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『追想五断章』 著/米澤穂信  感想

2009.09.27 *Sun
追想五断章追想五断章
(2009/08)
米澤 穂信

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 すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている。




 というわけで、米澤穂信の新刊、やっと手に入りました。

 しかし、分量と文体の割には、構成に無駄がないからか、さくさくと読めた気がします。一つ一つの要素が次への布石になっていて、最後にしっかりと謎解きがされるという、ミステリとしては基本の方式ですが、題材が題材だからか、新鮮に読めました。
 僕としてはすごく面白かったのですが、物語としての盛り上がりはそれほどないので、そういうものを期待する人にはお勧めできないかもしれません。そもそも、帯の煽り文章が『青春すぎ去りしあとの人間を描く』ですしね。
 個人的には、最後の『雪の花』に至るまでに、主人公の視点から断章の執筆者である北里の視点にシフトできれば、それこそぐっと来る余韻が感じられるのではないかと思いました。



 それでは、ここから先はネタばれありで。




 この作品のキモである、叶黒白の短篇を、いかに読むかが、楽しめるか楽しめないかの境だなぁ、と思いました。
 僕自身、あまり時代がかった文体は好きではないので、はじめの『奇跡の娘』の文章では、ちょっと戸惑いました。けれど、これに関しては、最初は流し読みしても終わりでどういう問題が浮上するのかはしっかりと読めると思うので、次に続けることができます。
 その次の『転生の地』で僕は面白いな、と思うことができたので、ゆっくりと物語の中に入っていくことができました。もしここで入れなかったら、次の『小碑伝来』はもっと文体が堅いので、ちょっときついかもしれないなぁと思いました。
 そして、この断章をよく読んでみると、結末は確かにしっかりとあてはまるけれど、何か坐りの悪い気持ちがするように思えてきました。まあ、それが結局はわざとやっていたせいなのですけど、そういうところもうまく作ってあるなぁ、と純粋に思います。(そして、それをバラバラにした北里の真意も、娘を思う気持ちとしてしんみりとなれてうまいと思う)


 物語の主人公である芳光のキャラも、この話としてはきれいにマッチしていたと思います。
 芳光は、話に深入りはしますが、しかしそれによって何か自分が強く変わることはありませんでした。もちろん、最終的にはこの件が終わったことで、実家に帰ることを決意しますが、それは結果として生じただけで、内面が変わることは一切なかったと思います。というより、変わりたいと願って断章探しをしていたけれど、変わることができなかった、という方が正しいのでしょう。
 そのため、彼の視点は非常にドライに感じます。一つ一つの断章を集め、それを読む。その時の芳光の心情はあまり描かれないので、読者は自分自身の気持ちで断章を読むことができます。そうすることで、最終的に『雪の花』において、読者はそれぞれの気持ちで北里の真意を想い、話を追えることができるのではないでしょうか。このはっきりしないところが嫌いな人はだめでしょうが、こういう雰囲気が好きな人にはたまらない話だと思います。


 しかし、思い返せば思い返すほど、この話は主軸以外はひどく現実くさい物語に思えてきます。そういうところが、本書を読み終えた後の脱力感や物足りなさを感じるのではないかと。
 実際、主人公は実家に帰っちゃうし、途中まで手伝ってくれた笙子はあっさりと調査からおりちゃうし、といろいろ現実的すぎる問題が多くあります。まあ、だからこそこの小説がおもしろいと思えるのですが、そこを肯定的に見るか否定的に見るかで評価が完全に分かれるところなんでしょう。ってか、正直空想の中でくらい夢を見たいと思っている人には、絶対にお勧めできないですよね。



 そんなわけで、個人的にはかなり楽しめました。ってか、米澤さんはほんと少しずつバリエーションを増やしているなぁ。どの米澤が好きかはその人次第。まあ、僕は今のところ全部好きです。

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COMMENT : 2
TRACKBACK : 1
CATEGRY : 米澤穂信

COMMENT

この作品の中に仕掛けられた謎にワクワクしながら読み進めました。
トラックバックさせていただきました。
2011/03/26(土) 02:12:58 | URL | 藍色 #- [Edit
うおお、今読み返すとひでぇ感想……。面白かったんだけどなぁ。

トラックバック返しますね。
2011/03/26(土) 03:18:42 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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