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『葉桜の季節に君を想うということ』 著/歌野晶午  感想

2009.05.18 *Mon
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
(2007/05)
歌野 晶午

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 「そうなんだよな、みんな、桜が紅葉すると知らないんだよ」



 前評判がよかったのと悪かったのがごっちゃだっただけに、ちょっと恐る恐ると読んだのですが、想像した以上に良かったです。

 ってか、完全にだまされました。途中、この構成には何か意味があるのか?と不安だったのですが、最後にちゃんとそれがつながってきたのでぐっときた。やっぱり、叙述をするからにはこういう風に意味があるものじゃないとだめだなぁと思います。



 こっから先、重要なネタバレ含むと思うので注意。


 感想、としては、ほんと作者の仕掛けにただ舌を巻いたというしかないのです。ずっと流れはサスペンスものっぽかったのに、伏線回収が行われた瞬間に、その構成にうまさに脱帽する。『若者』と『老人』の世代格差がうまく表れている。

 本書に関して、叙述トリックがわかった後に「で、それが?」という人がいるみたいですが、そういう人はミステリとしてこれを読むからいけないんだと思います。確かに本書は、発売当時のミステリ系の賞を総なめにしたくらいですし、また内容的にもミステリ要素がたくさんありますから、そういう風に見るのが当たり前のようになっているかもしれませんが、一番肝心の叙述、つまり成瀬の年齢に関しては、ミステリというよりも普通の文芸ものとしてみるべきだと思う。それが明かされることで彼の立場が変わり、老人と若者という二つの立場の対立の姿が見えてくる。そここそが、一番大切なところだと思うのです。

 僕は若者の立場なので、若者から見たら確かに老人は老害って風に見えたりもするんだろうな、と思ってしまうので、なんとも言いづらいです。ただ、蓬莱倶楽部みたいな主張は認めたらいけないな、とは思いますけれど。
 若者から見て、老人は何を考えているかまったくわからないものです。過去、確かにいろいろ大変な目に合っているんだろうけれど、でも今は何もせずただ年金だけ貰って悠々と暮らしている、と見てしまうのもわかるな、と思ってしまいます。
 けれど、それは老人から見た若者の姿も同じで、向こうからすれば、若者なんて何を考えて、何をやろうとしているかなんて何にもわからない。考え方も生きている環境もまったく違うのですから当たり前です。ぶっちゃけ、完全に分かり合える時なんてあるわけないとも思います。

 でも、最後の章で成瀬と節子が語り合うシーンで、若いころと老いた今で、何が違うことがある、と成瀬が言いますが、そこに意表を突かれた思いでした。
 確かに僕は、若者の目からしか老人を見ていなかったので、老いてしまったら全部やりつくして、もう欲求なんて何もなくなるんだろうな、などと漠然と思っていました。でも、そんなことはなくて、70年たった後でも、やっぱりやりたいことは尽きないし、わからないことはたくさんある。現実がどうなるかはなってみないとわかりませんが、まったく別物になるなんてことだけはないのだと、当たり前のことを言われてハッと我に返った気になりました。
 でも、違うようになることはなくても、成長はする、ということも表していたのがよかった。二十歳の時の探偵でヤクザでの体験なんかは、しっかりと成瀬の心に根付いている。そうして70になったときの成瀬の選択が、より映えてくるように思える。


 やっぱり構成がいいなぁ、と思います。一見意味がないように見えた構成も、あとで考えたら20と70での成瀬の生き方の違いを対比させているようにも見えるのですから。ミステリとして秀逸、というよりも、ただ『魅せ方』として秀逸だなぁ、と僕は思います。


 しかし、簡単に感想サイト回ってみたけれど、おんなじような感想が少なくてちょっと残念です。『だます、騙される』だけの話ではないと思うけどなぁ……。



 あと、個人的には『安藤士郎という生き方』がやばいぐらいにぐっときた。別にそんなに新しいことではないけれど、でも遺言書を読んでて震えが止まらなかった。
 そしてその死が無意味だとわかって立ち上がった成瀬の姿にもくるものがある。こういった、生き様を見せつけられるのはやっぱり好きです。



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西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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