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『残虐記』 著/桐野夏生  感想

2009.11.08 *Sun
残虐記 (新潮文庫)残虐記 (新潮文庫)
(2007/07)
桐野 夏生

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 先生、ほんとにすみませんでした。でも、私のことはゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないと思います。どうぞ、お元気で。





 これは、一体どういう感想を書いていいのか困る一作です。

 この感想を書くのに一週間近くかかっています。ついでに、はっきり言って公開するのはずかしいくらい全然まとまっていません。
 けどまあ、とりあえず読んだ証しとしてあげてみます。

 正直、作家を目指す者として、景子の語る毒の夢の考え方はとても無視できないものです。けど、内容を考察をするとしても、なかなか御しにくいものだと思います。
 話としてのインパクトは少ないですが、文章からにじみ出る不気味さやほの暗さはすごく強いと思います。




 そんなわけで、内容も含めて感想を。







 とりあえずまず語るべきこととして、どこまでがほんとうでどこまでが虚構なのか、ということでしょうか。
 作中で景子が夢想した事件の真実にしてもそうですが、後日談的に描かれる生方淳一の編集部への手紙に書かれた事実。小海鳴海の『残虐記』に描かれたこととあえて描かれなかったことの差に、どういう意図があるのか。

 ただ、ここで虚実を検証するのは馬鹿らしいですし、ぶっちゃけラストの生方さんの手紙で書かれたことが正解だとは思うのですが。問題は、どうしてそう違いを作ったのかというところ。

 一番の可能性は、景子の体験をより小説らしく、作品らしくするためではないかと思います。作中で景子が毒の夢を見る描写がありますが、そこでは断片的な情報から、想像できうる範囲で、無理のない物語を夢想しているところがありますが、それと同じで、現実と作品の中での物語に緩急をつけることで、残虐記という手記をより小説らしくし、そのラストによって、『小海鳴海』という作家に終止符を打ったのではないか、と思いました。
 小海鳴海の残虐記の中で、彼女が『自分は才能の枯渇した作家だ』と語ったのは、そうした終わりを描くためじゃないかと思いました。作家として、『毒の夢』と語る想像力をもてあそんできたが、それはどんどん肥大し、とうとう扱いきれなくなった。そして、かつてケンジとの共同生活でうまれたそれを使えなくなったとき、作家としての彼女だけでなく、人間としての彼女も一つの終わりをむかえたのではないだろうか。

 少なくとも、ケンジとの生活がなければ、ここで語られる景子という人間は存在しない。それを証明するのが、手記の最後、ケンジとの生活の間における、景子の感情の変化。それまでかたくなに隠してきた彼女の本心をここで明かし、自分にとってケンジという人間がなくてはならない存在だったことを証明した。
 そして、ケンジとの世界を作ったところまでが一つ。そのあとその世界を壊して外に出たのが二つ目。そうして外に出た景子は、最終的にまたケンジとの思い出に戻ることになる。そんな形が作られているんじゃないか、とおもいました。


 うーん、我ながら何を語っているのやら。


 しかし、才能が枯渇するならまだしも、自身のうちからあふれてくるものを制御できなくなってダメになった作家の最後というのは、なかなか強烈なものがあるようにも思います。そして結局は、大きな世界、すなわち現実から逃げて、小さな閉じた、自分だけの世界に戻っていく。そんな物語だったんじゃないか、と思います。



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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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