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『クドリャフカの順番』 著/米澤穂信  感想

2009.05.13 *Wed
クドリャフカの順番 (角川文庫)クドリャフカの順番 (角川文庫)
(2008/05/24)
米澤 穂信

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 「期待っていうのは、諦めから出る言葉なんだよ」







 読み終わったのは三日ほど前です。



 そして、読み終わった瞬間、こう叫びました。





 うわ、おもしれえええええええええええぇぇぇ!




 どうも。今回はちょっと厚いから読むの大変そうだなぁとか思ってごめんなさい。『氷菓』と『愚者のエンドロール』よりも断然好きです。っていうか、読んでるときの入り込みがやばかった。

 別に話としてはそこまで大したことじゃないんだと思います。日常の謎を追う系の話ですし、文化祭の話で始終緩いかんじですし。ただ、登場人物たちの心情と、主題にかけられている思いがわかったときの感慨が半端なかった。


 この小説、主題は『期待』だそうです。


 最後の方の、里志と摩耶花の二人の、諦めざる負えないような感情が痛いほど伝わってきました。



 特に、摩耶花や河内先輩なんかが感じた思いは、僕も他人事じゃないんですよ。絶対的な、敵わないと思うような才能を見せ付けられた時。それも、身近な人で、自分の知り合いだったりしたら? それを潔く認められるには、諦めてなければいけませんから。
 河内先輩の気持ちは、本当に痛いほど想像できる。『夕べには骸に』を最後まで読めない気持ちは、何らかの創作をやったことがある人ならば誰だって理解できると思う。自分の理想に近い存在の完成形があったりなんてしたら、耐えられはしない。

 僕は幸い、今まで自分が目指しているものの理想的な状態というのは、作家さんでしか見たことがないのでそうでもないですが、身近な人に、絶対にかなわないと思うくらいの才能を見せつけられたら、どうなっちゃうだろう。
 実は、一度そうなりかけたことはあるんです。その友人は、別に作家を目指しているわけじゃなくて、ただある作家の文章に影響受けただけだったんですけど、その友人の書いた文章は、たぶん自分じゃ絶対に書けないだろうって思いました。
 それまで、同じように作家志望の人がいても、自分とたいていやりたいことが違ったので、たとえどんなにうまくても、素直に称賛できていたんですよね。でも、ここでいう彼は、たぶん自分と近しいものが好きな人だったので、余計に怖かった。
 彼がもし本気で作家を目指したり、真剣に創作に打ち込んでたりしたら、ちょっとヤバかったかもしれない。

 そういった意味もあって、河内先輩の告白や、摩耶花が最後に『夕べには骸に』と『ボディートーク』のことを思って、自分の作品のことを思った時の我慢できなくなった感情は、痛いほどわかっちゃう。でもがんばれ摩耶花。そうやって人は成長していくんだ。


 あと、序盤の方の『どんな作品も主観の名のもとに等価』って議論は、個人的に結構興味深かった。
 河内先輩の言ってたことは、ちょっと極論すぎて半ば暴論ですけど、でもそれに納得しちゃう自分がいたんですよね。最初は、「酷いなこの人」と思ってたんですけど、よく考えれば考えるほど、それって僕が一番言いたかったことに近かったりします。っていうか、「『面白くない』と積極的に言うことが害悪なら、『面白い』と積極的に言うことも、害悪になりえる」っていう理論を、否定しきれなかったんですよね。
 僕は『面白くない』って意見を言うことを毛嫌いしています。少なくとも、言うならば納得のいく理由がほしいし、またそんなに面白くないんなら何で読むのをやめないんだ、と思います。これは、単純にそういった負の意見が嫌いってのが大半ですが、その中には『面白くない』ということによって、本当にその小説がおもしろくないかのような印象を与えてしまうことが嫌なわけです。
 要するに、負の意見を言うことで負の印象を与えるのは害悪だ、と僕は言いたいのですが、もしこれが、『誰かの印象に影響を与えることが害悪』って意味ならば、逆に正の意見を言うことで誰かに正の意識を与えることも、害悪と呼べるのではないか。
 これを否定できる材料がないのが、僕の敗因。
 まあ、河内先輩自身は本気で言っていたわけではなさそうですが、でも、たぶん心の奥で少しくらいは思ってたんだろうなぁ。



 さて、創作方面ばっか話してしまいましたが。


 他の見せ場も、面白言っちゃ面白かったんですよ。っていうか、今回は古典部メンバー四人全員に視点が当たったから、余計にテンションが上がるんですよ。
 第一作、第二作は、おもに奉太郎視点で話が進みましたから、自然と奉太郎の心情重視になっていたんですよね。特に第二作目は、省エネ主義を掲げながら、それでも何かになりたいと思う奉太郎の気持ちが切なくて青々しくて良かった。それが、今回は他のメンバーでも見られるわけです。

 摩耶花に関しては上で言いましたが、里志の「データベースは結論を出せないんだ」にはギリ、と歯を噛むような気分になりました。
 里志にしてみれば、当たり前のことだとわかっているんだけど、でも『期待』したかったんだろうな、と思う。いや、むしろ言うならば『期待したくなかった』のか。最終的に奉太郎に期待するしかなくて、自分はあきらめることしかできない、ってのはやっぱりちょっと残酷です。ひょうひょうとしているキャラは、最後までひょうひょうとしていましたが、でもちょっとだけ漏れた『弱さ』は、やっぱり耐えられなかった悔しさから出るものだと思う。それをさらすのが摩耶花の前だっていうのも、なんだかんだで心開いているよなぁ、と思ったり思わなかったり。

 千反田えるに関してだけは、ちょっとよくわからなかったんだけど、要するに彼女はどこまでいっても誰かに『期待する』ことしかできないし、またどんなに自分が頑張ろうとしても、結果的に誰かに『期待する』ことになる、ってことかな?
 実際入須先輩が言ってたけど、彼女の『お願い』は無条件の期待に直結してますしね。頼られることで気合の入る男もいるかもしれないけれど、そういう『媚』が嫌いな人間もたくさんいるし。



 そんなわけで、今回は奉太郎よりも他のメンバーの方に焦点を当てた話だったと思います。

 また、そういった主題に関することだけじゃなくて、小ネタも十分面白かったと思います。「氷菓」を200部刷っちゃってから始まる物語。もう、いろんなところで笑わせてもらいました。個人的には、「『氷菓』を売るのに忙しくてちょっとわからないが」を二回言ったところがツボでした。


 思春期にはだれもが悩む、でも結論までは出せない、そんな切ない物語だったと思います。



 PS:
 書き忘れましたが、摩耶花のコスプレについて。鳥を見ると縮む刑事さんって、『七色いんこ』の千里万里子ですよね! うっはー、テンションあがるわ!
 他のは全然わかりませんでしたが、これだけは一発でわかった! ってか、縮んだ方かよ摩耶花! よっぽど童顔なんだな……。
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CATEGRY : 米澤穂信

COMMENT

私もそれ読みました!大ファンです!!
氷菓や愚者のエンドロールより私も面白いと
感じました★夕べには骸に読んでみたいな♫
2012/05/19(土) 21:21:14 | URL | 小桃 #- [Edit
どうも! 読んだのは結構前なので、アニメにもなったことだしそろそろ読み返すべき時か……?
クドリャフカは、お祭り的な空気がいいなぁと思います。そして、青春の挫折というか失敗というのがひしひしと身に染みる。米澤さんはほんと容赦ないぜ……。
2012/05/20(日) 21:02:33 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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