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『太陽の坐る場所』 著/辻村深月  感想

2009.07.05 *Sun
太陽の坐る場所太陽の坐る場所
(2008/12)
辻村 深月

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 「太陽はどこにあっても明るいのよ」



 やっと読めた、辻村深月さんの作品。

 読み終わって、なんだかもやもやしたものを解消するためにネット徘徊して感想を読んでいくと、見事に評価が真っ二つだったのに笑いました。ああ、なるほどな、って感じです。

 とりあえず自分なりに噛み砕いて考えた場合、この小説は一部の、それもかなり限定された層にはとても共感を得ると思いますが、他の層の人から見たら、「何言ってんの?」ってことが多くあると思います。そのある層ってのは、学生時代を終えて十年前後経って、社会に進出して慣れ始めた人たち。それより上の世代は、もうそんな青いこと覚えてないよ、って言うでしょうし、それより下の世代は、まだ大人になる実感を持てないために共感しきれない。
 僕自身も、まだ学生の身分なのでちょっと想像に頼るところが多かったのですが、そういう目で見たら非常によくできているな、と思います。人をねたむ気持ち、自分をよく見せたい気持ちってのは誰にでもあると思いますが、20代後半という限られた年代におけるその感情を描ききっているのは秀逸。

 感想を漁っている段階で、人間性が描かれていないという意見と、ここの人物の心情描写がうまいという意見の両方が出てきているのも、たぶんその所為だと思います。良くも悪くも、読む人を選ぶ。あと、単純にミステリ的な仕掛けやどんでん返しの面白さだけを求める人にはあまり勧められないです。
 あと、冷静に考えたら、この小説を連作短編と取るか長篇と取るかでも全然印象が変わってきます。いい読み方は連作短編としてとらえる方ですが。




 そんなわけで、ここからは内容を踏まえた感想。






 まあ、ぶっちゃけて言いますと、僕はあんま感情移入できませんでした。
 そりゃあね、まだ高校卒業して一年もたたない人間にその感情を持てって言う方が無理な話ですけどね。作者の辻村さんが28歳の時に書いた小説なので、やっぱり自分のことをある程度投影している部分もあるんだと思います。

 人に対するねたみやそねみ。自分はもっといいはずだ。自分はもっと成功していなきゃならないんだ。

 そういった思いも、確かに持ってはいますが、一番強く感じるのはやっぱり二十代の後半くらいになってからなのかもな、と思いました。まだ僕くらいの年齢だったら、これから先の未来、何にだってなれる可能性がありますが、二十代の後半ともなるとほとんど立場は決まってきてしまっているころでしょうし。諦めかけて、でもあきらめられない。そういったもどかしさを感じさせるところもあるように思います。


 先ほど言ったように、この小説を連作短編として読んだ方がいいと思ったのは、それぞれの登場人物の気持ちの鬱積を、きちんと書ききっているからです。
 まあ、読めばわかると思いますが、それぞれ章がある登場人物に関しては、ちゃんとオチがついている。キョウコという名の太陽を中心に動き回る登場人物たちですが、それぞれ自分たちの中でひとつ峠を越えています。
 僕としては、聡美の章と紗江子の章が、いいなぁ、と思います。紗江子の章は一番わかりやすい形でありますが、聡美の章はあとでじわじわくる。自分のしたいことで成功してやる、っていう気概は僕も少なからず持っているので共感できたのでしょうが。

 というわけで、それぞれ分けて感想を。


・出席番号二十二番
 成功したものと成功できない自分。そこに対する劣等感を描いた話。といったところだろうか。
 最後に聡美がキョウコからかけられた言葉。自分が立てなかったステージにいる彼女からかけられたあの言葉は、嬉しい、とも悔しい、ともつかない、ひどく切ない思いだと思います。ただ、それで聡美が何か一つ自分の中で区切りをつけられるんじゃないか、と思えるのです。


・出席番号一番
 女としてみてもらえないことに劣等感を覚え、女らしい同性に対して嫉妬する話。ってところだろうか。
 紗江子の気持は、想像では分かるけど、男の僕では完全に理解できるわけではありません。ただ、どんどん真崎に覚えれていく姿は、一種の狂気も感じさせる気がする。女って怖いな、と思えるひとつめ。
 最後の貴恵が本当に救いです。っていうか、このラストは本当によかった。友情オチという、ベタで非現実なものかもしれませんが、そういう救いがあってもいいと思う。


・出席番号二十七番
 女としてのプライドを守ることにすべてをかける女の話。と言っていいかな。
 まあ、一番嫌な人間の話ですね。
 とりあえず、ここまで嫌な女を、等身大に描けたところがやっぱりうまい。嫌な人間といっても、やっぱり心の中ではいろいろ悩んだりもするんだよ、ってところをちゃんと描いていたので、リアリティを感じるな、と思います。あとで読み返したら一番読み応えがあるかもしれないです。
 こいつだけは最後まで救いがないんですよね。まあ、救われるほど弱い人間じゃない、ってのが理由の一つかもしれませんが。嫌なやつでもちゃんと自分なりに努力しているところが見れるので、嫌な人もできればもう一度読み返してみてほしいかも。


・出席番号二番
 唯一男視点の話。表すとしたら、器用貧乏な男が子供から大人に完全に孵化するところ、って感じがしました。
 いろいろ暗躍するけれど、あんまいいところがない彼。高校時代からずっと運と縁のなさがもう泣けてくるな……。
 この作品での立ち位置も、どっちかというとキョウコをつなげるための最後の綱みたいな感じに見えてしまいます。というか、それ以上の解釈ができません。読み込みが足りないだけかもしれないですが。


・出席番号十七番
 過去の因縁と決着をつける話。でいいと思います。
 人によって、この部分が蛇足に感じる人もいれば、絶対に必要だと思う人もいると思います。個人的には、あった方が話のしまりがよくなるとは思いますが。一応伏線というか、各登場人物の勘違いが判明したりもしますし。
 二人のキョウコの、成功と失敗。その対比としてはあまりうまく描けているかは謎ですが、二人とも相手にわだかまりが残っているところがなんだか良かったなぁ、と思います。二人が対話することで、それが少しだけ落ち着いた。完全になくなったわけではないでしょうが、ひとつの決着がついたのはよかったと思います。




 ちなみに、今回のメインの叙述である二人のキョウコに関しては、まあ騙されはしましたけど、そこまで驚きは少なかったなぁ。やっぱいい加減慣れてきているんだと思います。辻村さん、毎回名前ネタ持ってくるし。
 あと、個人的に一番初めに話だけ出てきた女流シナリオライターが嬉しかった。ああ、環頑張ってんだなぁ。


 というわけで、こんなところです。

 僕も就職して、数年たったらもう一度読み返したいな、と思う本です。

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CATEGRY : 辻村深月

COMMENT

こんばんは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
2009/11/19(木) 19:11:58 | URL | 藍色 #- [Edit
トラックバックありがとうございます。
とりあえずやってみましたが……成功しているといいのですが。
2009/11/19(木) 22:17:44 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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