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『天使のナイフ』 著/薬丸岳  感想

2009.07.28 *Tue
天使のナイフ (講談社文庫)天使のナイフ (講談社文庫)
(2008/08/12)
薬丸 岳

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 「大勢の人間を不幸にしたあんたの罪は軽くない」




 第五十一回江戸川乱歩賞受賞作。
 その評判は方々で聞いていたので、ずいぶん前に購入はしていたのですが、ようやく読了。
 なんで今まで読まなかったのか、とかなり後悔しています。

 もう、これは絶対にお勧めです。
 共感するかどうかとか関係なく、全員に読んでもらいたい。そして、それぞれで自分の考えをちゃんと考えてもらいたい。
 語られていることは陳腐なことですが、それゆえにかなり深い。





 内容ネタバレなしにかける自信がないので、ここから先はネタばれありで。







 この本は、罪を犯した人の更生についての物語です。
 語られている内容は、本当に単純なんですよね。ただ、被害者が加害者を憎む、憎しみの連鎖が止まらない。その連鎖を止めるための一つとして設けられている『少年法』が、余計にその連鎖を強くしている。

 物語の主人公、桧山の視点で物語は進むから、彼の考えに感情移入するのは仕方がないと思います。どうしようもないほど被害者でしかない彼は、ただ加害者を憎み、何もしていないとはずの妻が殺されるという不幸を嘆く。けれども、この立場を途中で逆転させるところがこの小説のすごいところだと思います。
 被害者だったはずが一転して憎しみを受ける加害者の立場に。その時の桧山の感情を推測させる形だったのがまたいい。自分も今まで、被害者の立場として憎しみをずっと持っていただけに、相手の気持ちをむげにすることはできない。けれども、相手の言葉をすべて肯定するわけにもいかない。そのはざまで揺れる中、最後に桧山が、すべてわかった上でも妻を愛していると言ったところが、べたですが印象的です。

 個人的には、少年の更生に、被害者の家族が悪影響を及ぼすとは思えません。っていうか、そんなことしたら罪を罪と認識しなくなるんじゃないでしょうか。
 なんで自分がつかまっているのか。まだ考えが幼いからこそ、そういう事実と少しずつ向き合っていくシステムが必要だと思います。もちろん、被害者の方は怒りを抑えられるわけがないから、ひと悶着起こるかもしれないけれど、それをなくすために被害者の方のカウンセリングもちゃんとやりながら、とか。
 そういうシステムが欠如しているのは、単にその費用が足りないから、というだけじゃないでしょうか。もちろん一般に言われているように、未成年のプライバシーの保護もあるんでしょうけれど、それだけにしてはあんまりにも被害者家族の扱いが不当に思えるんですよね。そりゃあ、これだけがっちりとガードされて守られれば、怒りのぶつけどころのない被害者は復讐もしますって。
 本当の更生ってのは、桧山の妻みたいに、自分の罪と向かい合って、一生かけて償う覚悟をすることなんじゃないかと思います。そのためには、やっぱり被害者家族との接触は必要だと思うんですけどね。(桧山の妻にしても、完全な形での接触はしていないわけですし)


 この小説を読むと、どうしても東野圭吾の『手紙』を思い出しますが、ふたつを比べながら考えるのもまたいいと思います。一方は被害者家族の立場を、一方は加害者家族の立場を描いた作品です。どっちも、結局はどうしようもないという結論を出して、その中で自分たちがどう生きるか、に焦点が当てられますが、そこから学ぶべきものはたくさんあると思います。


 そういえば、この小説の深みをより魅せるのが、ミステリー要素というか、話の構成です。
 どんでん返しだったり、あの万華鏡の話だったりといった伏線回収も凄いですが、それよりも解説で言われた、祥子のトラウマがあったからこそ起きた悲劇というのが、一番ぞくっときました。まさかそこまで計算ずくだったとは。そして、終章で語られる真実が、桧山の物語のひとまずの終わりとしてきれいな形でした。


 もう、文句なしにすごい作品でした。ほんと、それ以外にことばが出てこないわ。本当はもっと言いたいことたくさんあったんですけれど、ただ独語の余韻に浸っているとそういうのが全部どうでもよくなる。
 もちろん、考えさせられるべき所はしっかりと考えるべきですけどね。そういったことを踏まえて、やっぱり誠実に生きるのが一番だよ。ほんと。


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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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