This Archive : 2010年04月

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『小説・秒速5センチメートル』 著/新海誠  感想

2010.04.25 *Sun
小説・秒速5センチメートル (ダ・ヴィンチブックス)小説・秒速5センチメートル (ダ・ヴィンチブックス)
(2007/11/14)
新海 誠

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 ずっと昔のあの日、あの子が言ってくれた言葉。
 貴樹くん、あなたはきっと大丈夫だよ、と。





 雨さんから前々から勧められていたアニメを見てドハマりしました。はい、小説は衝動買いです。
 しかし、衝動買いしただけのことはあったと思います。っていうか、アニメだけでは分からなかったことが本書を読んで解決したような気すらします。もう、とにかく読み終わった後のあの情感を言葉で言い表すのは難しいのですが、とにかく気持ちのいいひと時でした。

 本当にお勧めです。なるだけアニメと小説どっちも見てほしいところ。こんな素晴らしいものをずっと勧めてくれた雨さんありがとう。そして、この感想は見るなよ? まだお前は小説読んでないんだからな? 見るなよ? いや、確かにネタバレギリギリまで語っちゃったから分かるかもしれないけど、それでも見るなよ?






 ではでは、ネタバレありの感想を。




第一話「桜花抄」

 中学生の貴樹と明里の物語。
 この話に関しては、アニメを見た時の感想の方が強いんですが、最初の『秒速5センチメートル』の意味がわかるところと、最後らへんの「雪みたいだね」がすごく印象的です。本当にあの風景描写は奇麗だった……。
 この話単体でもかなり奇麗なんですが、これがちゃんと三話の話につながっているところがまた秀逸なんだよな……。詳しくは三話の方で語りますが、ほんと貴樹のラブレターには驚愕したぜ。

 しかし、こうして文章で読むと、やっぱりちょっと貴樹が詩人すぎるところもあるなぁとは思います。まあ、それがあるからこそこの話は面白いわけですし、また三話につながるわけですが。

 心情描写があることによって、貴樹の心細さというか、このままではだめだ、という漠然とした焦燥感のようなものが感じられたように思います。



第二話「コスモナウト」

 花苗可愛いよ花苗。
 いやあ、ほんとこの子の貴樹へのなつきっぷりは犯罪的でしょう。本気で尻尾生えててぶんぶん振っている姿が想像できますぜ。アニメではいつも下校一緒にしていたように見えるけど、実際は週一くらいの確率でと言われると、なんかもう健気さに涙が出るわ……。
 まあ、分からなくもないですけどね。貴樹みたいにちょっと悟っちゃった感のある異性だったら、魅力感じちゃうとは思うし。しかし、宿命的な恋か。もうその言葉だけで胸がかきむしられるような気がするよ。

 しかし、貴樹はどこまでわかってたんだろうか。深い拒絶をしたってことは、そういう危険があるってことは分かっていたんだと思うけれど、それにしては花苗に対してやさしすぎるんだよな……。天然なのか? ホント花苗の「やさしくしないで」っていう心の叫びが苦しい。
 そのシーンの心情描写を読みながら、アニメでのロケットの打ち上げシーンを思い出すと、感慨がすごかったです。こういうところ、あわせて見るともっと感動が深まる気がする。この時に、花苗が貴樹との距離をしっかりと悟ってしまうのが、やっぱり切ないし苦しいなぁ。



第三話「秒速5センチメートル」

 もはやオリジナルシナリオじゃないかと思うくらい書き下ろしと言うかエピソードが盛り込まれた三話。

 もう、こいつを読んで一日放心状態でした。
 いや、だってね、本当に勘違いしていたんですよ。アニメでの描写だけじゃ、貴樹がただずっと明里との思い出を忘れられないで、未練がましくぐだぐだとした人生を歩んでいるだけのように見えるじゃないですか。まあ、もうちょっとしっかり見たら別の解釈も出てきたかもしれないけど、一回見ただけだとそんな風にしか見えなかったんですよ。(っていうか、実際アニメだけだとそんな解釈しかできないみたい)

 けど、小説での表現を見ると、深みがさらに増しました。
 一番はあれです。貴樹が書いたラブレターの内容。それの最後を読んだ瞬間、思わず「えっ」って声に出しちゃいましたよ。
 いや、まさかあのとき、もう別れの言葉をラブレターに書いていたなんて……。
 つまり、あの時貴樹は明里に対する思いをふっ切ろうとしていたんですよね。ただ、好きでいるのをやめるわけではなく、単純に明里と恋人として、異性としての関係になることを拒んだわけです。
 それは、多分あの時の貴樹が自分の無力を感じていたからだと思います。子供である自分にできることの限界を理解していて、だから現実的に、明里と一緒にいることは不可能だと。
 その考え自体は、多分大人になるまでもずっと変わっていなかったんだと思います。ただ、キスをする前と後では世界が変わった、という表現の通り、見る角度が変わったんじゃないか、って思うんです。その時、多分二人ともお互いのことを、一つの思い出にしちゃったんじゃないかと思います。(もちろん、そのあとにも文通なんかで関係はしばらく続いたみたいですが、それが自然と途絶えたのもやっぱり思い出だからじゃないかと)

 それと、あとは「あなたはきっと大丈夫」という言葉です。
 この言葉こそが、貴樹をずっと支えていた言葉。これがあったから、貴樹は明里を忘れられなかったんでしょう。多分貴樹は、誰かに自分のことを認めてほしかったんだと思います。一人でも大丈夫。もう子供の時の無力な自分じゃない。そういったことを、誰かに認めてほしかった。多分、自分では自分を認めることができなかったんだと思います。
 この時点で、おそらく明里のことは貴樹の中ですでに思い出になっていると思うんですよ。ただ、思い出と言うには余りにも貴樹の中に根深く張り付いているから未練がましく見えるだけで。それこそ、明里が貴樹との思い出のことを自分の血肉と同じと思っているように、貴樹にとってもその地点まで明里との思い出は昇華されていると思います。
 ただ、貴樹がほしかったのは、明里のように自分を認めてくれる存在。そして、何より明里ともう一度出会った時に誇れるような自分を持ちたかった。だからそれを手に入れるためにがむしゃらに走っている間、彼は「まだ途中」と思っていたんでしょう。理想とする自分の姿にまだたどり着いていない。そして、なによりそうして自分の理想を追い求めているということを、彼が自覚していないのがたちが悪い。
 そんな彼が、挫折を経験して、そこから立ち直るまでを描いたのが三話だと思います。
 最後、明里と貴樹が踏切ですれ違った時。『いつかずっと先にどこかで偶然明里とすれ違った時』
 彼は、その自分の衝動のような感情の原点を思い出して、また歩き出すことを決意できたんだと思います。


 と、本筋はこんなところで。
 この三話では花苗がちゃんと貴樹に告白していたことが分かってよかったなぁ。これも、ふっ切るための告白というか、自分にけじめをつけるための告白ではありますが、もうこういうの萌え死ぬからやめてくれww。ああ花苗可愛いよ花苗。
 あと、何気に三人の女性とお付き合いしている貴樹君。うん、このリア充め。
 けどまあ、こうして貴樹がちゃんと女性と付き合っているのも、明里との関係が思い出としてなっているところでもあるよな。思い出と言うか、むしろ呪いかもしれないけど。まだ途中、まだ先へ、という焦燥感にずっとつままれてて、それに結局女の方がついていけなかった感じだけど。まあ、貴樹が悪いんだけどね。



 しかし、本当にラブレターは衝撃だったな……。っていうか、これはホント大人になる物語でもあるように思います。このラブレターの時点での貴樹と明里の距離感とか考えると、大人になった後で地味に逆転していたりして面白かったり。
 でも、やっぱり冷静に考えると、これって自分が男だから感情移入するのかもなぁと思うところがあります。こういった恋愛話って、女性の方が盛り上がって話しますけど、女性って終わった後は結構ドライですからね……。もうずっと過去のことを引きずる感覚ってのは、男だからこそ分かるのかもなぁと思いました。


 そんなわけで、もう小説を読んだからにはDVDも自分で買うべきだと思い立った西織は、多分DVDを買うと思います。うん、近場にないのが困る。絶対探しだす。


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『とらドラ・スピンオフ3』 著/竹宮ゆゆこ  感想

2010.04.21 *Wed
とらドラ・スピンオフ〈3!〉―俺の弁当を見てくれ (電撃文庫)とらドラ・スピンオフ〈3!〉―俺の弁当を見てくれ (電撃文庫)
(2010/04/10)
竹宮 ゆゆこ

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 「……俺は、一線を、越えるぞ」




 はい。そんなわけで、一年ぶりの『とらドラ!』新刊をお送りします。
 ってか最終巻だよ。事後処理的な短編集。いろいろな企画で描かれた『とらドラ』の短編を一冊にまとめた今作、書き下ろしの最期以外は全部一度掲載されたものなんですが、通りでわけのわからん話が多い……。まあ、面白かったですけど。

 そんなわけで、これでもうとらドラも終わりかぁ。っていう感情より、「あれ? 終わってなかったっけ?」という感情の方が強いことにびっくり。うん、早く竹宮さんは新作出してくれ。





 ではでは、ネタバレありで。





○俺の弁当を見てくれ

 多分一番面白かったし、一番笑ったわww
 いや、ほんっとひさしぶりに小説で面白いと思って笑ったww。ってかオチww。炊飯器とかww

 もはや途中から目的と手段を倒錯してしまっている竜児と、オチでの炊飯器に軽く対処している独身が素晴らしかったです。ああ、とらドラのギャグパートってこんな感じだったよなぁ。


○とらとら!

 ……竜児。


○とらドラ! な日曜日

 大家さんの存在感がパない。


○ドラゴン食堂へようこそ

 これはこれで面白そうとか思ってしまった。
 うーん、というか大人になった場合で竜児と実乃梨の恋愛見てみたいなぁ。っていうか大人バージョンだと大河の行動はちょっと、いやかなり引くし……。しかし、自分は本当にみのりん大好きだなぁ。

 それはそうと、あとがき解説の男女入れ替わりネタの方が笑える件について。やばい竜子最高。


○とらドラ! な雨宿り

 これは確かヤスさんのイラスト集で載ってたやつですよね。立ち読みした記憶が。
 竜児と大河の精神的な距離の近さから考えたら、これはエンディング後のほうがいいなぁと個人的に思うんですがどうでしょう。けど、正直個人的には原作のエンディングよりアニメのエンディングの方が、とか思ってしまうので、悩みどころ。こうなりゃ間とって高校卒業した後でとか勝手に妄想する今日この頃。


○不幸のバッドエンド大全

 とりあえず幸太のうざさがパない。こいつこんなにうざい奴だったっけ……。

 それはそうと、みのりんと北村のエンドが……。えっと、北村さん? あなた失敗した場合の未来決定ですか。ってか似合いすぎててやばい。みのりん可哀そうだよ。ああ、鬱になる……。

 とらチワファミリーはある意味グッドエンドだと思う。これで竜児がギャルゲ主人公レベルのスペックがあったらハーレムだぜい。


○ドラゴン泰子

 一読した後だと本気で意味がわからなくて話が途中で飛んでいるんじゃないかと疑いました。

 なるほどね。竜の字の理由……ってわかるかい!!


○THE・部長

 おっくれてるぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!


 それはそうと、ちょろぎってなんですか……?


○にせとら!

 ……おとなしい大河。

 いや、ねーよ、と思ってしまう自分が少しだけ悲しい……(ここは可愛いと思うところだろ……)

 しかし田村君の時も思ったけれど、僕は伊欧があまり好きじゃない。


○ラーメン食いたい透明人間

 あー、原作の方でもほのめかされていましたけど、やっぱり来ましたか、能登と木原のお話し。

 やっぱりこの作家は感情の動き書くのうまいよなぁと思いました。そして、最後の〆どころがうまい。とらドラの本編が書きすぎててちょっとなぁと思っただけに、こういう形の終わり方がすごく気持ちいいです。ま、このあと能登の思いが報われるか否かは神ならぬ作者のみ知る。

 それはそうと、仮タイトルはそれはそれで面白そうな件。





 うん。そんなわけで、最後かぁ。
 どうせならもう一つくらい短編集っぽいの出してほしいものだけど、やっぱ無理かなぁ。ってか、この一年間竹宮さんは何をしていたんだ……。新作鋭意執筆中だったらいいのですが。

 ではでは、今日はこの辺で。

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『狭き門』 著/アンドレ・ジッド 訳/山内義雄

2010.04.16 *Fri
狭き門 (新潮文庫)狭き門 (新潮文庫)
(1954/03)
ジッド

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 わたしはこのまま、ふたたび自分の独りであることを思い出さないうちに、すぐさま世を去りたいと思っている。




 はい、というわけで、今回は雨さんから借りた『狭き門』をお送りします。
 題名自体は、文学少女関連で知っていたんですけどね。しかし、実際読んでみると、ちょっと印象が違ってびっくり。それが日本人になじみの薄い宗教関連だから、と言ってしまえばそれまでだけれど、でも骨組み自体は至極単純なんで、理解できないこともないです。そんなわけで、機会があればぜひ一読を。
 ま、文学言われるだけあって読んで損はないと思うよ?






 それじゃあ、ここから下はネタバレありの感想をー。








 読んで思ったこと。

 ジェロームにアリサを押し倒すくらいの気概がありゃ問題なかったんじゃね?
 いや、ネタでも何でもなく、マジで。

 結局この話って、いろいろ言っていますけれど、アリサが勝手に自己完結して終わってしまっているんですよね。それを自己犠牲の愛の形として奇麗と思うか、はたまた独りよがりの愛の形だと思うかは、人それぞれじゃないかと思います。うん、まあ普通に自己犠牲の愛だってことで定着しているし、それが正解だとは思うんですが。(まあ、あと一つそうして犠牲になることで自らをジェロームと神の両方にとっての絶対にする、ってのも考えないでもなかったんですが、彼女の日記の最後の文を考えたらそれは失敗してますし)

 さて、ここで一番問題にあげたいところが、そのアリサの選択に対して、ジェロームの気持ちがまったく考慮されていない点です。
 ここでアリサを責めるのは少しお門違いかもしれません。だって彼女はそういう風にしか生きられなかったんです。信仰に身をささげることが一番の幸福であると彼女は信じ切っており、そして他の人もそうすることが当然と、そう思っている。その価値観そのものを安易に責めることは、それに対するだけの強い覚悟のない人間には、してはいけないことだと思います。
 唯一その考え方に批判していいのは、その他の信仰や矜持を同等程度に持った人間か、その強引な価値観を押し付けられている張本人であるジェロームだけです。
 っていうか、アリサを救うことができる人間はジェロームを除いていなかったはずです。だって、アリサがジェロームを愛していたことは本当で、ジェロームのためになりたいと願っていたことは確実なんですから。(つかそもそもそれが行き過ぎてあんなことになったわけだし)
 だから、ジェロームはアリサともっと話をするべきだった。わかり合いたい、ふれあいたい、近づきたい、そう思うんなら、もっと二人の間にある距離を取り払うべきだった。もちろん、それができないのが恋愛だというのは分かっています。けれど、ジェロームはあまりにもアリサを大切にしすぎた。口ではアリサがいなければ駄目だと言いながら、強硬な手段にでなかったのは、あくまでアリサの方からも自分を求めてほしいと願ったから。同じように愛する思いがあるんだから、最後は絶対に自分の元に来てくれるとでも思ったんでしょうが、アリサの方はもはや妄執とすらも思えるくらいに一つの価値観にとらわれていた。その考えをジェロームはもっと早く分かってやらなければいけなかったんです。

 ここで、ジェロームがアリサと同じ価値観を抱くことができれば、ある意味で一番のハッピーエンドなんでしょうが、それは最後のジェロームの様子を見ると少し難しいように思います。頭では理解していても、それがどれほどの価値をもつものなのか、ジェローム自身そこまで感じ取れていないんじゃないかなぁと感じました。
 だからこそ、やるとしたらアリサの考えを砕いてやるくらいしかなかったんじゃないかと。ま、それが可能かどうかはわかりませんけどね。けど、ジェロームは少なくとももっとなりふり構わず求めるべきだったんですよ。既成事実つくりゃこっちのもんさ!(いや、まあ時代的とお国的に、それやったら非常にまずいかもしれないけど)

 でもまあ、冗談でなく、もっと二人はいちゃいちゃすべきでした。少なくともアリサが禁欲的であるのは仕方ないにしても、ジェロームまでその禁欲に付き合ったからこうなったんじゃね?と。
 もうこの禁欲さは、ある種放置プレイですよ。ってか、狭き門の感想あさってたときに、『ストイックを通り越してもはやドMな愛』というコメントを見つけて吹きました。うん、確かにそうだと思うよ。




 さて。ジェロームについて語ったところで、アリサについて。

 こっちは正直、語れば語るほど他の人の感想とかぶると思うからあんま語りたくないんですけど。

 とりあえず、この物語で一番重要な点が、自身の信じるものに対してひたすら清純であろうとし、実際それを貫き通したアリサが救われなかったって点です。
 しかも、それをアリサ自身が自覚している節がある。彼女は、信仰に対して素直であることこそ幸福であると思っていましたが、そうしていながら結局自分は独りであることを自覚して退場するのです。そこには自分が犠牲になることによってジェロームがより高みに昇れるのだから、それ自体に思うことはないと言う気持ちもあるのでしょうけど、結局のところ『独り』であるということを自覚しているわけです。その点を考えて、今回の引用文はあれにしました。
 アリサが第三者の目から見て救われなかったのは当然として、当の本人すらも、自分を救えなかった。自分が犠牲になる、という考え方がそもそも救いを求めていない証左ではありますけど、求めていないからといって、ここまで信仰に尽くした人間が報われることなく最期を迎えるというのは、やはり宗教的な考えに対しての批判なんでしょう。(実際、ジッドはアリサの考え方に対する批判としてこの作品を書いたみたいだし)

 ただまあ、個人的には、アリサは可愛そうとは思わないんだよな。なんでって、結局のところアリサは自分で決めてそれを選んだわけだし。むしろ可愛そうなのはジェロームだよ。ふるわけでもないのにそんなわけのわからん理論で一緒になること拒まれるなんて。まだ嫌いって言われた方がましだわ。(まあ、それじゃ意味ないんだが)
 世の中には自分の思うがままに生きても、どうにもならないことがあるってことですね。これでアリサのジェロームへの愛がさほどじゃなかったら、もしかしたらすげーうまくいったのかも知らないと思うと、確かにこの話は激しいほどの純愛だよ。結局二人とも愛し愛されしてたわけだしね。(無茶苦茶すれ違ってたけど)




 そんなわけで、文学作品に対して無責任に適当なことを言いまくって今回はおしまい。
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『P.I.P -プリズナー・イン・プノンペン-』 著/沢井鯨  感想

2010.04.07 *Wed
P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)P.I.P.―プリズナー・イン・プノンペン (小学館文庫)
(2003/05)
沢井 鯨

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 「ダマス、言っただろ。日本人は必ず借りは返すんだ」




 カンボジアで行われる壮絶なる騙し合い。冤罪に嵌められた主人公は、果たして生還できるのか!

 というわけで、面白かったです。
 とくにラストの追い上げがすごかったですね。途中に中だるみもありましたけれど、そういった要素も必要なものではあったと思います。
 しかし、やっぱりどちらかと言うとノンフィクションっぽい雰囲気ではありました。もちろん体験をもとにしたフィクションである以上、完全に実話とは言えないでしょうけれど、作者の壮絶な体験がこれでもかと込められている作品でした。ほんと、日本しか知らない平和ボケした人間にとっては勉強になるわ。(これを生かすような状況には陥りたくないけれど)

 あと、最初にこれだけは譲れないんで書いておきますが、解説を読んで胸糞悪くなりました。その理由はあとで述べます。






 では、ここから下はネタバレありで。








 うん。ポンは裏切ると思ってたよ。
 随分と長いことポンを主人公に信用させる描写が続いたから、絶対裏切るだろうナァとは思っていましたが、案の定です。まあ、本音を言えばやめてほしかったですけどね。うーん、ほんとそれがダメ押しだよな。主人公が開き直るのの。
 最後にタオが裏切らなかったことだけが救いです。まあ、ご都合主義っちゃご都合主義ですが、これくらいの救いあってもいいじゃん! いろいろ突っ込みどころがあったとしても、これだけ苦しんだんだからもういいじゃん!

 まあ、ぶっちゃけいうと現実はそんな甘くないって考えた方がいいんでしょうね。ってか、この主人公は目立ってないだけで地味にチートなので、こんな状況に陥っても這い上がってこれたってだけですし。ぶっちゃけ金がないんなら力と度胸と知恵がないとどうしようもないってことでしょう。もし体が弱かったら、重要な場面で大切なオクスーンとの友好関係築けてないし……。(そもそもあのリンチの時点で死んで……)


 それはそうと、この小説で描かれているのは結局のところ、価値観の違いをどう飲み込むかってことじゃないかなぁと思います。
 まあ、僕らは日本人ですから、絶対に主人公のイザワに対して感情移入しますし、またそのイザワを嵌めるカンボジア人、ネパール人、ポリス、その他もろもろに対して怒りを覚えると思いますが、やっぱりそれは『日本人』としての価値観があるからそう思うんですよね。まあ、悪く言えば余裕があるから、騙してまで生きようとする人間を許せない。
 けど、カンボジア側からすると、誰かを騙してでも生きないと今度は自分が騙されるという状況があるわけで、それ自体は本当にお国の違いと思うしかないと思うんです。ってか、被害にあいたくなかったらこんな国に行くべきではない。向こうにしてみれば、互いにイーブンな状態と言うのは騙したり騙されたりするというのは当たり前の状況、というわけですし。もちろん、そこに権力だったり財力の違いによる格差はありますが。(その格差が不平等に思える根本なわけですが)

 要するに、『信じるということは騙されてもいい、ということだ』ってことです。そう開き直るにはいろいろ残念ではありますが、その残念と思う気持ちは、日本に住んで日本と言う国で生きてきたから抱いた価値観だということを忘れちゃいけないんでしょう。
 ただ、そのかわり、同じ理由で日本人が相手の外国人を恨むのもまた勝手なわけです。
 ここではカンボジア人として話をしますが、カンボジア人からすれば「騙された方が悪い」と言って騙すわけですが、それを日本人が「騙しやがって許さない」と思って報復するのは当たり前で、それを非難される謂れもないと僕は思います。(まあ、思うだけで解決するんなら問題ないですがね)

 この点が、解説で書かれている内容と僕の考えの違うところです。正直、解説を読んでいて読了後の爽快感が一気にイラつきに変わりました。
 解説を書いている人はこのイザワの最後の報復を「自分勝手な思想による行動」と書いているんですよね。けれど、そう言われる必要がどこにありますか? イザワは周りの人間からそのお国の価値観でいいようにもてあそばれました。その考え方自体は、国の情勢を考えたら、無条件に悪だと言えないでしょう。けれど、だったら逆に、日本人の価値観を全否定していいはずがない。だって、向こうは「騙すのが当たり前なんだから仕方がない」と言っていて、それが正しいと勝手に思いこんでいるんですから。思いこむこと自体は悪くないでしょう。だったらこっちが「騙した奴は報いを受けるべきだ」と勝手に思い込んで何が悪いんでしょう。
 だから、個人的には最後のイザワの報復は、『目には目を、歯には歯を』の理論ではなく、彼自身の価値観にしたがって行動しただけだと思います。それ自体をたたかれるいわれはないし、まして喜劇だなんていうべきではない。だって彼は「騙されたんだから騙し返していい」なんて理論で行動していたわけじゃないんだから。
 そういった意味で、この本の解説はひどいと思いました。解説者の馳星周さんは日本人の価値観を『持てる者の奢り』と表現しましたが、『自分は分かっている』と言う風に奢っているのはどっちかと。少なくとも、この話を喜劇と受け取るのは不謹慎ではないでしょうか。
 少なくともイザワは何も非になることはしていませんしね。自らも多少悪いことをして嵌められたんなら、それこそ本書は喜劇でしょうが。



 まあ、こういう考え方自体が『平和ボケしている』と言われても仕方ないでしょうけどね。ただ、日本人の無知もまた、国の価値観によって形成されたということを無視して『日本人は自分達の道理が通ると信じ込んでいる』という風に非難されるいわれはないんじゃないかと僕は思います。
 もちろん、だからと言って無知のままじゃ騙されても仕方がないですがね。結局、この価値観の違いをどう飲み込むかが大切なんだと思います。(少なくとも、郷に入っては郷に従えの理論は通すべきだと思いますが。外国なら外国の価値観に最低限したがって、日本内なら日本の理論にしたがわせる、といった風に)



 そんなわけで、いろいろ勉強になりました。
 少なくとも途上国に関する印象はかなり深まった気がします。うん、確かに想像ではひどいんだろうナァとは思っていたけれど、今までは具体性がなかったですからね。こうやって間接的にでも知ることは大切だなぁと思います。

 ではでは。

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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