『猫物語(黒)』 著/西尾維新
2010.07.30 *Fri
![]() | 猫物語 (黒) (講談社BOX) (2010/07/29) 西尾 維新 商品詳細を見る |
なってくれないんだ――私のヒーローに。
なってくれないんだ。
はいというわけでまたしても期間があいてしまいましたがそんなの関係ねーとりあえず西尾維新の新刊が出たら絶対更新するから気にするな!!
というわけで、猫物語(黒)をお送りします。物語シリーズでも最初の方からずっと語られていた、ゴールデンウィークの怪異。羽川翼が猫に魅せられた物語。西尾さんが羽川さんがひたすらつらい目にあう物語、という風に公言していた話がとうとう世に出たわけです。
まあ、とりあえずはネタバレありなので少しあけます。
さてさて。猫物語ですよ。
とりあえず西尾さんはダークな話というかキャラをいじめるのに関してはかなり容赦ないので、個人的にすごく楽しみにしていたんですが、後半は確かにその期待を裏切らない出来だったと思います。
猫に魅せられて、そして猫をかぶった少女の話。
とにかく切ないのが、彼女は彼女のままの意思で、周りの人間に八つ当たりをしていた、っていうことですよね。これまでの既刊五巻では、障り猫という無意識の衝動によって行動していたと思うように書かれていましたが、なんのことはない、無意識で行ったのは最初の両親くらいで、あとは全部彼女自身が自分で考えて行動していたわけです。
どんな気持ちで。
どんな思いを抱えて。
完璧すぎる彼女が、完全であろうと自分に律していた彼女が、そういう不完全な自分が存在するいいわけに障り猫を使ったわけです。責任転嫁の対象すらも自分というところに目をつけるべきか、はたまたそういうずるがしこいところが人間臭いと思うべきか。
忍野なんかは散々「彼女は気持ち悪い」と言っていますが、実際はたから見たらそうなんでしょうけど、それでも彼女の心の中身はどうしようもないくらい『人間』なんですよね。ただ異常なまでに自分を律することができたが故に、その人間らしい思いが外に出ない。むしろ、外に出た時が意外に感じてしまう。そんな自分に拘束された十五年間というのは、確かに地獄そのものでしょう。
まあ、そういった言い分すらも、羽川さんのいいわけにすぎない、とも言えるのでしょうけど。
結局、彼女はちゃんと本音を出すべきだったんですよね。正しくなければならない、という風に追い込まれたのは彼女が被害者だったと言えるかもしれないですけど、そこから自分の意思で正しくあろうと必要以上に思い続けたのは、ある意味で周囲への加害者です。とくにその影響のほとんどを受けたのは彼女の両親で、確かに、自分の欠点を残さずさらけ出してしまうような存在が毎日そばにいるとなったら、気がくるっても仕方がないと思います。
もしこの不幸を回避することができるとすれば、もっと家族としてのつながりが強ければよかったんだろうなぁ、と当たり障りのないことを考えてみたり。それこそ、義理の父母義理の娘の関係であっても、きちんと親子関係が結べていたとしたら。ちゃんと両親が彼女のことを叱ってやれたら、こんなことにはならなかっただろうな、と。まあ、そうなるには、あまりにも羽川さんの意思は強固すぎて、両親の心は弱かったんでしょうけれど。
本音を出すべきだったと言えば、阿良々木くんに対してもそうです。本編ですでに結果が出ちゃっていることではありましたが、彼女はちゃんと好きだって気持ちをもっと早く伝えるべきだった。助けてって言葉を、もっと素直に言うべきだった。自分のことは自分で解決しなければならない、という正しさに縛られていたからこそできなかったことではあるでしょうが、それでも彼女は、欲しいものは欲しいと、ちゃんと言わなきゃいけなかったんです。
ヒーローになってくれないんだ、とつぶやきます。
冒頭でも引用したこの独白が、痛いほど彼女の本音を示していると思います。
彼女は、彼に助けてほしかった。
他の誰でもない、自分を助けてくれると期待できる彼に、救ってほしかった。
けれど助けを求める気持ちというのは、ちゃんと口に出さないと伝わらないんです。
阿良々木暦は、ヒーローではない。彼はただ、自分にできることをしようと思っているだけ。それが及ばないからこそ毎回何かしら痛い目にあっているし、そして裏目に出ることも多い。けれど、そんな精神性を最後まで頼りにしていた羽川さんの狡猾さこそが、今回の話で一番のすれ違いなんだろうなと思います。
ぶっちゃけ、彼と彼女の初恋は、本当なら実ったはずだと思うんですよ。
羽川さんが自分に素直に生きて、もっとわがままに本音を吐いて、『完全』である自分を脱ぎ捨てたなら、阿良々木くんは自然と、彼女を一人の女の子として好きになったんじゃないかと思います。
相手に惚れさせようとする羽川さんのずる賢さ。正しくあらなければいけない、というものとは別に、いい自分を見せたいと思う虚勢。そういう風にしかアプローチできなかったという不幸もありますが、その結果阿良々木くんから見た彼女は、『人としての理想像』でしかなかった、というわけです。
女の子としてなんて、見れなかった。
偶像崇拝にも似た、愛の形。
彼女のことを救うなんておこがましい、とすら阿良々木くんなら思うでしょう。
つくづく、すれ違い続ける二人だと思います。
しかし、もう結果は出ちゃっているとはいえ、阿良々木くんにとことんまで救ってもらえなかった羽川さんは、どうなるんだろうなぁ。偽物語以降で彼女がどういう思いを抱えているかは、あまり描写されていませんし。次の(白)では、その辺を補完してくれるのかどうかが楽しみです。
さて。とりあえず真面目な感想になりました。
こうなった理由も、ぶっちゃけ前半がマジでひどかったというか、正直見るに堪えなかったというか……。いや、本気で今回はページ閉じかけた。月火ちゃんとの会話は正直しつこい。うーん、面白いところもあるにはあったけど、なんかもう不謹慎としか言いようのないレベルのネタがかなりあったからなぁ。
あ、「中学女子に乙女なんていねー」って台詞だけは死ぬほど笑った。
なんかなー。確かにかけ合いがあるからこその物語シリーズだとも言えるんでしょうけれど、ストーリー一本でも十分通用するだけのものがあったと思うんですよね。とくに、羽川さんの家に不法侵入してから逃げ帰った後のシーン。あそこ、マジで鳥肌立つくらいシリアスモードだったのに、突然ギャグモードになって唖然となったと言いますか。うーん、愚痴言っても仕方ないとは分かっていますが。
物語シリーズ続行ということで、もう正直この世界はこれ以上広がらねーだろ!とか思う気持ちもありますが、話としてどういう風に持っていくのかは気になります。できることなら、これ以上世界観を崩さないように。ギャグパートでのキャラ崩壊が本当に見ててつらいんですよ西尾先生……。
そんなわけで、最後は愚痴になってしまいましたが、プラマイゼロむしろプラでした。羽川さんの気持ちが切ないぜ。そしてキャラをいじめる西尾維新はほんとうに生かしている。そんな一冊。
CATEGRY : 西尾維新
COMMENT
前半、、途中まで読みにくかったわぁ・・。
胸もみシーンは必要があったのかどうか・・。
羽川がどうにも零崎人識みたいに人間ぽく描かれていましたね。。
羽川さんは、八つ当たりを、、アララギくんに普段からもっとすればよかったのにね・・(・∀・)
本音をぶつけろーーーーー・・
胸もみシーンは必要があったのかどうか・・。
羽川がどうにも零崎人識みたいに人間ぽく描かれていましたね。。
羽川さんは、八つ当たりを、、アララギくんに普段からもっとすればよかったのにね・・(・∀・)
本音をぶつけろーーーーー・・
全面的に同意です。それが味なんだと分かってはいますが、前半のネタ会話が読みにくくて仕方なかったです……。
西尾さんはこう、キャラクターを属性的に書いていながら、途中から人間らしい葛藤とか感情を与えて描くのが多いなぁと思います。ミルキィさんが挙げた零崎人識にしてもそうですが、なんの悩みもなさそうなカッコいいキャラが、内側ではひどく思い悩んでいる様子を描いてきたり。キャラクターを一つの意思を持った人間として書いているところが、自分が西尾さんが好きな理由の一つでもあるんですが。
しかし羽川さんが本音ぶつけようと思う前に、阿良々木くんの方は勝手に失恋した気になっちゃってましたからね……。その分、偽物語以降ではある程度本音を出せているみたいなので、それはそれでよかったのかな、とは思います。
西尾さんはこう、キャラクターを属性的に書いていながら、途中から人間らしい葛藤とか感情を与えて描くのが多いなぁと思います。ミルキィさんが挙げた零崎人識にしてもそうですが、なんの悩みもなさそうなカッコいいキャラが、内側ではひどく思い悩んでいる様子を描いてきたり。キャラクターを一つの意思を持った人間として書いているところが、自分が西尾さんが好きな理由の一つでもあるんですが。
しかし羽川さんが本音ぶつけようと思う前に、阿良々木くんの方は勝手に失恋した気になっちゃってましたからね……。その分、偽物語以降ではある程度本音を出せているみたいなので、それはそれでよかったのかな、とは思います。
確かに前半はひどかったですね
目が滑るほど中身が無かったという
確かにこのシリーズは掛け合い無しでもやっていけると思います
偽以降つまらないギャグが増えているので
傾物語の出来が不安です……
目が滑るほど中身が無かったという
確かにこのシリーズは掛け合い無しでもやっていけると思います
偽以降つまらないギャグが増えているので
傾物語の出来が不安です……
2010/08/29(日) 11:42:13 | URL | shin #- [Edit]
前半は本当に……。けれど、前半のギャグが面白かったと言う人も未だに多いのを見ると、物語シリーズはこうあるべきだ、と言われている気がして残念です。
なんか完全に手なりで書くようになってきているなぁと思えてしまうので、今後どうなるかが楽しみでありながら心配です。
なんか完全に手なりで書くようになってきているなぁと思えてしまうので、今後どうなるかが楽しみでありながら心配です。
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西尾維新著 「猫物語 (黒)」を読む。
このフレーズにシビれた。
自分の気持ちを理性で理解するための、おためごかしって言うのかな。理由付けというよりは、こじつけだよ。好きだっていう結論ありきで、その結論に対して梯子をかけていくようなものだよ。
[巷の評判]
FUL...
2010/10/23(土) 11:01:38 | ご本といえばblog [Del]
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