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『さよなら妖精』 著/米澤穂信  感想

2009.10.02 *Fri
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
米澤 穂信

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 「人間は、殺されたお父さんのことは忘れても、奪われたお金のことは忘れません」




 つべこべ言わず、いいから読みなさい。
 そういいたくなるような話でした。ああ、面白かった。こういう形の青春ミステリーもあるんだな、と目からうろこの気分です。
 一応ジャンルとしては日常系ミステリーとなっていますが、それはどっちかというと味付け程度。ってかミステリー期待して読むんじゃないよ、と忠告したい。読ませる場所はそういうところじゃないんだから。青春の一ページと、それの終わり。そういったものが巨大なものを知ってしまうやるせなさとともに描かれている小説でした。
 これはほんと、古本なんかじゃなくて定価で買うべきだったなぁ、とちょっと後悔。うん、そのかわり、これからは米澤さんの本は全部新刊で手に入れてやる。

 とりあえず、おすすめ。いいから読めや。





 以下から、ネタばれありの感想。







 いろいろ考えさせられるような内容ではあるんだけれど、そんなことよりラストのやるせなさの方が強くてしんみりしちゃう方が多いんですよね。こういう結末にしかたどり着けなかったことに対する主人公の悔しさやら何やらがしんとしみわたってくるようで。


 結局のところ、この話の主題は主人公の守屋の青春の終わりを描いたんだなぁ、と読み終わった瞬間に思いました。
 自分には何かできるかもしれないと思いながらも、日常の中で何ができるかわからずにもがいている。そんな中で見つけた、可能性。マーヤという少女と触れ合うことで、自分を変えるのは彼女に関係するものではないのか、と思いながら追いすがっていく。
 けれど、それが最後のマーヤの兄からの手紙によって現実に引き戻される。確かに、彼自身は本気で何かを変えられると思っていただろうし、マーヤを救うこともできると思っていたかもしれないが、当事者たちからすれば滑稽以外の何物でもない。国際問題という大きな存在を前に、そういう素養も立場もない守屋は、ただひたすらから回ることしかできない。
 そのことを、僕には笑うことが出来ない。所詮、僕も守屋のように何かができると思いながら、何もできなかった人間です。彼のように、非日常的な存在が目の前に現れたら、それこそ自分にも何かが変えられるんじゃないかと勘違いしてしまっても仕方がないと思います。そして、その考えがおごりだとわかった瞬間が、すべてを思い出にしてしまう瞬間なのかもしれない、とそう思います。


 結局、戦争だなんだって今の日本人が言っても、それにどれほどの説得力があるか、って話なんですよね。ぶっちゃけ僕は戦争なんて知識でしか知らないし、それも漠然としたものでしかない。日本人のほとんどはそうじゃないかと思います。いくら自ら情報を集めたとしても、それはしょせん実体験とは違いますし、またどっちにしろ他人事です。当事者たちにしてみれば、同情されようがなにされようが、「結局あなたたちにはわからないでしょう?」が答えになるわけでして、いくら必死に守屋がユーゴスラビアとマーヤのことを理解しようとしても、理解はできても実感は出来ないわけでして。
 たとえば本書の感想を漁っていく過程で、戦争という事柄に対して主人公の考えの及ばなさを批判している感想が結構あったのですが、ではそういう人たちはどれだけ戦争というものを知っているのだろうか、とちょっと疑問に思います。確かに守屋の考え方は極端で、結局のところマーヤという人物を通してみるユーゴスラビアの戦争でしかないので、あまりにも稚拙な面はありますが、しかし誰だって似たようなものだと思います。それこそ、戦争なんて戦争を体験したことのある人にしかわからない。っていうか、何らかの事象は、同一の体験したことがある人にしか、本当の意味での理解はできないんですよ。特に戦争のような大きな事柄は、作中でもマーヤの語ることとニュースの語ることにちょっとした食い違いがあるのと同じで、一方の視点からは見れてももう片方の視点からはなかなか見ることが出来ない。守屋は守屋の視点でしかそれを見れないのだから、批判するのはお門違いだともおもうんですが。

 作中で文原が、『俺は、自分の手の届く範囲の外にかかわるのは嘘だと思っている』というセリフは、考えてみればこの小説の中でもとても重要なキーワードですよね。結局のところ、彼ら彼女らにとってマーヤという手の届く存在は本当でも、ユーゴスラビアという遠い国は、嘘、というよりも夢のようなもの。それを追い求めることを否定するわけではないですが、それをつかむためには自分の手の届く範囲が広くないとどうしようもない。所詮島国根性丸出しの人間にゃ到底無理、つーかわかった気になるのが一番悪いんじゃないかなーとか何とか思いました。(こうやって書いている状態でも、自分はわかった気でいるんだろうなぁと思うと、なんかやるせない)



 よし、真面目な話は終了。


 さてさて。キャラ話ですが、太刀洗さんが最後までかわいそうな役割だなぁ。最後の心情吐露がとても痛い。マーヤの最期を知ってギリギリの状態だったからこそ飛び出た本音がかわいそう。そこをぶつけられて、守屋も余計にダメージ受けたように思います。
 白河に関しては、守屋がマーヤにバレッタをプレゼントした時に詰め寄ったところが印象的すぎです。うーん、っていうか、はたから見ても太刀洗の想いはまるわかりだったのだろうなぁ。そういう誰かのためにかぶっていた猫をはぐ姿がなかなかいい感じ。
 文原に関しては、最後まで自分の関わるべき位置を定めていたところが潔い。彼のそういう態度があるからこそ、守屋の稚拙な憧れが際立つんですよね。どうせならもう少し彼と守屋の会話がもっと欲しかったところ。
 最後にマーヤですが、ああ、もうこの娘いいな。古典部シリーズの千反田えるにキャラが似ていますが、こういうキャラクターの方が話を進めやすいというのはあるのでたぶんわざとでしょうね。彼女に関しては、いろいろ不明な点が多い(日本語のうまさ、日本に具体的に何をしに来たのかは、説明はあったけれどどうも具体的ではないんですよね)ので、あまり釈然としませんが、まあそこを求めるのは無粋ですかね。あんまり突っ込んでしまうと、彼女がユーゴスラビアのどこ出身なのかが分かってしまうでしょうし。



 正直、この話だけで終わるのはもったいないなぁと思う物語ですが、完結しきっちゃっているのでどうしようもないですね。うーん、やるせないって言うかなんていうか。こういうのを青臭いって言い捨てるのは簡単ですが、誰にだってこういう感情がある時代はあったってことを分かってほしいなぁ。
 なにはともあれ、面白かったです。うーん、ほんと米澤さんがどんどん好きになっていく。

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CATEGRY : 米澤穂信

COMMENT

私も最近読みましたー。
登場人物の何気ない一言一言がもの凄く考えさせられますよね。私たちにとって戦争は知識だけはあっても結局「外側の世界」でしかなくって、守屋はそうした私たちの本質をついたキャラなんですかね。
・・・私もちょっと自己嫌悪に陥りました。


私も実物欲しいんですけど・・・お金が・・・。米澤さんは次は冬期限定を刊行予定らしいですし、零崎4冊発売も待ち構えてますし。出版社ぁトチ狂ったか!

「犬はどこだ」も是非読んでみてください。
2009/10/02(金) 20:09:48 | URL | アイスドール #- [Edit
ほんと、いろいろ考えさせられる話ですよね。
特に日本人では、守屋を批判することができる人はほとんどいないと思います。どんなに戦争のことを知っていても、それによってどういう感情を持つかは当事者同士にしかわからないことなので、わかったふりしかできないはずですから。
……しっかし、この本の感想を漁っていると、日本人にどれだけ偽善者が多いか分かってしまってちょっと鬱になりました。うーん、そういう僕も偽善だって言われたらそれまでですが。

『犬はどこだ』も絶賛探し中です。こいつはできれば定価で手に入れたい……。


しかし、話はかなり変わりますが、零崎四冊は本当あほとしか思えませんよね……。普通に四か月連続観光とかでいいと思うのに。

ではでは。
2009/10/03(土) 03:13:16 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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