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『猫物語(白)』 著/西尾維新

2010.11.01 *Mon
猫物語 (白) (講談社BOX)猫物語 (白) (講談社BOX)
(2010/10/27)
西尾 維新

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 「ただいま」







 猫物語(白)の感想をお送りします。
 やられました。素晴らしい傑作です。西尾先生ブラボーです。(黒)の時はもう西尾維新も落ち目かな、とか思っちゃってすみません。あ、いや、さすがにそこまでは思ってなかったけど。でも、多分物語シリーズではもう期待できないだろうなとかは思っちゃってました。はい。
 と、あまり言い過ぎるとなんか作品の価値が下がっちゃう気がするので、あとは具体的な感想で述べるとしましょう。





 では、ネタバレ含むので数行空けます。








 とにかく、何から語っていいものやら。

 (黒)を読んだ感想と、(白)を合わせた感想だと、なんていうか完全に羽川翼というキャラクターに対する見方が違ってくるんですよね。たとえば僕は(黒)の方の感想で、羽川さんは自分自身を律する力に長けていたという風に書きましたが、そもそもどうしてそんな力に長けていたのか。それはまあ、家庭環境の所為だって言うのは分かりきっているんですけれど、だったらそんな中で十何年も暮らしてて、精神的におかしくならないわけがないい。ブラック羽川はそんな環境に対する自己防衛の一つですけど、でも考えてみたら、そんな程度の自己防衛で耐えられるような環境のはずがない。(黒)だけを見ると、羽川さんの異常性があったから家庭環境が崩壊した、という風にも見えるんですけど、そんな生まれた時からメーター振りきるほどの異常性を持ってる人間がいるわけもないですし。(あ、いや、確かにめだかボックスにはいるけどね)
 どうして自分自身を律する力に長けているのか。それは、自分自身を律さなきゃいけないような環境に長いことさらされていたから。たとえばその境遇がもう少しまともなものだったら、彼女はただ、『自分は正しくあるべきだ』と努力する程度で、まっすぐに育ったかもしれません。でも実際は、もう少し根が深かった。最終的に彼女が『虐待されていた』と認めるほどには、ひどい環境だった。
 羽川さんの手記で、彼女がその事実を認めた瞬間、なんかいろいろ腑に落ちました。これまでの中で、羽川夫妻の描写は皆無で、羽川さんの不幸を知るための情報は状況証拠だけ。そんなところで本人が見て見ぬふりをしていたから、何となく『そこまでひどくはないだろう』と楽観視していたのですが、まあそんなわけもないって感じです。
 羽川さんの異常性って言うのは、自分を律する力というよりは、目の前の事態に対して感情を働かせられないってことだったんでしょう。だから物事を客観視でき、その結果が気持ち悪いまでの『正しさ』を生んだ。悪意に鈍くあることがどれだけ難しいかは、少し想像すれば分かると思います。自分の置かれた状況がどういうものなのかを見て見ぬふりをすることが、多分彼女にとって一番の自己防衛だったんでしょう。

 そして、その結果が苛虎を産んだ。

 苛虎の存在の意味するところを知ったとき、この怪異の一番初めの台詞の意味がわかってちょっと寒気がしました。『白くて――白々しい』。敵意や悪意を全部苛虎に押し付けて、自分は平然としている。その白々しさをなじられても、なんのことかわからない。彼女は強かったわけでも正しかったわけでもなく、ただ感じることができなかっただけなんです。
 いつのことかは分からないですけど、そこまで彼女は、追いつめられたことがあった。

 今回の話は、簡単に言ってしまうと、羽川さんは解離性同一障害になってたと考えた方が分かりやすいんだと思います。ブラック羽川と苛虎という二つの人格。一つはストレスを、もう一つは嫉妬や悪意といった感情をそれぞれ請け負った人格。そうしてそれらを切り離すことで、主人格たる羽川さんは生きていた。けれど、感情を一つでもなくしてまともにいられるわけがありません。怒ることもなく、悲しむこともなく、悔しがることもなく、ただそれを当たり前と受け止めることが、どんなに不自然なことか。もちろんそれは人間としての理想形ですけど、それはあくまで感情を抑えたうえでやるからこそ理想的なのであって、感情がない状態でやるのは、単なるロボットと同じです。
 でも、異常性を先に提示されたから、羽川翼は気持ち悪い、という風なイメージがついてしまいましたが、実際は逆で、問題があったから異常になるしかなかったんです。まあ、そんな状態でも日常生活を遅れていることこそが『気持ち悪い』ほど異常なわけですが。普通はそこまで行き着く前に、周囲か彼女自身が壊れてしまうと思うのですが、それが壊れずにあたかも普通であるかのように機能していたからこそ、忍野は彼女を『気持ち悪い』と評したんでしょう。そして、そこまで行き着いてしまったその状況は、だれかが解決できるような問題じゃなかった。だからこそ、多分忍野は必要以上に彼女に接触しなかったのかもしれません。

 結局最終的には、そうして切り離した人格を統合するという形で解決を迎えたわけですが、実際のところ、これからそうとう大変だと思います。これまでの彼女の打たれ強さは、ある意味痛覚がない状態と同じようなものですし。後日談で語られた情緒不安定だった状態というのも、多分シャレにならんレベルだったんじゃないだろうか。けれど、そこをちゃんと前向きに抜けることができたというのは、たぶんこれまでの彼女の十七年間があったからこそだと思います。まあ、『全部含めて自分』ってことなんでしょうね。


 それにしても、何がよかったかというと、羽川さんの『ずれた価値観』を表現する過程と、それを彼女自身に気付かせるまでの流れですよ。ぶっちゃけ塾廃墟でのサバイバルの流れがあまりにも自然すぎてまったく疑問に思わなかったんですけど、現実にやったらチョイ引くくらい不自然だよな……。そして、羽川さんが苛虎を生み出した理由の流れ。両親の関係の修復と、それに対する嫉妬の描写。ある意味ちょっとしたホラーですよ。いやあ。人間の感情ってホント怖い。
 羽川さんの最後の選択は、下手な描写だとすごく嘘くさくなるんですよね。あのシーンの重みを指されるのは、些細な違和感をさらりと書ききったことと、終盤の手記の重み。こういった地力が備わっているからこそ、この物語は映えたんだと思います。いや、ほんと西尾さん、ギャグなしでも十分じゃないですか。


 
 さてさて。つらつらと思いつくままに書いたけど、なんか変なことになってないだろうな……。

 ここからは、他の要素について。

 まず、戦場ヶ原ひたぎ。偽物語・下で語られた衝撃のドロ化ですが、本当はもう少しギャグっぽい感じで変わっていると思っていたんですよね。それがなんですか。無茶苦茶可愛いじゃないですか。なんか物語シリーズだから、もうちょっとこう、キャラ萌え的な感じになっていると思ってたら、全然違う。普通に人間として可愛い。
 とくに、序盤で塾廃墟で寝ていた羽川さんに怒鳴りつけるシーンが素晴らしかった。だって、泣くんですよ。友達のために泣きながら怒るんですよ。これめちゃくちゃ可愛いじゃないですか。ああもう、大丈夫だよガハラさん。あなたはそれだけで十分撫子に匹敵する。

 次に、阿良々木君。うん……なんていうか……。かっこ良すぎるぜあんた。特に今回は裏でいろいろやってたみたいだからその相乗効果もあるっぽいけど、でもたぶんこれまでの事件でも、ヒロイン視点から見たらこんな感じだよなぁとは思う。どんなにカッコ悪くても、力不足でも、彼は絶対に味方になってくれていた。羽川さんが、彼のそういうところに惚れた、というのがすごく納得いきます。これでもう少し初期のころのキャラクター性があれば……。
 それはそうと、こいつも実は有名人だった、という前々からほのめかされていたことがようやく判明しましたね。そっか、直江津高校って考えてみたら進学校だから、余計に不良っぽく思われていたんだ……。そしてたぶん、本人は人助けとかそういうのをやっているつもりはなかったんだろうなぁ。正義の味方、っていうのはこういう人のことですよ。まあ、変態と紙一重ですが

 それはそうと、今回はいろいろ伏線が張られまくりましたね。この辺は、第二シーズン中に回収するのだろうか。うまいことやると、次のまよいキョンシ―で冒頭の部分、するがデビルとしのぶタイムでつばさタイガーの裏側をやれるんじゃないかとか思うけど。ってか、ようやく忍野たちの『先輩』が登場したわけですが、臥煙『伊豆湖』か……。そのまま神原の母親の臥煙遠江が出てくると思っていただけに、ちょっと疑問符が。ここでこういうフェイントやらかす理由がなんかあるのかな。あと、伊豆湖さんが影縫さんと実は仲が悪いとかその辺もちょこちょこと書かれててなんか面白かった。四人がそろうことってあるのかなー。なんか楽しみ。
 あ、それと、エピソード六歳児にチョイ吹いた。




 うん、こんなところかな。
 最初はまったく期待していなかったんですけれど、想像以上に面白くてびっくりでした。さすが西尾維新、筆の速さと面白さが全く関係しない男だ。
 特に、今回はちゃんと作中で答えが提示されたのが分かりやすかった理由でもあると思います。個性の消失とともに成長する。そんな一人の少女の物語を存分に楽しませていただきました。

 さて、次はどうなるか……。

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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