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『見知らぬ妻へ』 著/浅田次郎  感想

2009.08.07 *Fri
見知らぬ妻へ (光文社文庫)見知らぬ妻へ (光文社文庫)
(2001/04)
浅田 次郎

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 「幸せって、目に見えるのね」(『うたかた』より)



 というわけで、浅田次郎の短編集。
 もう僕は、浅田次郎の短編ってだけで本を借りてきました。しっかし、毎回毎回いい話そろってんな短編。借りるだけじゃなくて欲しいわホント。

 さて。内容としては、男と女のちょっと切ない関係を描いた八つの短編集です。結構べたな話も多いんですけど、そこでもある種の余韻を残してくれるのが浅田次郎のすごいところ。余韻って大切ですね。




 では、ここから先は内容も踏まえて。




○踊子

 最初はちょっと読みにくかったですけど、最後の一文にぐっときて、思わず読みなおしてしまいました。
 思いも通じ合っていない状態というと、やっぱり切ない感じがするように思うんですが、ここではなんか妙に満たされた感じもあるんですよね。そうやって、コーがナオミのことを、ごまかさずに好きだと認めることで得られる充足感。そこにある一つの恋の終わりが、「ああ、いいなぁ」と思えました。



○スターダスト・レビュー

 ヒロインの登場しない恋愛小説ってすげぇ。
 まあ、内容的には恋愛というよりも、あらすじで書かれているように元音楽家の孤独を描いているんですが、こっちはラストの切なさがかなり印象的です。
 変に成功させないで、希望をあきらめさせたうえで現実に向かわせようとするところがすごかったです。ある意味『夢の終わり』なので、やっぱり切ないんですけどね。



○かくれんぼ

 ……地味に怖い。
 戦後って、やっぱりこういうことあったんだろうなぁ。ジョージへのいじめが妙にリアルで怖く、またその仕返しも生々しくて……。
 ガキ大将が大人になったらどうなったのか、というのが描かれていたのもすごいなぁと思いました。違和感ないんですよね。子供のころ威張っていた分、大人になってしまったら威勢があまりよくないという。
 最後に山に向かって「もういいよ」と叫んだのは、自己満足の域を出ないとはいえ、彼らの中で区切りをつけるという意味ではよかったんだろうなと思います。



○うたかた

 一番面白かった。
 冒頭で突然出てくる死体と、そうなるまでのおばあさんの心情がわかった時は、なんか胸がいっぱいになりました。ひとりの人生の終わりって、やっぱりうまい人が描くとすごく映えるよな。
 戦後の、僕が知らない時代を描いているのもまた興味深かったです。『かくれんぼ』にしてもそうでが、自分の知らない時代をリアリティあるように描いてくれると、かなり勉強になります。あー、ほんとこういうの書けるようになりたいなぁ。



○迷惑な死体

 笑っていいのかかなり困りましたけど、白状すると笑いました。シュールやな、おい。
 けれど、やっぱりラストはいい感じ。こういう狙ってやって滑らないってのはやっぱり筆力の違いが如実に表れますよね。母が女について語るところは、変にスミコが良次のこと好きだと明言するよりも、よっぽど効果的でした。
 うーん、しかし。いきなり家に死体があったら困るよなぁ。



○金の鎖

 どれだけ歳をとっても、女は女ってことですね。
 出会ったのが息子の方だっていうのも、また妙な因縁で。昔の思い人をその息子に投影しようとしてし切れない心情が切なかったです。ナベさんへの分かってもらえない思いがあるからこそ、余計にかわいそうだなぁ。
 今さら気持ちを告白できるかどうかわかりませんが、どこかで分かってもらえるといいなぁ。



○ファイナルラック

 なんだこの妙な満足感。
 これもまた、ひとつの生き方の終わりなのかもしれません。ラストの後、競馬の結果が明かされて、そのあとどうなったかがかなり気になりますが、そこはやっぱり言わぬが花。あー、くそ。演出がうまいなホント。
 こういう感動もあるんだって思いました。



○見知らぬ妻へ

 表題作。
 正直に言うと、『鉄道員』に収録されている『ラブレター』と設定がかぶっている上に、どっちかというと『ラブレター』の方がよかったので、ちょっと微妙だったんですが。
 まあ、それでもラストのあのもどかしさは『ラブレター』に通じるものがあります。一心に慕ってくれているとわかるからこそ、余計に切ない。
 あと、途中に挟まれる娘との電話がまたきつかったなぁ。追い詰められていく花さんが本当にかわいそう。どうすれば最良の結果が得られるかわからないでうずくまっている感覚に、妙に感情移入できる話です。





 そんなわけで。たぶんすぐに忘れてしまうような印象としては薄いものが多いですが、それでも独語のあの余韻はいいなぁと思える浅田次郎の短編集でした。


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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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