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『永遠の出口』 著/森絵都  感想

2009.10.27 *Tue
永遠の出口 (集英社文庫(日本))永遠の出口 (集英社文庫(日本))
(2006/02/17)
森 絵都

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 私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった。



 随分前に買ったものなんですが、ようやく読了。
 ってか、読了して一週間以上経過。もっと早く感想書くべきだったんでしょうけど、なかなか思い立てなくて。

 とりあえず、本書は第一回本屋大賞の四位に選ばれたことのある本です。
 内容は、とある普通の少女の小学生から高校生までの九年間を描いたもの。そこで語られる物語は、どこか親近感を覚えるようなエピソードだったり、ちょっと突飛な物語だったり。
 一人の少女の成長していく過程を描いた、面白い小説です。





 さてさて。では本編を踏まえて感想を。


 一応、連作短編の形式なので、各章ごとに感想書きたいと思います。(ってか、そっちが絶対書きやすい……)




・第一章『永遠の出口』
 本書のタイトルにもなっている『永遠の出口』
 永遠という響きに弱いと言う紀子が体験した、永遠の出口を抜けた一つのエピソード。

 お誕生日会なんて、男でしかも平成生まれの僕からすればもう作り話以外の何物でもないんですが、七十年代八十年代の話を聞くとあながち嘘でもないってんだからびっくりです。まあ、その頃はまだ近所づきあいなんかも根強かったんでしょうけど。
 第一章は、そんな中で起きた一つの事件。

 子供なんて身勝手なもんだけど、それでもしっかりといろいろ考えているんだよ、ってのがよくわかる話に思います。
 冒頭で姉の『永遠に~』と言われて沈み込むさまを描いているからこそ、ラストで紀子がいかに好恵のためにできることを考えるのに熱中していたかがわかります。それまで自分の目の前のことばかり気にしていた紀子が、初めてほかの方向へ視点を移すことができたエピソードではないかと思いました。


・第二章『黒い魔法とコッペパン』
 何気にバイトの話に次いで好きな話。
 でも、できれば黒魔女との戦争の風景がもっとほしかったなぁ、とか思ってみたり。

 ここで面白いのが、小学生が小学生なりに物事を考えて必死に抵抗しようとしているところですよね。
 大人に頼らず自分たちだけでどうにかする。その結果として、最終的に団結できたというのは、自然な流れですがなかなか難しい。そこに至るまでを短い中でうまくまとめてあるなぁと思いました。

 あと、個人的に怖い先生ってのには僕も思い出があるので、余計に紀子たちに感情移入してしまったという……。


・第三章『春のあなぽこ』
 子供だけで遠くまで旅行なんて、ほんとわくわくどどきどきが合わさってよかったよなぁ。
 自分の子供のころを思うと、確かに隣町に行くのだけでも大冒険でしたからね。自分の世界が広がったような快感と、いきなり知らない場所に放り出された不安とが入り混じった感情は初々しくて懐かしいです。
 まして、それが小学生から中学生に移る間の出来事ってのが、またいい時期ですよね。大人になるステップを一つ上る途中という、宙ぶらりんなその状態だからこそ、冒険もしたくなるし、その冒険での高揚がある。

 あと、最後に友達と別れるときの別れの描写がまたいいなぁ。確かに手紙をやりあったり電話をしあったりはするけれど、やっぱり離れたら次第に疎遠になっていくもの。そういうことを子供心ながらに理解している描写が、自分の当時の気持ちを代弁してくれているように思いました。


・第四章『DEAD RED WIN』
 素晴らしい黒歴史。
 これから五章にも続く話ですが、あはは。黒歴史はやっぱり誰にでもあるんだなぁ、と思うような話。部活動に関してもそうですけど、そのあとぐれるところがなんていうか、まあ。

 葡萄酒の暴発で漏れた紀子の本音は、実際誰にでもわかることだと思います。子供ってのは、やっぱり親が正しいと自然と思ってしまうものですしね。そういう意味では切ないなぁ。


・第五章『遠い瞳』
 大人ってのは子供からなるものですけど、やっぱり本当の意味で双方が理解しあうことはできないんだなぁって感じの一遍。
 大人から見た子供ってのは、やっぱり自然と純粋なものを求めてしまうんでしょうね。まだ未熟で幼いからこその純粋さ。けれど、とうの子供の方は、拙いながらもしたたかで、やっぱりいろいろ考えているもの。
 子供からすれば、自分がどれだけ巧妙にやろうとしても、大人はしっかりと子供たちのことをわかって、「馬鹿だなぁ」などと考えているんだと思いたいんですけどね。
 事実を知ったときの何とも言えない苦々しさはやっぱあるなぁ。


・第六章『時の雨』
 どんなに仲のいい夫婦でも喧嘩しないなんてことないでしょう。
 まあ、紀子の家の例は、離婚の危機という極端な物語を示しているわけですが、実際夫婦喧嘩しない夫婦なんてなかなかいるもんじゃないと思います。子供のころに初めて見た夫婦喧嘩の衝撃もついでに思い出してみたり。

 しっかし、紀子の父親は随分能天気だな……。まあ、その能天気さが結局は功をなしたわけですが、もしああいう事件が起こらなかったら絶対離婚だよなこれ……。


・第七章『放課後の巣』
 これが一番好き。
 気分的には今の自分にとって共感しやすいから、ってのがあるんですけどね。しかし、バイトかぁ。

 今までどんなに背伸びをしても子供でしかなかった紀子が、初めて社会に出て、大人の世界に自ら触れた瞬間の話。
 最終的に<ラ・ルーシュ>が変わってしまったわけで、それが確かに店としては正しい姿だというのはあるんですけれど、やっぱりさびしい感じはありますよね。学校といった場所とはまた違った堅苦しさ。それが仕事というものなんだけど、やっぱりすぐに割り切れないよなぁ。(僕自身、あんまりそういう割り切りができていないから余計に思います)


・第八章『恋』
 黒歴史。
 いや。頼むから、古傷えぐらないで……と頼みたくなるくらいです。

 できればノーコメントにしたいんですが、とりあえず一言言うと、やっぱり恋に恋してるんだよなぁ。


・第九章『卒業』
 成長して、自分が子供でしかなかったってことを理解して、そうして大きな世界の一端を知る。
 ある意味では『子供』っていう『永遠』を抜けた瞬間を描いているんだと思います。第一章ではあれだけ小さな出来事だった永遠の出口が、高校を卒業するときは随分と大きくなっている。そして、それでもまだ、人生という長い時間の中では、とてもちっぽけなものであるという。

 大きなものとして宇宙を題材に持ってきていますが、実際高校卒業する時に右も左もわからない状態で社会に出たら、宇宙を見るようなものとむっちゃ変わらないよなぁと思います。ってか、これも自分がそうだったしなぁ。





 そんなわけで、全体通して、まるで自分の黒歴史でもえぐられているかのような気分にさせられた連作短編でした。
 これは、読む年齢によって感想別れるだろうなぁと思います。成長したらもう一度再読したい。

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CATEGRY : 森絵都

COMMENT

こんにちは。森絵都さんの出世作ですねー。私も彼女の著作では1、2を争う好きな本です。
私は、お誕生日会結構やりましたよー。思い出してみると女の醜い争いがありましたね・・・。
今読み返すと似たようなことしてたなー、っとなかなか痛いです(苦笑)


「つきのふね」や「DIVE!!」、「アーモンド入りチョコレートのワルツ」も児童文学とは思えないぐらい完成度高いですよね・・・。
2009/10/29(木) 19:48:00 | URL | アイスドール #- [Edit
森絵都さんは、僕は中学生の時に読んだ『カラフル』が一番好きですね。ちょっとした思い出の作品なので。
『つきのふね』は小学生のときに読んだのですが、当時の幼い知識ではすごく大人のことのように思えましたね。森絵都さんの小説は、子供に対して一段上の大人の姿を見させるようなところがあるように思います。

しかし、ほんとこの『永遠の出口』は黒歴史発掘小説ですねww
2009/10/29(木) 21:06:54 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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