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『遠まわりする雛』 著/米澤穂信

2009.08.19 *Wed
遠まわりする雛遠まわりする雛
(2007/10)
米澤 穂信

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 「いいえ。もう春です」



 久しぶりの更新となります。うお、もう一週間以上あけてやがるぜ。

 というのも、前に読んでた本が妙に時間かかった所為でこんなになっちゃいました。しかもその本はオチが……。
 まあ、そんなことはいいとして。この『遠まわりする雛』は、米澤穂信さんの『古典部シリーズ』の四作目という位置づけ。ただ、これまでのシリーズと違って、今回は短編集。ホータローたちの一年生の間を描いています。
 しかしこのシリーズ、感を重ねるごとに面白さが増していくなぁ。謎も小ネタが多いですけど、ちゃんと短い中に伏線張ってきれいに終わらせてくれますし。こういうところ、この作家はうまいよなぁと思います。キャラクターとかも魅力的ですけど、何より構成がうまい。見習いたいものです。


 さて。それでは。とりあえずこの巻で僕の千反田えるに対する印象がかなり上がったという事実を伝えた上で、各話の感想に移りましょう。(しかしえる可愛すぎだろ。そりゃホータローもああなるわ)






○やるべきことなら手短に
 「やらなければいけないことなら手短に、だ」

 四月。まだホータローたちが高校に入学して、古典部が始まったばかりの頃の話。
 『氷菓』事件がまだ解決していないためか、ホータローとえるの関係が探り探りなのがなかなか面白いです。それでも彼女の『気になります』に押されるところは、ホータローのこれからをかなり暗示するようにも見えるなぁ。
 しかし、個人的に言わせてもらうと、素直に音楽室に行って解説をした方が、わざわざえるの目を盗んで掲示板に掲示するよりも簡単のような気がするんだけど……。省エネ、ってのもめんどうくさいなぁ……。


○大罪を犯す
 俺が犯す大罪は、「怠惰」だけで充分に過ぎるというものだ。

 やべぇ、これはむちゃくちゃ共感できる話だわー。
 まあ、先生ちょっとやめてよ、って話ですけどね。うーん、でもその書き間違えはよくわかるわ。僕も昔やったことあるし。誰でも一度は経験したことあるでしょうし、日常の謎としてかなりいい話でした。

 他は、『ウリエル、ガブリエル、チタンダエル』とかかなりつぼりました。えるの場合、『怒る』というよりも『叱る』というのが印象として正しいというのもなかなか。なんか本編ではあまりぱっとしなかったように思えたえるのキャラが、この辺からかなり前面に出てきたように思えました。



○正体見たり
 「きょうだいが欲しかったんです。尊敬できる姉か、可愛い弟が」

 この話のオチも、兄弟がいる人はなんとなく理解できるだろうなぁと思います。
 多分、梨絵と嘉代もそんな仲が悪いというわけではないんでしょうけど、完全に力関係ができちゃってるのがわかるからなぁ。ってか、兄弟姉妹の喧嘩って、だいたいこういうところから始まるし。
 最後のえるの独白は、兄弟を欲しいと一度でも思ったことがあれば、その切なさもわかるでしょう。僕も兄か姉がほしいなと思ったことはあるんですが、ぶっちゃけいてもむっちゃ変わらないだろうなとも思います。そんなもんです。

 しかし、ホータローがのぼせてぶっ倒れたのは笑いました。いや、いくらなんでも弱すぎだろ。あと、露天風呂に行く前にえるとあったときの、「ここ、混浴じゃないようですが」「湯船までは同じとは言っていない」の流れは、不覚にも萌えてしまいました。うむ、こういうさりげないところが可愛いぜ。あとホータローの微妙な一人称での言い回しがやっぱりツボだ。



○心あたりのある者は
 「思えば遠くに来たものです」

 瓢箪から駒というより、瓢箪から将棋盤が出てきたような衝撃ですね……。
 もはやホータローの語った推論は的中すると考えた方がいいのかもしれないくらいのミラクルヒットですね。ってか、よく校内放送だけでそこまで推測を進められるなと感心すらもします。

 しかし、そもそもこのゲーム、前提がおかしいような……。わざと荒唐無稽な解決持ってきたとしても的中してしまっている時点でもうどうしようもないですよね。
 まあ、完全一致しているかどうかは、神のみぞ知る。というか、何気にこれって後期クイーン問題のような……。多分狙ってやってるんだろうなぁ。


○あきましておめでとう
 「おみくじが悪かったんじゃないでしょうか?」

 一番好きな話。
 っていうか、男の子と女の子が閉じ込められるとか、もう最高のシュチュエーションんじゃないですか! もう、青春ものとしたら絶対ひとつは欲しい夢の話ですよ。ああ、同年代の男女が一つ屋根の下閉じ込められ、そこから脱出を図る。絶対にいつか自分でも書きたい。

 そんなわけで、どんどんホータローの中でのえるの印象が強くなっていく話。ああ、もう。気にはなるけどがっついたところが全然ないホータロー可愛いよ。なんていうか、一番無害な男だよなこいつ。
 変に意識していないところが、またリアルだったんですけどね。

 さて。ミステリーとしては、まさかここで『正体見たり』での伏線を回収してくるとは、って感じですね。何気ない話が伏線となるのも慣れたものですが、やっぱりこうして明かされると「うまいなぁ」とおもってしまいます。
 まあ、そこに至るまでの流れが笑いものですけどね。見事なすれ違いっぷり。ホータローのカラ財布の勘違いは笑わせてもらいました。うーむ、報われない男だなホータロー。


○手作りチョコレート事件
 「ふぅん。そっか
  盗まれちゃったか」


 長い間謎だった里志と摩耶花の関係がわかる話。
 っていうか、これは摩耶花からすればかなり迷惑な話だよなぁ。ずっと思い続けている相手からそんな反応されたら、正直嫌ですよ。それでも思い続けているところがまた健気ですが。
 里志が犯人だって言うのは早い段階からわかりましたが、その理由の深さはなかなか反応しづらいです。物事の見方は単一じゃない、と言うまでもなく、人の考えの重さなんて、わかった気にしかなれないものですし。それに、里志の場合ちょっと経緯が特殊ですからね。前提にある「何にものめりこまない」という部分が、信念として立ててしまったがために、融通きかないところが問題か。
 はたから見れば「何言ってんだこいつ」って感じですが、本人にしたらかなりの結構な問題なんでしょう。うーん、でも、答えが出る日がくるとは思えないのが……。

 これで摩耶花に自分の考えを語っていなかったら問題ですが、ちゃんと言っていたのでまだ救われるかもしれないです。ただ、受け入れてもらうまでの間はかなり辛いよなぁ。
 里志の気持ちを知っていながら、それでもできる限りの努力をする摩耶花のしたたかさが好きです。そのためにえるがちょっとかわいそうなことになっちゃったのがあれだけど……。


○遠まわりする雛
 「寒くなってきたな」

 やっと自分の気持ちに気付いたのかホータローは。
 しかし、ちゃんとチョコレート事件と絡めているところがナイス。前の話は雑誌掲載だったところを見ると、ちゃんとそういうところまで考えて話を作っているんだろうなぁ。

 というわけで。謎よりも何よりも。ホータローの揺れ動く心情が最高です。えるの意外な一面にいちいちあたふたしているところがもうなんだこいつ何の乙女だっていう。いや、こういう可愛い反応を男が取るのは大好きなのでもう胸キュンですけどね。恋愛もので、女が可愛いのは当り前ですが、男が可愛いのが一番素晴らしいと思います。
 ただ、最後のあそこで思いきれないところが、やっぱりまだ完全に恋に発展していないからなんだろうなぁとも思います。まだ現状が一番楽しいから、そのままでいたいという気持ちが強い。そのことを悟ったときに、里志の気持ちも分かることができてしまったのが、ある意味皮肉にも思えてちょっと切ないかも。
 何も変わらないえるの心情だけがちょっと気になりますが、それはまだ保留、ってことですね。でも、次第にホータローに依存しているようにも思えるので、最終的に相愛になったらいいなぁとは思いますが。



 というわけで、かなり面白い短編集でした。
 この話、早く文庫落ちしないかなぁ。それと、続きがかなり気になります。二年生になった彼らが、いったいどんな事件に挑むのか。今から楽しみですね。

 ではでは。

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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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