大ブレイクな、撫子が可愛い物語でした。
 決着は半年後。お楽しみに。
 ……ってかあれ? これ作中時間11月じゃなかったっけ? だったら卒業式ってよんかげ(ryうわなにするやめ

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『花物語』 著/西尾維新

2011.03.31 *Thu
花物語 (講談社BOX)花物語 (講談社BOX)
(2011/03/30)
西尾 維新

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 「お前は青春をしたんだ」



 物語シリーズ第二シーズン三作目。神原駿河に視点を当てた、君を知り、解きはなつための物語。
 相変わらず執筆速度と内容密度が釣り合っていない西尾維新ですが、今回も素晴らしい物語を届けてくれました。ってかマジで第二シーズンに入ってからの物語シリーズはガチだから困る。偽下と猫黒とは何だったのか。ちなみに、個人的に偽上は大好き。

 神原駿河の成長物語、というより、本当に呪縛から解き放つための物語だったんだろうな、と思います。ゆえに、はっきり言おうとギャグ期待している人はつまらんだろうと思う。自分的には『小説家』としての西尾維新はむしろこれくらいの方がいいと思ったりもするんですが、それはさておき。






 では、ここから下はネタバレ解禁であります。







 では、本筋から。

 神原は化物語において一つの罪を犯していて、今回はそれを清算するための物語だったんだろうなと思う。
 もちろん、今回の話で全部が清算されたわけじゃないし、彼女自身が思っているようにその経験は一生背負っていくものなんだろうけれど、エピローグで少し憑きものが落ちたように見える彼女を見ていると、これはやっぱり一つの転換なのだろうと思う。
 あるいは、単純に成長というのがいいんだろうけど。それこそ青春である。
 罪に対して、自身を責めることこそが償いだ、という風に思うのが当たりまえだろうし、そうする以外に償い方なんてものはないようにも思うけれど、それって結局自傷行為となんら変わらないんですよね。かといって、自分の悪行と等価の分だけ善行を働いたからと言ってそれが直接償いにつながるとは限らない。では何が贖罪になるのかというと、自分に素直でいることじゃないか、とこの話を読んで思う。
 人の見ているものと自分の見ているものは違う、っていうのがこのするがデビルにおいて語られた一番の要素であるわけだけれど、たとえ自分がどんなに罪に対して向き合っていても、人からすればそれはただの自虐でしかないかもしれないし、またただがむしゃらに突き進んでいるだけでも、それは人から見たら自分を責め続けている咎人に見えるかもしれない。結局償いなんてものは自分の裁量一つなんだから、ただただ真摯に、自分と向き合い続けるのが解決の糸口なんだろう。
 実際今回、神原は自分の思うがままに行動して、後ろ向きにしかいられなかった自分を前向きにすることができたわけですし。
 彼女は沼地に対してしたことを、ただ邪魔をしてしまったという居心地の悪さとしてとらえてはいるけれど、その結果停滞しかしていなかった状況はちゃんと動きだした。それは厳密には幸せじゃないかもしれないけれど、すくなくとも不幸じゃないと言えると思う。それこそ、その居心地の悪さは時間が解決してくれる問題。沼地はすでに死んでいて彼女自身の意思には意味がない以上、結局は神原自身の考えように落ち着くわけだ。
 神原には見て見ぬふりをするという選択肢もあったわけだけれど、それをした場合たぶん彼女は何度もそこで行動しなかったことを思い返してしまうだろうし。やらずに後悔するくらいならやって後悔する、っていうのは負け犬の遠吠えだと作中で語られたけど、神原はちゃんと、やって後悔しない道を選べたわけですね。

 薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ。

 この言葉の意味についてうまく考えがまとまらないんだけど、まあ要するに誰かのための正義は誰かの悪であり、誰かの悪行は誰かにとっての善行になりえる、っていうことをあらわしているんじゃないかな、と思う。つまり、神原母は母親なりに、神原がちゃんと自分を持った一個人として立ってくれることを祈ったのかもしれない。誰でもない、水のような人間じゃなくて、誰かにとっての薬となり、誰かにとっての毒となるような。そしてそれは自分自身にも言えて、自分にとって薬や毒となるほど強い意志を持って生きろ、って言ったのかなー、なんて思ったり。そういう意味では、今回の神原の選択は、沼地に対しては想像するしかないまでも、神原自身にとっては薬にも毒にもなっただろう。

 と、そんなところでとりあえず神原駿河についての言及は終わり。うん、とりあえずやっぱりまともな娘だったね。この子が冗談であんなハイテンションな下ネタを言っていると思うと結構感動ものなんだけれど、でもぶっちゃけ引き際ミスっているからねガンバルちゃん。


 それはそうと、今回の『人の見ているものと自分の見ているものは同じではない』という要素を一番あらわしているのはやっぱり貝木だろうなと思う。自分の嫌いな奴が自分を嫌ってくれるとは限らない、とはホントよく言ったもので、もうなんか今回のいいおじさんっぷりは感動ものだったわ。まあそんな中にも彼らしさを地味にみせてくれるところがほんと素晴らしいけれど。知っている情報は半分か。
 だけど、今回の登場で貝木のキャラが違う、って言ってしまう奴は、もう少し真面目に読んだ方がいいと思う。うーん、そういう感想をちょいちょい見たからなんかいらっときたんだけど、こういうのをキャラクターのぶれと言ってしまうのはあまりにも物語を設定的に見過ぎていると僕なんかは思うわけで、ちゃんと作中でも語られている通り、阿良々木君やガハラさんから見た貝木と神原から見た貝木が同じわけがないのだから。そもそも貝木が対応変えているって自分で言っているしね。そんな中でも彼だと思えるところは、そのふてぶてしさだったり情報の出し惜しみのやり方だったり、常に端役に身を置いているところだったり。結局のところ、人間って言うのは立ち位置が重要だと思うんですよ。こうしてキャラクターがぶれているっていうのは、むしろキャラが生きている、一個の人間として描かれている、と見た方がいいと思うのです。ってか、むしろギャップ萌え的なものがない? あの守銭奴が昔の思い人の娘に焼肉おごるとか。しかも肉肉言ってるんだぜ。西尾さんが貝木もまた理想の大人像の一つと言っていた理由はそういうところからも分かると思うんですが。


 さて。じゃあ最後に、彼の話を。


 伝説の阿良々木先輩に吹いた。


 あれだよな、ほんとこうして、他者視点における阿良々木くんの話題が増えるごとに、奴の一人称がいかに信用ならないかわかるな……。とりあえず後輩の女子に大人気な阿良々木君を見ていると、自分のことじゃないのにすげーうれしくなるのは気のせいだろうか。あれだけぼっちぼっちって自分で自嘲していた阿良々木君だけど、こんだけ人気があったんだよ! なんだか自分のヒーローが認められたみたいですげーくすぐったい。
 まあ、そんな阿良々木君も今回は完全に蚊帳の外というか、助言者的な位置づけになっていましたが。今回神原を車で拾った時、彼があまり深入りしなかったところがちょっと違和感だったんですが、それはどちらかというと成長による余裕にも見えるのでやっぱり色々あったんだろうなーと推測。神原から全ての顛末を聞いた時の先輩としての優しさのこもった言葉がいいなぁ。
 こうしてみると、やっぱり主人公って言うのは別の作品や続編なんかでは、忍野みたいな大人としての立場になるのが自然なんだろうなぁと思う。それはすごくいいことで、やっぱり大人って子供からみたらかっこいいものなんだよなーと再確認。阿良々木先輩はかっこいいのです。何より、そのブレなさがやっぱりかっこいいんだろうな。


 それにしても、最初の土下座エピソードで腹抱えて笑ったわけですが。いやなに? マジで出席日数やばかったんかい。そしてあなた、大学はどうなったの? 意図的に合否のこと語っていない気がするんだけど。うーん、でも合格していないのに車ぶいぶい乗りまわすっていうのも不自然だしなぁ。
 しかし、なんか火憐ちゃん好きが異常になっているんだけど、なんかあったんだろうか。まあ、正直火憐ちゃんの馬鹿っぷりは今回見ているだけでもかなり危ういレベルな気もしてくるけど。それと、月火ちゃんの方も生き急いでいるとかいう話が出てきてちょっと怖い。まさかあの子自分の怪異のこと知っちゃったとかないよな……。

 その辺、なでこメデューサあたりで語られるのかな―とか思ったりもするけど、ぶっちゃけ西尾のことだし今度はまた時系列飛んで撫子が女子大生になってたりするんだぜ。そして阿良々木君が全国放浪しているんだぜ。たぶんそうだ。絶対そうだ。

 うーん、猫白の裏話とか今回で出た卒業直前の事件とかもすげー食指が動くんだけど、本気で書く気があるのかな西尾さん。


 ちょっと追伸。
 忍野扇……お前マジでなんなんだ……。
 最初は西尾が女の子めんどいから男にしたのかと思ったけど……うーむ、ちゃんと語られるのか、これ?


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『傾物語』 著/西尾維新

2010.12.27 *Mon
傾物語 (講談社BOX)傾物語 (講談社BOX)
(2010/12/25)
西尾 維新

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 「八九寺真宵さんだけど」






 おはラッキー♪ さあて、日々毎日のようにがんばって更新しているこのブログ。え?二カ月の空白? 何のことかなそれおいしいの? いつも本を読んで感想を記すのに余念がないわたくしがひと月以上更新停滞するわけがないじゃないですか~

 ―――――ごめん。


 さて。というわけで傾物語です。西尾維新が新刊出したら不死鳥のように舞い戻ります。というわけで、物語シリーズ第二シーズン第二話。八九寺真宵編。







 ここからはネタバレありよん♪















 大人八九寺さんマジ最ッ高おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!




 あ、ごめん。先に叫んじゃった。うん。ごめん。たぶん最初は不真面目な感想になる。


 いや、何といいますかね。本気で期待してたんですよ。話の流れ的に、これは絶対見れるだろうって。成長したお姉さんが見れるだろうって。ほんと期待してたんですよ。真宵お姉さん。うん。期待かなった。まったく別人じゃんとか言うかもしれないけど、いやいや、あのロリっ娘とお姉さんが同一人物だって思うだけで僕ァもう。ほら、ギャップ萌え? 娘の成長を見守るお父さん的な父性? なんかそういうもんだよ、言わせんな恥ずかしい。

 だってよー。実を言うと化物語の時点から、真宵が実は昔亡くなった幽霊だって分かってて、実際は阿良々木くんより年上だって分かってた段階で、「うわ超見てぇ大人八九寺さん超見てぇー!!」って思っていまして。うん、念願かなってよかった。登場シーン少ないけどよかった。

 しかし、それにも増して、生前真宵(ロリ)の人見知りっぽい感じがまた……。うん、別にやましい気持ちじゃないよ。条例で規制されるようなことは考えてないよ。そうじゃなくて、あー、やっぱ普通の幼女ってこういう感じだよなーって。真宵のあの慇懃無礼なしゃべり口も嫌いじゃないけど、やっぱああいうのって怪異として生きた十一年が積み重なって出来たものだし、普通の小さい女の子があんなしゃべり方するわけないし(ロリ羽川除く)。助けてもらってお礼を言えなくて、それを心の隅で気にして成長するとかマジいいじゃないですか。萌えるでしょ? え? 分からない? そう……。

 そんで、最後に戦いに出る阿良々木くんの理由もまたいいじゃないですか。たった一人の女の子のために、世界を救う。八九寺が生きていることがこんな世界を生んだなんて、認めないってところが、もう熱すぎっすよ。
 でも、このルートって、逆に言うと八九寺真宵って存在が阿良々木くんにとってどれだけ大きい存在だったかってのを証明するルートでもあるんですよね。確かに彼女との関係は、恋人とか家族とかそういうものと比べると些細なものですけれど、確かに影響を与えている。そして、そのちょっとした影響の差が、大きな局面での選択を誤らせた。バタフライ効果っていうのもそうでしょうけど、どちらかというと風が吹けば桶屋が儲かる的な感じだよな。八九寺生存がどこかでねじ曲がったわけじゃなくて、そのまったく関係ない筈の事象が、阿良々木くん死亡という事象につながり、結果としてキスショット復活となったわけだし。
 この場合、つばさキャットにて最後に忍に助けを求めたことが生存の鍵なわけだけど、その時の後押しとなるもので、ひたぎと神原と撫子じゃ足りなかったってことか。うわ、マジでギリギリのところでつばさキャットの展開は行われてたんだな……。とりあえずふと思い出したのはアニメ版でのそのシーンだけど、確かあの時回想はいって真宵の台詞があったりした気がしたけど、それが印象に残っているから何気に間違いでもない気はする。
 うん。運命なんてもんは、ほんと分からないものってことなんだろう。(とかなんとか言えば大抵の展開はごり押しできる)

 まあ、そんなわけで八九寺語りでしたが、このタイムリープで真宵助けることを忍野はたぶん許さないよなーとか読みながら思ってたんですが、でも忍野からの手紙を読んでちょっとその忍野に対する認識の浅はかさに反省しました。いや、忍野のバランサーって考え方は、別に悪いことをさせないてことじゃなくて、いいことも悪いことも全部ひっくるめたうえでなんだなーと。起きることを未然に防ぐことが正しいんじゃなくて、起きたことをちゃんと受け止めたうえで判断することを重点に置いているんじゃないかな。
 八九寺さんを救ったことは君だけの手柄だ。って、素直に褒めてくるところがなかなかジンときました。大局的に見たら真宵の生存が世界滅亡のきっかけのきっかけになったわけだけど、八九寺真宵という人間が生き残ったこと自体は、それとはまた別の問題なんだろう。あれだよね、原爆を防ぐためにアインシュタインを事前に殺すわけにはいかないもんね。まあ、そこまでではないにしても、キスショット暴走を止めるために真宵見殺しにして意味があるとは言えないし。
 とにかく、真宵を交通事故から救ったこと自体は、倫理観とかそういうのは置いておいて、感情的には間違ったことじゃないって言われたことで、安心できた気がする。ある意味このシリーズにおいて、忍野の言葉ってのは正解みたいなものだからなー。

 そして、最後。自分のルートに戻ったうえで、浮遊霊となった真宵の台詞でちゃんと彼女の話は〆たんだと思います。どちらがよかったというわけでもなく、生き残ろうが死のうが関係なく、人ってのはその生きたあるいは存在した上での経験で為されるわけです。そこにはいいこともあれば悪いこともあるわけで、あとがきで書いてあるようにトラウマこそが人格を形成しているということ。なんか、歴史とは人、って感じで刀語っぽい感じだけど。こっちはどちらかというと人とは歴史って感じだよな。




 次、忍の話。


 今回はもう、ぶっちゃけこれがしのぶタイムでもいいんじゃないかってレベルの登場率だったけど……ぶっちゃけ、忍に関して語るべきこと今作で全部語っちゃった気がするんだよなー。実際のところ、鬼物語はどうすんだろ。阿良々木くんに見つけてもらえなかったキスショットの末路は今回で提示したし、二人のきずなもこれ以上ないってくらい深まっちゃってるし。ってか、不思議だよな、これほどのつながり持ってても恋愛関係とかそういうのに発展していないってのが。家族愛的な者とも違うし、やっぱりツーマンセルでワンセットってわけなのか。まあ、ここから恋愛関係に発展するのはかなり違和感あるけど。ってかその辺の関係性の書きわけが上手いと思う。奴隷と主人で主人と奴隷で。もうどっちかというと一心同体の影と光だよな。

 今回特に彼女に関していうのは、やっぱり失敗した世界のキスショットが見れたってことかな。自分の心情を多くは語らない忍が、わずかながらも本音ぶっちゃけたわけですし。
 「儂はただ、お前さんに見つけて欲しかっただけじゃった」って、このセリフがあまりにも切なすぎます。正直言うと、つばさキャットで忍が家出した理由を僕はよくわかってなかったんですよね。気を引きたかったんだろう、くらいには思っていたんですが、感情としてはやっぱりもう少し上だったわけで。あの家出は、『これから』を生きていくために、まず阿良々木暦との関係をはっきりさせるうえでやっぱり必要だったんだなーと思いました。うん、そう考えると、見つけてもらえなかった、助けを求めてもらえなかった忍、もといキスショットはかなりつらかっただろうな……。
 まあ、でもその辺は、成功した忍が言った通り、忍自身の歩み寄りでも変えることができたものだとも言えますけどね。下らない嫉妬とキスショットは言ってますが、不器用な自分を少しでも見つめることが出来ていればなぁ。
 とりあえず、キスショットが最期に阿良々木くんに頭を撫でてくれというシーンで泣きかけました。やばい、あそこはくる。くそ、とんでもない卑怯な展開だな!! ってか第二シーズンは涙腺刺激シーズンか!



 うん。そんな感じ。

 あとは小ネタ的なものになるけど……。もう、執筆期間半端ないよな。いや、ハーゲンダッツのフォンダンショコラって十月四日発売だぜ……? まあ、そういう小ネタは後で挟むことができるとしても、それでもなー。あと、地味に猫白のネタとかも入れてるし。ってか、雑談多くてつまらないみたいな意見、気にしてたのか……。
 それはそうと、秘策士ネタはまさか毎回使うのか……? いや、実を言うと今さら気づいたんだけど、まよいもつばさもなでこもするがも全員三文字だから使えるんだよね。これは花物語が楽しみだな……。もしかしたら、冒頭で登場した扇ちゃんが登場するかもしれないし。んー、でも猫白の時系列中よりも後の方がしっくりくる可能性もあるけどなー。まあ、その辺はどうなることやら。
 それと、斧乃木ちゃんにくそ吹いた。『黙れ』ってww。もうあのシーンで何度笑い転げたことか。いや、そもそも偽下自体が黒歴史っぽくなってきているようにすら思うよ。確かにあの口癖だけ浮きすぎてたからなー。アレさえなければ偽下ももう少し……嫌いじゃないけどね!!(猫黒に比べればあんなもの……)




 そんなわけで、第二シーズン二話も面白かったです。うん、これなら緋色の英雄が延期されても……延期されても……


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『猫物語(白)』 著/西尾維新

2010.11.01 *Mon
猫物語 (白) (講談社BOX)猫物語 (白) (講談社BOX)
(2010/10/27)
西尾 維新

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 「ただいま」







 猫物語(白)の感想をお送りします。
 やられました。素晴らしい傑作です。西尾先生ブラボーです。(黒)の時はもう西尾維新も落ち目かな、とか思っちゃってすみません。あ、いや、さすがにそこまでは思ってなかったけど。でも、多分物語シリーズではもう期待できないだろうなとかは思っちゃってました。はい。
 と、あまり言い過ぎるとなんか作品の価値が下がっちゃう気がするので、あとは具体的な感想で述べるとしましょう。





 では、ネタバレ含むので数行空けます。








 とにかく、何から語っていいものやら。

 (黒)を読んだ感想と、(白)を合わせた感想だと、なんていうか完全に羽川翼というキャラクターに対する見方が違ってくるんですよね。たとえば僕は(黒)の方の感想で、羽川さんは自分自身を律する力に長けていたという風に書きましたが、そもそもどうしてそんな力に長けていたのか。それはまあ、家庭環境の所為だって言うのは分かりきっているんですけれど、だったらそんな中で十何年も暮らしてて、精神的におかしくならないわけがないい。ブラック羽川はそんな環境に対する自己防衛の一つですけど、でも考えてみたら、そんな程度の自己防衛で耐えられるような環境のはずがない。(黒)だけを見ると、羽川さんの異常性があったから家庭環境が崩壊した、という風にも見えるんですけど、そんな生まれた時からメーター振りきるほどの異常性を持ってる人間がいるわけもないですし。(あ、いや、確かにめだかボックスにはいるけどね)
 どうして自分自身を律する力に長けているのか。それは、自分自身を律さなきゃいけないような環境に長いことさらされていたから。たとえばその境遇がもう少しまともなものだったら、彼女はただ、『自分は正しくあるべきだ』と努力する程度で、まっすぐに育ったかもしれません。でも実際は、もう少し根が深かった。最終的に彼女が『虐待されていた』と認めるほどには、ひどい環境だった。
 羽川さんの手記で、彼女がその事実を認めた瞬間、なんかいろいろ腑に落ちました。これまでの中で、羽川夫妻の描写は皆無で、羽川さんの不幸を知るための情報は状況証拠だけ。そんなところで本人が見て見ぬふりをしていたから、何となく『そこまでひどくはないだろう』と楽観視していたのですが、まあそんなわけもないって感じです。
 羽川さんの異常性って言うのは、自分を律する力というよりは、目の前の事態に対して感情を働かせられないってことだったんでしょう。だから物事を客観視でき、その結果が気持ち悪いまでの『正しさ』を生んだ。悪意に鈍くあることがどれだけ難しいかは、少し想像すれば分かると思います。自分の置かれた状況がどういうものなのかを見て見ぬふりをすることが、多分彼女にとって一番の自己防衛だったんでしょう。

 そして、その結果が苛虎を産んだ。

 苛虎の存在の意味するところを知ったとき、この怪異の一番初めの台詞の意味がわかってちょっと寒気がしました。『白くて――白々しい』。敵意や悪意を全部苛虎に押し付けて、自分は平然としている。その白々しさをなじられても、なんのことかわからない。彼女は強かったわけでも正しかったわけでもなく、ただ感じることができなかっただけなんです。
 いつのことかは分からないですけど、そこまで彼女は、追いつめられたことがあった。

 今回の話は、簡単に言ってしまうと、羽川さんは解離性同一障害になってたと考えた方が分かりやすいんだと思います。ブラック羽川と苛虎という二つの人格。一つはストレスを、もう一つは嫉妬や悪意といった感情をそれぞれ請け負った人格。そうしてそれらを切り離すことで、主人格たる羽川さんは生きていた。けれど、感情を一つでもなくしてまともにいられるわけがありません。怒ることもなく、悲しむこともなく、悔しがることもなく、ただそれを当たり前と受け止めることが、どんなに不自然なことか。もちろんそれは人間としての理想形ですけど、それはあくまで感情を抑えたうえでやるからこそ理想的なのであって、感情がない状態でやるのは、単なるロボットと同じです。
 でも、異常性を先に提示されたから、羽川翼は気持ち悪い、という風なイメージがついてしまいましたが、実際は逆で、問題があったから異常になるしかなかったんです。まあ、そんな状態でも日常生活を遅れていることこそが『気持ち悪い』ほど異常なわけですが。普通はそこまで行き着く前に、周囲か彼女自身が壊れてしまうと思うのですが、それが壊れずにあたかも普通であるかのように機能していたからこそ、忍野は彼女を『気持ち悪い』と評したんでしょう。そして、そこまで行き着いてしまったその状況は、だれかが解決できるような問題じゃなかった。だからこそ、多分忍野は必要以上に彼女に接触しなかったのかもしれません。

 結局最終的には、そうして切り離した人格を統合するという形で解決を迎えたわけですが、実際のところ、これからそうとう大変だと思います。これまでの彼女の打たれ強さは、ある意味痛覚がない状態と同じようなものですし。後日談で語られた情緒不安定だった状態というのも、多分シャレにならんレベルだったんじゃないだろうか。けれど、そこをちゃんと前向きに抜けることができたというのは、たぶんこれまでの彼女の十七年間があったからこそだと思います。まあ、『全部含めて自分』ってことなんでしょうね。


 それにしても、何がよかったかというと、羽川さんの『ずれた価値観』を表現する過程と、それを彼女自身に気付かせるまでの流れですよ。ぶっちゃけ塾廃墟でのサバイバルの流れがあまりにも自然すぎてまったく疑問に思わなかったんですけど、現実にやったらチョイ引くくらい不自然だよな……。そして、羽川さんが苛虎を生み出した理由の流れ。両親の関係の修復と、それに対する嫉妬の描写。ある意味ちょっとしたホラーですよ。いやあ。人間の感情ってホント怖い。
 羽川さんの最後の選択は、下手な描写だとすごく嘘くさくなるんですよね。あのシーンの重みを指されるのは、些細な違和感をさらりと書ききったことと、終盤の手記の重み。こういった地力が備わっているからこそ、この物語は映えたんだと思います。いや、ほんと西尾さん、ギャグなしでも十分じゃないですか。


 
 さてさて。つらつらと思いつくままに書いたけど、なんか変なことになってないだろうな……。

 ここからは、他の要素について。

 まず、戦場ヶ原ひたぎ。偽物語・下で語られた衝撃のドロ化ですが、本当はもう少しギャグっぽい感じで変わっていると思っていたんですよね。それがなんですか。無茶苦茶可愛いじゃないですか。なんか物語シリーズだから、もうちょっとこう、キャラ萌え的な感じになっていると思ってたら、全然違う。普通に人間として可愛い。
 とくに、序盤で塾廃墟で寝ていた羽川さんに怒鳴りつけるシーンが素晴らしかった。だって、泣くんですよ。友達のために泣きながら怒るんですよ。これめちゃくちゃ可愛いじゃないですか。ああもう、大丈夫だよガハラさん。あなたはそれだけで十分撫子に匹敵する。

 次に、阿良々木君。うん……なんていうか……。かっこ良すぎるぜあんた。特に今回は裏でいろいろやってたみたいだからその相乗効果もあるっぽいけど、でもたぶんこれまでの事件でも、ヒロイン視点から見たらこんな感じだよなぁとは思う。どんなにカッコ悪くても、力不足でも、彼は絶対に味方になってくれていた。羽川さんが、彼のそういうところに惚れた、というのがすごく納得いきます。これでもう少し初期のころのキャラクター性があれば……。
 それはそうと、こいつも実は有名人だった、という前々からほのめかされていたことがようやく判明しましたね。そっか、直江津高校って考えてみたら進学校だから、余計に不良っぽく思われていたんだ……。そしてたぶん、本人は人助けとかそういうのをやっているつもりはなかったんだろうなぁ。正義の味方、っていうのはこういう人のことですよ。まあ、変態と紙一重ですが

 それはそうと、今回はいろいろ伏線が張られまくりましたね。この辺は、第二シーズン中に回収するのだろうか。うまいことやると、次のまよいキョンシ―で冒頭の部分、するがデビルとしのぶタイムでつばさタイガーの裏側をやれるんじゃないかとか思うけど。ってか、ようやく忍野たちの『先輩』が登場したわけですが、臥煙『伊豆湖』か……。そのまま神原の母親の臥煙遠江が出てくると思っていただけに、ちょっと疑問符が。ここでこういうフェイントやらかす理由がなんかあるのかな。あと、伊豆湖さんが影縫さんと実は仲が悪いとかその辺もちょこちょこと書かれててなんか面白かった。四人がそろうことってあるのかなー。なんか楽しみ。
 あ、それと、エピソード六歳児にチョイ吹いた。




 うん、こんなところかな。
 最初はまったく期待していなかったんですけれど、想像以上に面白くてびっくりでした。さすが西尾維新、筆の速さと面白さが全く関係しない男だ。
 特に、今回はちゃんと作中で答えが提示されたのが分かりやすかった理由でもあると思います。個性の消失とともに成長する。そんな一人の少女の物語を存分に楽しませていただきました。

 さて、次はどうなるか……。

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『猫物語(黒)』 著/西尾維新

2010.07.30 *Fri
猫物語 (黒) (講談社BOX)猫物語 (黒) (講談社BOX)
(2010/07/29)
西尾 維新

商品詳細を見る



 なってくれないんだ――私のヒーローに。
 なってくれないんだ。





 はいというわけでまたしても期間があいてしまいましたがそんなの関係ねーとりあえず西尾維新の新刊が出たら絶対更新するから気にするな!!

 というわけで、猫物語(黒)をお送りします。物語シリーズでも最初の方からずっと語られていた、ゴールデンウィークの怪異。羽川翼が猫に魅せられた物語。西尾さんが羽川さんがひたすらつらい目にあう物語、という風に公言していた話がとうとう世に出たわけです。






 まあ、とりあえずはネタバレありなので少しあけます。









 さてさて。猫物語ですよ。
 とりあえず西尾さんはダークな話というかキャラをいじめるのに関してはかなり容赦ないので、個人的にすごく楽しみにしていたんですが、後半は確かにその期待を裏切らない出来だったと思います。

 猫に魅せられて、そして猫をかぶった少女の話。

 とにかく切ないのが、彼女は彼女のままの意思で、周りの人間に八つ当たりをしていた、っていうことですよね。これまでの既刊五巻では、障り猫という無意識の衝動によって行動していたと思うように書かれていましたが、なんのことはない、無意識で行ったのは最初の両親くらいで、あとは全部彼女自身が自分で考えて行動していたわけです。
 どんな気持ちで。
 どんな思いを抱えて。
 完璧すぎる彼女が、完全であろうと自分に律していた彼女が、そういう不完全な自分が存在するいいわけに障り猫を使ったわけです。責任転嫁の対象すらも自分というところに目をつけるべきか、はたまたそういうずるがしこいところが人間臭いと思うべきか。
 忍野なんかは散々「彼女は気持ち悪い」と言っていますが、実際はたから見たらそうなんでしょうけど、それでも彼女の心の中身はどうしようもないくらい『人間』なんですよね。ただ異常なまでに自分を律することができたが故に、その人間らしい思いが外に出ない。むしろ、外に出た時が意外に感じてしまう。そんな自分に拘束された十五年間というのは、確かに地獄そのものでしょう。

 まあ、そういった言い分すらも、羽川さんのいいわけにすぎない、とも言えるのでしょうけど。

 結局、彼女はちゃんと本音を出すべきだったんですよね。正しくなければならない、という風に追い込まれたのは彼女が被害者だったと言えるかもしれないですけど、そこから自分の意思で正しくあろうと必要以上に思い続けたのは、ある意味で周囲への加害者です。とくにその影響のほとんどを受けたのは彼女の両親で、確かに、自分の欠点を残さずさらけ出してしまうような存在が毎日そばにいるとなったら、気がくるっても仕方がないと思います。
 もしこの不幸を回避することができるとすれば、もっと家族としてのつながりが強ければよかったんだろうなぁ、と当たり障りのないことを考えてみたり。それこそ、義理の父母義理の娘の関係であっても、きちんと親子関係が結べていたとしたら。ちゃんと両親が彼女のことを叱ってやれたら、こんなことにはならなかっただろうな、と。まあ、そうなるには、あまりにも羽川さんの意思は強固すぎて、両親の心は弱かったんでしょうけれど。


 本音を出すべきだったと言えば、阿良々木くんに対してもそうです。本編ですでに結果が出ちゃっていることではありましたが、彼女はちゃんと好きだって気持ちをもっと早く伝えるべきだった。助けてって言葉を、もっと素直に言うべきだった。自分のことは自分で解決しなければならない、という正しさに縛られていたからこそできなかったことではあるでしょうが、それでも彼女は、欲しいものは欲しいと、ちゃんと言わなきゃいけなかったんです。
 ヒーローになってくれないんだ、とつぶやきます。
 冒頭でも引用したこの独白が、痛いほど彼女の本音を示していると思います。
 彼女は、彼に助けてほしかった。
 他の誰でもない、自分を助けてくれると期待できる彼に、救ってほしかった。
 けれど助けを求める気持ちというのは、ちゃんと口に出さないと伝わらないんです。

 阿良々木暦は、ヒーローではない。彼はただ、自分にできることをしようと思っているだけ。それが及ばないからこそ毎回何かしら痛い目にあっているし、そして裏目に出ることも多い。けれど、そんな精神性を最後まで頼りにしていた羽川さんの狡猾さこそが、今回の話で一番のすれ違いなんだろうなと思います。

 ぶっちゃけ、彼と彼女の初恋は、本当なら実ったはずだと思うんですよ。
 羽川さんが自分に素直に生きて、もっとわがままに本音を吐いて、『完全』である自分を脱ぎ捨てたなら、阿良々木くんは自然と、彼女を一人の女の子として好きになったんじゃないかと思います。
 相手に惚れさせようとする羽川さんのずる賢さ。正しくあらなければいけない、というものとは別に、いい自分を見せたいと思う虚勢。そういう風にしかアプローチできなかったという不幸もありますが、その結果阿良々木くんから見た彼女は、『人としての理想像』でしかなかった、というわけです。
 女の子としてなんて、見れなかった。
 偶像崇拝にも似た、愛の形。
 彼女のことを救うなんておこがましい、とすら阿良々木くんなら思うでしょう。
 つくづく、すれ違い続ける二人だと思います。


 しかし、もう結果は出ちゃっているとはいえ、阿良々木くんにとことんまで救ってもらえなかった羽川さんは、どうなるんだろうなぁ。偽物語以降で彼女がどういう思いを抱えているかは、あまり描写されていませんし。次の(白)では、その辺を補完してくれるのかどうかが楽しみです。




 さて。とりあえず真面目な感想になりました。
 こうなった理由も、ぶっちゃけ前半がマジでひどかったというか、正直見るに堪えなかったというか……。いや、本気で今回はページ閉じかけた。月火ちゃんとの会話は正直しつこい。うーん、面白いところもあるにはあったけど、なんかもう不謹慎としか言いようのないレベルのネタがかなりあったからなぁ。
 あ、「中学女子に乙女なんていねー」って台詞だけは死ぬほど笑った。

 なんかなー。確かにかけ合いがあるからこその物語シリーズだとも言えるんでしょうけれど、ストーリー一本でも十分通用するだけのものがあったと思うんですよね。とくに、羽川さんの家に不法侵入してから逃げ帰った後のシーン。あそこ、マジで鳥肌立つくらいシリアスモードだったのに、突然ギャグモードになって唖然となったと言いますか。うーん、愚痴言っても仕方ないとは分かっていますが。


 物語シリーズ続行ということで、もう正直この世界はこれ以上広がらねーだろ!とか思う気持ちもありますが、話としてどういう風に持っていくのかは気になります。できることなら、これ以上世界観を崩さないように。ギャグパートでのキャラ崩壊が本当に見ててつらいんですよ西尾先生……。


 そんなわけで、最後は愚痴になってしまいましたが、プラマイゼロむしろプラでした。羽川さんの気持ちが切ないぜ。そしてキャラをいじめる西尾維新はほんとうに生かしている。そんな一冊。



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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
http://tukimaturi.blog89.fc2.com/

初めての方は、カテゴリ内の『未分類』を先に読んでください。



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