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『向日葵の咲かない夏』 著/道尾秀介  感想

2009.06.16 *Tue
向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)
(2008/07/29)
道尾 秀介

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 「物語を作るのなら、もっと本気でやらなきゃ」



 いや、それ作家のあんたが一番思えよ……とちょっと思ってしまいました。本気は本気なのでしょうが、構成が……。(あとでその辺は語りますが)

 というわけで。
 2009年このミス作家別人気投票ランキングナンバーワン。
 要するに、作家さんがおもしろいと思った小説で一番になったものです。

 まあ、ぶっちゃけこれはこのミスとれないわな。つうか、取ったらまずいと個人的に思う。


 面白かっただけに、なんか悪い要素を言うときの文章が相当嫌な感じになっているので、気分がいされたらすいません。ただ、面白かったところは素直な気持ちで書いているので、わかってもらえると思います。

 そんなわけで、はじめにちょっと語り。

 面白くなかったわけではありませんが、納得できないところと何がしたかったのかわからないところがいくつかあって、手放しに絶賛できない感じでした。
 アイデアはむちゃくちゃおもしろかったんですけどね。だいたいこういう主題は、セカイ系みたいな感じなので好きな人はかなり好きなはずです。だからこそ、もっと各要素を深めてくれたらよかったのに、と思います。
 騙されたことだけを喜べたら幸せだったんですけど、他の要素がもったいなくて……。

 前評価が高かったのも関係あるかもしれませんが、個人的に作家別ランキングで一位になったのもちょっと信じられないなぁ。たぶん選ばれた理由は文章力の方だろうと思うけれど、もし構成力を重視している人だったらこれは選べないと思う。
 文章は、本当にすごいんですよ。サスペンスであり、ホラーである、っていうあおりもわかるくらい。ただ、ミステリ要素と、あと主題が残念。なんであと一歩踏み込まなかった、と読み終わった後延々と繰り返しました。





 そんなわけで、ここからは内容も踏まえて。






 えっとですね、何が気に入らなかったか単刀直入に言うと、前半部分がまるで意味をなしていないところです。

 ぶっちゃけ、前半で役に立ってる部分は、トコ婆さんとかミカのミスリードだけなんですよね。他の物語は、後半になると全部無意味。
 前半の疑いは一応解決したように見せかけられていましたが、ぶっちゃけ根拠までないし。それなのに当り前のように後半に進んじゃったから、読者としてはちょっと肩すかしです。そこが一番残念でした。
 それと、泰造さんの過去は、もっと早い段階で明かしておくべきだったと思います。少なくとも、もっとほのめかしておいたら、違和感なく泰造さんの方へと疑いがいけたのに。他のミスリードは、下手したらあざといくらい書いてあるのに、どうしてそれをやらなかったのかが疑問です。(この作家の筆力なら、絶対にできるはずなのに)
 とにかく泰造さんが残念なんですよね。はじめの方からちゃんとこの人は別個の章を設けられてるのに、それが全然有効に活用されてない。後半に入っていきなり警察に行き出したりして、伏線なかったので困りますよ。(厳密に言うと、ちょっとずれたところで伏線っぽいのはあるけど、物語の整合性を崩さないために付け加えられたくらいにしか見えなかったり)
 あと、S君は結局何がしたかったのかがわからないところが残念。そもそも、S君が自殺した理由はミチオなんだから普通憎んでてもおかしくないのに(まあ、後半はそういう描写があったが、前半は完全に仲のいい友達)。それと、これは根本的な問題ですけど、こいつ本当にいじめられてたのか? その時の様子と理由が書かれていたらわかりやすかったけど、別にその設定いらなくないか?(ちょっとでも異常性を見せたかったのだろうか)

 前半の岩村先生に関しても、ちょっと扱いが残念だったな、と思ったのですが、でも冷静に考えるとあれはあれで引き際がきれいだったのかもしれない。ただ、異常性愛がぽっと出てポッと消えたのが気になるだけなんだろうなぁ。(これは完全に個人的な問題なので、気にするほどではありません)


 ミステリ方面で難がある、と思うのは、S君の推理もミチオの推理も、ちょっと飛躍がすぎるところ。ってか、全部机上の空論で語っているのに、それが疑いも持たれず合致してしまう。ミチオが泰造さんを追い詰めるところは勢いがあったので素直に面白く読めましたが、S君がミチオに泰造さんが犯人だというところは、根拠が弱いように感じました。
 まあ、そもそもS君の存在自体が卑怯ですが。(こいつが虚言吐きまくるせいでミステリが成り立ってないんじゃないか?)



 とりあえず、ここまで文句ばっかり言ってきましたが、それでも面白いと思ったところはあります。

 まず、ホラー要素がすごかった。
 ここはこの作家の筆力の見せどころなんだろうな、と思います。とにかく、内面の描写がうまい。ミチオが女郎蜘蛛をS君に差し出すときの心理描写は、違和感なくすとんと落ちてきました。ああいった気分って、ちょっとくらいはみんな経験しているんじゃないだろうか。
 泰造さんのあの性癖についても、もっと掘り下げればこれくらいかるく行けただろうなぁ、と思う。ほんと、なんでやらなかったんだ……。
 最後までうそしかつかなかったS君と、それをあっけなく握りつぶすミチオの狂気も素晴らしかった。これは文句のつけようがない。


 次に、ファンタジー要素。
 ここが本書の一番の魅力だと思う。まあ、究極的にはここが受け入れられるかどうかで好き嫌いが分かれるんでしょうね。
 僕としては、こういう話は好きなので問題なしでした。むしろ、トコ婆さんの正体からミカのこと、そしてスミダさんのこととつながってきたときの盛り上がりは素晴らしかったです。これは騙されて爽快だったわ。
 そして泰造さんも生まれ変わった後に、攻守が逆転するのも良かった。まあ、全部投げ捨てるのはちょっと唐突だったですけど、それはミチオが壊れていたと解釈すれば十分ですし。




 そんなこんなで、賛成五十反対五十の半々の感想。

 ここまで自分の中で一言で感想言いづらい小説もないな……。

 本当に、前半と後半の橋渡しがもっときれいだったら、絶賛できたんですけどね。それと、もう一つ言うとしたら個々の描写は高いから、要素としての面白さは十分だけど、あと一歩踏み込まれてないから『主題』としての面白さがない。

 この小説で主題を設けるとしたら、ミチオが言ったように個人個人の『物語』とか、あと異常性とか。そういうのを求めている人にとって、この小説はあっけなく感じてしまうんじゃないかと思います。
 実際、他の感想を見てみると、絶賛している人は『生まれ変わり』のミスリードに騙されて面白かった、って言う人ですし、批判というか微妙と言っている人は、全体の構成に難を言ってるみたいですし。


 つーか、圧倒的構成力、って煽りがありましたけど、それだけは違うだろう。書くなら、圧倒的文筆力のはず。


 それと、今ふと思ったんですが、話の展開の割にいまいち言いたいことがつかめなかった理由は、キャラクターがあんまり自己主張しないからだろうな、と思いました。自己主張、っていうか、登場人物の心情が見えてこないんですよね。どいつもこいつも腹に一物持ってるくせに、それがほのめかされもしない。明かされる時になって、「実はこんなこと隠してました!」って、解決で言われてもちょっと待ってよ、と思いますよ。


 まあ、そんなこんなで、いまいち腑に落ちなかったので、自分なりに考えて書きました。


 ってか、この小説が大プッシュされてるのって、評判に誘われたからなんじゃないかな、と思ってしまいます。うーん、これ、そんな派手に宣伝しちゃいけないと思うんですけどね。好き嫌いが分かれるってのもそうですけど、もっと構成いじれただろ、と思ってしまいましたゆえに。


 ホント、面白くはあったんですけどね。
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CATEGRY : 道尾秀介

COMMENT

こんばんは。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
2009/07/23(木) 04:18:03 | URL | 藍色 #- [Edit
はじめまして。トラックバックありがとうございます。
やり方がわからないので、少し遅くなるかもしれませんが、トラックバックしたいと思います。
2009/07/23(木) 23:18:24 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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