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『黄金の王 白銀の王』 著/沢村凛  感想

2009.06.29 *Mon
黄金の王 白銀の王黄金の王 白銀の王
(2007/10)
沢村 凜

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 「だって、そんなの、ずるい」



 稲積のこのセリフで目頭押えました。やべぇぜ。

 とあるサイトさんで紹介されていたので、面白そうだと思って図書館で予約しました。十二国記が好きな人にはお勧めというだけあって、かなり面白い。っていうか、これ文庫落ちでもしたら手元に置いときたいくらい面白かったです。

 確かに、細かい点を見ればつっこみどころがないわけじゃないです。外国の扱いがあんまりだとか、途中にカタカナ文字が出てきたりとか。あと、人名が難しすぎる、という意見も多いですが、それは慣れれば気になりません。カタカナの名前に比べたら字面で覚えられますし。
 あと、内容が淡々としているのも、人によっては取っ付きにくいかも。僕はこういう淡々とした文章も、表現として好きなので問題はなかったですが。っていうか、この淡々とした文章だからこそ、稲積のセリフが映える。

 この小説の何がおもしろかったかというと、主役の二人の生き様を最後まで描ききった、というところです。王として国を統べる穭と、そのために犠牲として縁の下の力持ちになる薫衣。その二人が、いろんな障害を前にしながら、ただ翠の国のためだけを思って生きていく。ファンタジーですが、大河ドラマ的な要素がとても面白かったです。

 設定中毒の人にはちょっと物足りないかもしれないですが、二人の男の人生を描いた作品、という要素が好きな人にはお勧めです。





 そんなわけで、ここからは内容も交えて感想。




 『穭』が、辞書検索しても出てこないことに笑った。
 まさか番号を入力しないと出てこない文字があるなんて……。(僕はコピペで済ませましたが)

 はじめの導入はちょっと面倒だったのですが、薫衣が四隣蓋城に連れてこられる場面あたりですでにのめりこんでいました。

 のちの運命を決める、穭と薫衣の墓所での会話。そこで二つの部族の恨みの深さがより浮き彫りにされるわけですが、そんな中だからこそ二人が手を取り合わなければいけない、という展開が熱い。ここでぐっと物語に引き込まれるか、それとも萎えてしまうかで、この小説を楽しめるかどうかが決まると思います。


 穭の苦労と、薫衣の苦労。国を統治するという共通の目的の中、穭は思い通りにならない民衆に苦労させられ、薫衣は四面楚歌の状況に苦労させられる。穭は薫衣に対して不遇な立場に追いやったという負い目を持っていますが、薫衣もまた、穭のように政はできないと思っているところが、お互いを理解し合っているようでいい。
 二人の、信頼し合っているようで、信頼しきれないような探り探りの関係がなんとも楽しい。そのおかげで、『絶対に裏切らない』と言い切れないところが出てきますからね。ほんと、いつ穭が薫衣を殺しても驚かなかったし、薫衣が穭を裏切っても驚かないような雰囲気だったわ。(まあ、実際にそうなったらかなり悲しいですが)

 あと、次第に薫衣の才能が開花されていくのも見どころでした。
 穭のような策謀と威厳で民をまとめるタイプではなく、その人柄に人が自然と集まってくるタイプの王。その要素のおかげで、はじめは薫衣が支える役割で穭が仕切るといった構成だったのが、完全に逆転してきましたからね。もちろん立場は変わらなくても、精神的な感覚はそんな感じになりました。そこが余計に、二人がお互いに嫉妬する要素でもあったんですけど。


 他に個人的に見どころと思ったところは、やっぱり稲積の存在です。
 薫衣と稲積の初夜は、もう萌え殺す気か、と思うくらいもだえました。いや、あの淡々とした文章で書かれたからこそ悶えるわこれは。
 二人の、互いを思い合っているが故のすれ違いが、とても苦しい。元は敵の人間だったのだから、自分といては心が休まらないだろう、と両方が思っているくせに、どっちも本当は一緒にいたいと思っている。ああ、もう。どんだけもだえさせるつもりだ、この夫婦は!

 河鹿が出てきたときは、ちょっと不安定になってしまった二人ですが、その信頼関係が明らかになったのは、薫衣が蜂起できる状態でそれを蹴ったときのこと。
 正直、薫衣が駒牽に言い寄られたときは、まさかそうなるとは思わずとも、下手したら穭を裏切るんじゃないか、とドキドキものでした。しかし、それを薫衣は一蹴。鳳穐だ旺廈だというよりも、国のことを一番に考える彼の姿に、もうわかりきってはいても感動せずにはいられませんでした。
 もちろんその選択を、河鹿が気に入らないことは分かっていた。案の定な反応にぐっと我慢したまま、稲積のところに戻った薫衣が、彼女からもらった一言は、あまりにも深い。青い鳥は家にいるではないですが、「おかえりなさい」の一言は、やっぱり最高だわ。

 まあ、そのあと河鹿たちが自殺して、薫衣がやけっぱちになって出家すると言い出したのも、わからないわけではないですけどね。いくら薫衣が翠のためにすべてをささげるって決意してても、旺廈での生き方が完全になくなったわけではないですし。それに、やっぱり河鹿だけはどんなことがあっても説得しておくべきだったと思う。そこを逃げてしまった、という負い目から逃げようとしなかったところは、薫衣の律義さというかなんというか。

 そして、出家する前の別れのシーンが、本当に最高。

 それまでずっと、薫衣を困らせないように、困らせないようにと思っていた稲積が、ギリギリのところで漏らした本音。「そんなの、ずるい」。そのセリフこそが、本当にずるいですよ(泣)
 もう、このシーンがあっただけでも、この小説を読んでよかった、と思いました。鬱積した思いをぶちまける一瞬。こんなシーンを自分でも描いてみたい。



 そんなわけで、感想をまとめると稲積かわいいよ稲積になってしまうわけですが。


 本当に、なんどもいいますが面白かった。ここまでのめりこんで熱中して読めるとは思いもしませんでしたからね。うれしい誤算。

 あー、ほんと、表紙が残念だなぁ。悪くはないけど、雰囲気とあんまあってないもん。もし文庫化するんなら、デザイン変えてほしいものです。

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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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