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『P.I.P -プリズナー・イン・プノンペン-』 著/沢井鯨  感想

2010.04.07 *Wed
P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)
(2003/05)
沢井 鯨

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 「ダマス、言っただろ。日本人は必ず借りは返すんだ」




 カンボジアで行われる壮絶なる騙し合い。冤罪に嵌められた主人公は、果たして生還できるのか!

 というわけで、面白かったです。
 とくにラストの追い上げがすごかったですね。途中に中だるみもありましたけれど、そういった要素も必要なものではあったと思います。
 しかし、やっぱりどちらかと言うとノンフィクションっぽい雰囲気ではありました。もちろん体験をもとにしたフィクションである以上、完全に実話とは言えないでしょうけれど、作者の壮絶な体験がこれでもかと込められている作品でした。ほんと、日本しか知らない平和ボケした人間にとっては勉強になるわ。(これを生かすような状況には陥りたくないけれど)

 あと、最初にこれだけは譲れないんで書いておきますが、解説を読んで胸糞悪くなりました。その理由はあとで述べます。






 では、ここから下はネタバレありで。








 うん。ポンは裏切ると思ってたよ。
 随分と長いことポンを主人公に信用させる描写が続いたから、絶対裏切るだろうナァとは思っていましたが、案の定です。まあ、本音を言えばやめてほしかったですけどね。うーん、ほんとそれがダメ押しだよな。主人公が開き直るのの。
 最後にタオが裏切らなかったことだけが救いです。まあ、ご都合主義っちゃご都合主義ですが、これくらいの救いあってもいいじゃん! いろいろ突っ込みどころがあったとしても、これだけ苦しんだんだからもういいじゃん!

 まあ、ぶっちゃけいうと現実はそんな甘くないって考えた方がいいんでしょうね。ってか、この主人公は目立ってないだけで地味にチートなので、こんな状況に陥っても這い上がってこれたってだけですし。ぶっちゃけ金がないんなら力と度胸と知恵がないとどうしようもないってことでしょう。もし体が弱かったら、重要な場面で大切なオクスーンとの友好関係築けてないし……。(そもそもあのリンチの時点で死んで……)


 それはそうと、この小説で描かれているのは結局のところ、価値観の違いをどう飲み込むかってことじゃないかなぁと思います。
 まあ、僕らは日本人ですから、絶対に主人公のイザワに対して感情移入しますし、またそのイザワを嵌めるカンボジア人、ネパール人、ポリス、その他もろもろに対して怒りを覚えると思いますが、やっぱりそれは『日本人』としての価値観があるからそう思うんですよね。まあ、悪く言えば余裕があるから、騙してまで生きようとする人間を許せない。
 けど、カンボジア側からすると、誰かを騙してでも生きないと今度は自分が騙されるという状況があるわけで、それ自体は本当にお国の違いと思うしかないと思うんです。ってか、被害にあいたくなかったらこんな国に行くべきではない。向こうにしてみれば、互いにイーブンな状態と言うのは騙したり騙されたりするというのは当たり前の状況、というわけですし。もちろん、そこに権力だったり財力の違いによる格差はありますが。(その格差が不平等に思える根本なわけですが)

 要するに、『信じるということは騙されてもいい、ということだ』ってことです。そう開き直るにはいろいろ残念ではありますが、その残念と思う気持ちは、日本に住んで日本と言う国で生きてきたから抱いた価値観だということを忘れちゃいけないんでしょう。
 ただ、そのかわり、同じ理由で日本人が相手の外国人を恨むのもまた勝手なわけです。
 ここではカンボジア人として話をしますが、カンボジア人からすれば「騙された方が悪い」と言って騙すわけですが、それを日本人が「騙しやがって許さない」と思って報復するのは当たり前で、それを非難される謂れもないと僕は思います。(まあ、思うだけで解決するんなら問題ないですがね)

 この点が、解説で書かれている内容と僕の考えの違うところです。正直、解説を読んでいて読了後の爽快感が一気にイラつきに変わりました。
 解説を書いている人はこのイザワの最後の報復を「自分勝手な思想による行動」と書いているんですよね。けれど、そう言われる必要がどこにありますか? イザワは周りの人間からそのお国の価値観でいいようにもてあそばれました。その考え方自体は、国の情勢を考えたら、無条件に悪だと言えないでしょう。けれど、だったら逆に、日本人の価値観を全否定していいはずがない。だって、向こうは「騙すのが当たり前なんだから仕方がない」と言っていて、それが正しいと勝手に思いこんでいるんですから。思いこむこと自体は悪くないでしょう。だったらこっちが「騙した奴は報いを受けるべきだ」と勝手に思い込んで何が悪いんでしょう。
 だから、個人的には最後のイザワの報復は、『目には目を、歯には歯を』の理論ではなく、彼自身の価値観にしたがって行動しただけだと思います。それ自体をたたかれるいわれはないし、まして喜劇だなんていうべきではない。だって彼は「騙されたんだから騙し返していい」なんて理論で行動していたわけじゃないんだから。
 そういった意味で、この本の解説はひどいと思いました。解説者の馳星周さんは日本人の価値観を『持てる者の奢り』と表現しましたが、『自分は分かっている』と言う風に奢っているのはどっちかと。少なくとも、この話を喜劇と受け取るのは不謹慎ではないでしょうか。
 少なくともイザワは何も非になることはしていませんしね。自らも多少悪いことをして嵌められたんなら、それこそ本書は喜劇でしょうが。



 まあ、こういう考え方自体が『平和ボケしている』と言われても仕方ないでしょうけどね。ただ、日本人の無知もまた、国の価値観によって形成されたということを無視して『日本人は自分達の道理が通ると信じ込んでいる』という風に非難されるいわれはないんじゃないかと僕は思います。
 もちろん、だからと言って無知のままじゃ騙されても仕方がないですがね。結局、この価値観の違いをどう飲み込むかが大切なんだと思います。(少なくとも、郷に入っては郷に従えの理論は通すべきだと思いますが。外国なら外国の価値観に最低限したがって、日本内なら日本の理論にしたがわせる、といった風に)



 そんなわけで、いろいろ勉強になりました。
 少なくとも途上国に関する印象はかなり深まった気がします。うん、確かに想像ではひどいんだろうナァとは思っていたけれど、今までは具体性がなかったですからね。こうやって間接的にでも知ることは大切だなぁと思います。

 ではでは。

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COMMENT

バッカーノの最新刊1710はもう読みましたか?凄く面白かったですよ!
2010/04/13(火) 00:04:19 | URL | #- [Edit
うう、まだなんです。欲しいとはおもうんですが、給料日前で金がなくて……。
面白かったですか! うわ、楽しみだ!
2010/04/13(火) 20:51:10 | URL | 西織 #fBhJEaUc [Edit

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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