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『症例A』 著/多島斗志之  感想

2009.10.28 *Wed
症例A (角川文庫)症例A (角川文庫)
(2003/01)
多島 斗志之

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 「相手の目の感じよ。目でわかるでしょう、相手が何かする気でいるのがさ。そのときにね、わたしもペンギンを呼ぶのよ。でないと怖いもの」




 2000年度の『このミステリーがすごい』のベスト9位にランクインした異色作。創作の世界では色ものとみなされがちな精神医療の現場をリアルに描いたことと、微妙にリンクしていくミステリー要素から絶賛を受けた作品。

 らしいです。

 ……いや、面白かったんですけどね。時間忘れるくらい読みふけったのも事実ですし、確かにいろいろ勉強になったし、主人公の榊が次第に考え方を改めていくところはうまいなぁとか思いましたけど。
 ただ、サブストーリーだけ完結させてメインストーリーは尻切れトンボなのがなぁ。




 その辺も含めて、ネタバレ感想行きます。







 まず、この小説で、博物館側の話がはたして必要だったかどうかが問題だと思います。
 はっきりいって、この本がミステリーとして扱われているのは、博物館側のエピソードがあるからなんですよね。メインテーマは精神医療の実情と解離性同一障害の治療にあてられているはずなのに、サブのはずの博物館側の話だけが完結しちゃって、メインの精神医療の方は問題が起きて榊が自分の価値観を変えたところで終っちゃっている。
 もちろん、あの終わり方もありとは思います。ようするにどれだけ精神医療ってものが難しいかを語って、そのうえで榊の考え方が変わったことで一つの終止符が打たれたわけなので、あそこで終ってその後の物語を想像させる、って完結の仕方も、ありとは思います。

 でも、この本の構成の場合、別になくても成立するまったく関係のない話にページを取られて、結局メインの方がうやむやになっているようにしかとれないんですよね。

 博物館側の話が精神医療の話の方に関わるのは、五十嵐さんの話と沢村先生の死亡理由だけだと思うので、余計にそう思います。これがもっとうまく話の根幹まで食い込むのなら話は別でしたが、はっきり言って亜佐美の治療の話とはまったく関係がない。全然別の話でも成立するのに、どうして同時進行なんてしたんだろうか。

 そもそも、本書の裏に書いてある内容紹介では、博物館側の話なんて一言も記されていないですし。『正常と異常の境界とは、<治す>ということとはどういうことなのか?』というのが主題だと思いますが、確かに博物館側の話にも通じるところがあるとは思いますが、重きを置いているのは亜佐美を例とした精神医療のはず。だったらそれだけで書けばよかったのに、と思ってしまうのです。

 もし、この話が精神医療の話のみで描かれていたら、最後の結末も簡単に受け入れられると思うんですけどね。人の固定観念を崩して納得させたという意味で、あれはあれでちゃんとした終わりではありますから。

 それに、個人的な話、博物館側の話が正直つまらなかったのも……。狛犬が贋作だろうがなんだろうがどうでもいいって。こちとら多重人格がどういう病気で、どう榊が立ち向かっていくかが見たかっただけなのに。



 まあ、そんな風に愚痴も多い感想ですが、面白かったには面白かったんですよ? とくに広瀬が解離性同一障害だったってところからの盛り上がりはよかったですし。ほんと、精神医療の方にのみ焦点当ててくれたら、それはそれで傑作だったと思うけどなぁ。

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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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