This Archive : 2009年10月

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『症例A』 著/多島斗志之  感想

2009.10.28 *Wed
症例A (角川文庫)症例A (角川文庫)
(2003/01)
多島 斗志之

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 「相手の目の感じよ。目でわかるでしょう、相手が何かする気でいるのがさ。そのときにね、わたしもペンギンを呼ぶのよ。でないと怖いもの」




 2000年度の『このミステリーがすごい』のベスト9位にランクインした異色作。創作の世界では色ものとみなされがちな精神医療の現場をリアルに描いたことと、微妙にリンクしていくミステリー要素から絶賛を受けた作品。

 らしいです。

 ……いや、面白かったんですけどね。時間忘れるくらい読みふけったのも事実ですし、確かにいろいろ勉強になったし、主人公の榊が次第に考え方を改めていくところはうまいなぁとか思いましたけど。
 ただ、サブストーリーだけ完結させてメインストーリーは尻切れトンボなのがなぁ。




 その辺も含めて、ネタバレ感想行きます。







 まず、この小説で、博物館側の話がはたして必要だったかどうかが問題だと思います。
 はっきりいって、この本がミステリーとして扱われているのは、博物館側のエピソードがあるからなんですよね。メインテーマは精神医療の実情と解離性同一障害の治療にあてられているはずなのに、サブのはずの博物館側の話だけが完結しちゃって、メインの精神医療の方は問題が起きて榊が自分の価値観を変えたところで終っちゃっている。
 もちろん、あの終わり方もありとは思います。ようするにどれだけ精神医療ってものが難しいかを語って、そのうえで榊の考え方が変わったことで一つの終止符が打たれたわけなので、あそこで終ってその後の物語を想像させる、って完結の仕方も、ありとは思います。

 でも、この本の構成の場合、別になくても成立するまったく関係のない話にページを取られて、結局メインの方がうやむやになっているようにしかとれないんですよね。

 博物館側の話が精神医療の話の方に関わるのは、五十嵐さんの話と沢村先生の死亡理由だけだと思うので、余計にそう思います。これがもっとうまく話の根幹まで食い込むのなら話は別でしたが、はっきり言って亜佐美の治療の話とはまったく関係がない。全然別の話でも成立するのに、どうして同時進行なんてしたんだろうか。

 そもそも、本書の裏に書いてある内容紹介では、博物館側の話なんて一言も記されていないですし。『正常と異常の境界とは、<治す>ということとはどういうことなのか?』というのが主題だと思いますが、確かに博物館側の話にも通じるところがあるとは思いますが、重きを置いているのは亜佐美を例とした精神医療のはず。だったらそれだけで書けばよかったのに、と思ってしまうのです。

 もし、この話が精神医療の話のみで描かれていたら、最後の結末も簡単に受け入れられると思うんですけどね。人の固定観念を崩して納得させたという意味で、あれはあれでちゃんとした終わりではありますから。

 それに、個人的な話、博物館側の話が正直つまらなかったのも……。狛犬が贋作だろうがなんだろうがどうでもいいって。こちとら多重人格がどういう病気で、どう榊が立ち向かっていくかが見たかっただけなのに。



 まあ、そんな風に愚痴も多い感想ですが、面白かったには面白かったんですよ? とくに広瀬が解離性同一障害だったってところからの盛り上がりはよかったですし。ほんと、精神医療の方にのみ焦点当ててくれたら、それはそれで傑作だったと思うけどなぁ。

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『永遠の出口』 著/森絵都  感想

2009.10.27 *Tue
永遠の出口 (集英社文庫(日本))永遠の出口 (集英社文庫(日本))
(2006/02/17)
森 絵都

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 私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった。



 随分前に買ったものなんですが、ようやく読了。
 ってか、読了して一週間以上経過。もっと早く感想書くべきだったんでしょうけど、なかなか思い立てなくて。

 とりあえず、本書は第一回本屋大賞の四位に選ばれたことのある本です。
 内容は、とある普通の少女の小学生から高校生までの九年間を描いたもの。そこで語られる物語は、どこか親近感を覚えるようなエピソードだったり、ちょっと突飛な物語だったり。
 一人の少女の成長していく過程を描いた、面白い小説です。





 さてさて。では本編を踏まえて感想を。


 一応、連作短編の形式なので、各章ごとに感想書きたいと思います。(ってか、そっちが絶対書きやすい……)




・第一章『永遠の出口』
 本書のタイトルにもなっている『永遠の出口』
 永遠という響きに弱いと言う紀子が体験した、永遠の出口を抜けた一つのエピソード。

 お誕生日会なんて、男でしかも平成生まれの僕からすればもう作り話以外の何物でもないんですが、七十年代八十年代の話を聞くとあながち嘘でもないってんだからびっくりです。まあ、その頃はまだ近所づきあいなんかも根強かったんでしょうけど。
 第一章は、そんな中で起きた一つの事件。

 子供なんて身勝手なもんだけど、それでもしっかりといろいろ考えているんだよ、ってのがよくわかる話に思います。
 冒頭で姉の『永遠に~』と言われて沈み込むさまを描いているからこそ、ラストで紀子がいかに好恵のためにできることを考えるのに熱中していたかがわかります。それまで自分の目の前のことばかり気にしていた紀子が、初めてほかの方向へ視点を移すことができたエピソードではないかと思いました。


・第二章『黒い魔法とコッペパン』
 何気にバイトの話に次いで好きな話。
 でも、できれば黒魔女との戦争の風景がもっとほしかったなぁ、とか思ってみたり。

 ここで面白いのが、小学生が小学生なりに物事を考えて必死に抵抗しようとしているところですよね。
 大人に頼らず自分たちだけでどうにかする。その結果として、最終的に団結できたというのは、自然な流れですがなかなか難しい。そこに至るまでを短い中でうまくまとめてあるなぁと思いました。

 あと、個人的に怖い先生ってのには僕も思い出があるので、余計に紀子たちに感情移入してしまったという……。


・第三章『春のあなぽこ』
 子供だけで遠くまで旅行なんて、ほんとわくわくどどきどきが合わさってよかったよなぁ。
 自分の子供のころを思うと、確かに隣町に行くのだけでも大冒険でしたからね。自分の世界が広がったような快感と、いきなり知らない場所に放り出された不安とが入り混じった感情は初々しくて懐かしいです。
 まして、それが小学生から中学生に移る間の出来事ってのが、またいい時期ですよね。大人になるステップを一つ上る途中という、宙ぶらりんなその状態だからこそ、冒険もしたくなるし、その冒険での高揚がある。

 あと、最後に友達と別れるときの別れの描写がまたいいなぁ。確かに手紙をやりあったり電話をしあったりはするけれど、やっぱり離れたら次第に疎遠になっていくもの。そういうことを子供心ながらに理解している描写が、自分の当時の気持ちを代弁してくれているように思いました。


・第四章『DEAD RED WIN』
 素晴らしい黒歴史。
 これから五章にも続く話ですが、あはは。黒歴史はやっぱり誰にでもあるんだなぁ、と思うような話。部活動に関してもそうですけど、そのあとぐれるところがなんていうか、まあ。

 葡萄酒の暴発で漏れた紀子の本音は、実際誰にでもわかることだと思います。子供ってのは、やっぱり親が正しいと自然と思ってしまうものですしね。そういう意味では切ないなぁ。


・第五章『遠い瞳』
 大人ってのは子供からなるものですけど、やっぱり本当の意味で双方が理解しあうことはできないんだなぁって感じの一遍。
 大人から見た子供ってのは、やっぱり自然と純粋なものを求めてしまうんでしょうね。まだ未熟で幼いからこその純粋さ。けれど、とうの子供の方は、拙いながらもしたたかで、やっぱりいろいろ考えているもの。
 子供からすれば、自分がどれだけ巧妙にやろうとしても、大人はしっかりと子供たちのことをわかって、「馬鹿だなぁ」などと考えているんだと思いたいんですけどね。
 事実を知ったときの何とも言えない苦々しさはやっぱあるなぁ。


・第六章『時の雨』
 どんなに仲のいい夫婦でも喧嘩しないなんてことないでしょう。
 まあ、紀子の家の例は、離婚の危機という極端な物語を示しているわけですが、実際夫婦喧嘩しない夫婦なんてなかなかいるもんじゃないと思います。子供のころに初めて見た夫婦喧嘩の衝撃もついでに思い出してみたり。

 しっかし、紀子の父親は随分能天気だな……。まあ、その能天気さが結局は功をなしたわけですが、もしああいう事件が起こらなかったら絶対離婚だよなこれ……。


・第七章『放課後の巣』
 これが一番好き。
 気分的には今の自分にとって共感しやすいから、ってのがあるんですけどね。しかし、バイトかぁ。

 今までどんなに背伸びをしても子供でしかなかった紀子が、初めて社会に出て、大人の世界に自ら触れた瞬間の話。
 最終的に<ラ・ルーシュ>が変わってしまったわけで、それが確かに店としては正しい姿だというのはあるんですけれど、やっぱりさびしい感じはありますよね。学校といった場所とはまた違った堅苦しさ。それが仕事というものなんだけど、やっぱりすぐに割り切れないよなぁ。(僕自身、あんまりそういう割り切りができていないから余計に思います)


・第八章『恋』
 黒歴史。
 いや。頼むから、古傷えぐらないで……と頼みたくなるくらいです。

 できればノーコメントにしたいんですが、とりあえず一言言うと、やっぱり恋に恋してるんだよなぁ。


・第九章『卒業』
 成長して、自分が子供でしかなかったってことを理解して、そうして大きな世界の一端を知る。
 ある意味では『子供』っていう『永遠』を抜けた瞬間を描いているんだと思います。第一章ではあれだけ小さな出来事だった永遠の出口が、高校を卒業するときは随分と大きくなっている。そして、それでもまだ、人生という長い時間の中では、とてもちっぽけなものであるという。

 大きなものとして宇宙を題材に持ってきていますが、実際高校卒業する時に右も左もわからない状態で社会に出たら、宇宙を見るようなものとむっちゃ変わらないよなぁと思います。ってか、これも自分がそうだったしなぁ。





 そんなわけで、全体通して、まるで自分の黒歴史でもえぐられているかのような気分にさせられた連作短編でした。
 これは、読む年齢によって感想別れるだろうなぁと思います。成長したらもう一度再読したい。

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『闇の底』 著/薬丸岳  感想

2009.10.21 *Wed
闇の底 (講談社文庫)闇の底 (講談社文庫)
(2009/09/15)
薬丸 岳

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 「自分の中にもサンソンがいます」




 ちょwwオチwwww

 いや、笑っちゃいけないんですけどね。すげー真剣な話なんですけどね。でも、結局そういう風にしか落ちつけなかったってのが、やっぱシュールです。

 とりあえず、内容としては、薬丸岳さんの前作『天使のナイフ』と同じで、犯罪加害者と犯罪被害者の関係を描いた物語です。
 ただ、『天使のナイフ』以上に救われないという意味では、より現実的ではあるかなぁ、と思います。結局、どれだけ偉そうなことを言っても、当の本人たちの気持ちはわからないってものです。





 とりあえずネタバレありで感想を。







 まあ、一番焦点とすべきところは、最後の長瀬の選択でしょうね。

 天使のナイフでは曖昧にすることで考えを促したテーマを、最後の長瀬の決断によって、真正面から突き付けてきた。一人の人間の出した答えを提示することで、『おまえはどう思う?』と問いかけてきたように思います。

 復讐、報復、といったものの是非については、テーマとしてありふれたものなので、今更語るのもなんなんですが、個人的には時と場合によってはありかなぁとか思ったりします。
 逆恨みのようなものはもちろん論外ですが、犯罪被害者には何のフォローもない現状では、こうして被害者が加害者を恨む気持ちってのはなくせるものじゃないですし、その解消として報復を選ぶのも仕方ないと言わざるを得ないように思うのです。もちろん、それを賛成してしまったら秩序なんて無くなりますので、賛成するとは言えないのですが。
 もしそういったものをなくしたいと思うのなら、もっと被害者へのフォローが必要でしょうね。それこそ、『天使のナイフ』で描かれた内容でもありますが、復讐なんてことを思いつく状況をなくすことが、まずは必要なんじゃないかと。

 ま、こんなことはもう今までも語りつくされている内容なので、考察するまでもないんですけど。



 それより、この本で面白かったのは、ミスリードの仕方だと個人的には思いました。
 まあ、勘のいい人なら気付いたかもしれないですけど、僕なんかはきれいにだまされまして。うまく長瀬の父親を途中で出してきたところがナイスだったなぁ。あれがなかったら、小坂でもそこまで驚かなかったと思う。
 しっかし、サンソンの行動理由が義憤からじゃないってのは、サンソン視点の章でわかってはいたけれど、まさかそういう理由とは……。正直、小坂に関しては、逃げでしかないから全面的にこいつが悪いとしか言いようがないように思う。長瀬もとんだとばっちりくらったようにしか見えないし。まあ、多分狙ってやったんだろうなぁ。



 正直、話としてはミスリードの方が面白かった所為か、主題の方がちょっと弱い感じもします。まあ、『天使のナイフ』でしっかり描かれていたから、っていうのもあるんですけどね。

 なにはともあれ、面白かったです。

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『ボトルネック』 著/米澤穂信  感想

2009.10.16 *Fri
ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫)
(2009/09/29)
米澤 穂信

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 ぼくはそれを見て、うっすらと笑った。



 さて。
 この小説、僕は読み終わったあとに、すげー腹が立ちました。
 こんな小説認めてたまるか、とすら思いました。
 けれど、心のどこかで、こいつは傑作だ、と思っている自分もいるんですよね。

 そんな小説。

 物語のSF展開だったりに期待している人は、読んでも期待外れだけですから読まない方がいいです。あと、ミステリ要素も面白くはありましたが、違和感覚えるだけで文句言う人は読まない方がいいです。ハッキリ言って、そういうところを気にする小説ではないと思います。




 以下、ネタばれありです。








 ぶっちゃけ、身も蓋もないいい方をしちゃえば、自分がいらん子だということを理解させられる物語ですね。

 正直、ライトSF風味を想像して読んでいた身としては、オチのダメージが大きすぎです。まあ、狙ってやっていると思いますし、ほとんどの人は同じようになったと思いますが。
 ほんとねー。リョウからすれば、自分がなしえなかったことを次々となしえている存在がいるのを見せつけられたら、絶望するなって方がおかしいでしょう。並行世界でのサキという存在は、ある意味でリョウの別バージョンみたいなもの。たとえば、AとBという選択肢を与えられてて、リョウが選んだ方はことごとく外れで、サキが選ぶ方は必ず正しいという、そういう実証を見せつけられたら、『自分』という存在に疑問を覚えない方がおかしいです。
 自分は必要ないんじゃないか、っていう疑問は、少なからず考えた経験があると思いますが、それを確証たるものまで見せつけられたら、はたして答えを出さずにいられるだろうか?

 主題としては、嵯峨野リョウという人間には、どんな存在理由があったか、ということなんですが。

 この話の中で、結局答えが出なかったんですよね。
 リドルストーリーといえば、先日出た『追従五断章』でも扱っていましたが、この『ボトルネック』ではその形式がとてもうまくマッチしているんですよね。この、もやもやとした感覚を残したまま終わるからこそ、読者はどうしてもすわり心地が悪く、本書のことを意識する。
 まあ、そういう終わりが嫌いな人には、本書は絶対にあわないと思いますけれど。僕は嫌いってまでじゃないけれど、正直あまりに後味が悪すぎてどうしても手放しに絶賛できない。すげーうまいんだけどね、ほんと。

 うーん、しかしこれは本当に初めての感覚です。普通ここまで嫌悪感覚えたら、二度と触れたくないって思うんだけどなぁ。



 さてさて。結局オチですが、これの解釈って、あんましっかりと言い切れないんだよな……。
 とりあえず、リョウが完全に一人になってしまった、というのだけは確かなんですよね。そこで彼は何を見たのか。ほほ笑んだことから、希望を見つけたのか、はたまたすべてに失望して途方に暮れた挙句の自嘲の笑いだったのか。
 個人的には、自嘲の笑いを浮かべてどん底まで落ち切ったところで、リョウは自分の存在を確かめられたんじゃないかなぁ、とも思うのですが。それまでずっと受動的で、内向的で、積極的に外に働き掛けなかったリョウは、これまで外からの影響だけで生活していたわけで、それを失ったことで自分の姿を発見したんじゃないかと思う。そこから這い上がれるかどうかは分からないけれど。

 あと、もう一つ。最後にサキから電話がかかってきますが、あそこで彼女は自分のことをツユというんですよね。リョウの世界では死んだはずのツユと。ここでは、サキの世界とリョウの世界は違う、ってことをわからせたかったんじゃないかなぁ、と思います。だから、サキの世界にあるようなものをないものねだりしていないで、自分の世界をしっかりとやれ、と。


 うーん、自分じゃこのくらいが限界だ。結局、ノゾミが願ったことに対してリョウがどう答えを出すかは想像できないし。

 とりあえず、多分単行本の方で米澤さんが『ボトルネックを外すだけじゃダメ』みたいな発言をしていたみたいですが、それを考えたら最後にリョウの存在に意味はあったのかどうかはわかると思う。


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『惑星のさみだれ』 著/水上悟志  紹介

2009.10.09 *Fri
惑星のさみだれ 7 (ヤングキングコミックス)惑星のさみだれ 7 (ヤングキングコミックス)
(2009/04/30)
水上 悟志

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 「ヒーロー参ッ上ォ!!」




 マンガ読んで涙をこらえたのなんていつぶりだろう……

 どうも。面白いといわれて軽い気持ちで読んでみたら、気づけば貸し本屋で全巻借りていた上に、これから購入も考えている西織です。やべぇ、これは久々に私的大ヒットだわ。


 とりあえず、内容の紹介としては、地球を壊そうと企む魔法使いと、それを阻止しようと立ちふさがる精霊と十二人の騎士の物語。
 しかし、その地球を守る側のボスである精霊との契約者・朝比奈さみだれは、別の目的で魔法使いと戦っていた。それは、魔法使いを倒し、自身の手で地球を壊すというもの。その本末転倒ながらも信念を帯びた発言に、騎士の一人に選ばれた雨宮夕日は彼女に忠誠を誓うことに。
 そうして、さみだれと夕日の戦いは始まった!

 現代を舞台にしたバトルアクションものです。


 設定としてはちょっとねじ曲がってはいますが、話の流れはありふれた王道ストーリーです。けれど、これがまた作りがうまいんですよ。主人公の性格がちょっとねじ曲がっているのがまたいい風に作用していますし、また他の騎士たちもとても個性的で、それでいて迷ったり苦しんだりするところが、人間くさくていい感じ。また、途中、騎士側に死者も出るんですけど、そのエピソードも泣かせる話です。

 何より、僕が好きなのはこれが成長と継承の物語になっているところなんですよね。先達である大人たちから、子供たちへ意志が伝えられ、またそれが後世へと伝えられる。それがしっかりと作り上げられているところが、このマンガの面白いところだと思います。
 作中で何度も『大人は』とか言われているのは、ちゃんとそれを意識して描いているからだろうなぁ。




 ああ、もう。これ感想書きたいけどここだけじゃ書きにくいぜ。とりあえずこの記事は紹介だけにしておきます。




 しっかし、まさかこう何度も泣かされる羽目になるとは……。それぞれが隠していた本心をさらけ出すところとか、すげー迫力があるんですよ。半月さんとか日下部のエピソードは、たぶん来るだろうなと思っていてもやられてしまいましたし、正直、七巻のフクロウのセリフに泣かされるとはまったく思っていませんでした。



 うん、もうこれ買う。買うったら買う。生活費やばいから、給料は言ったら買う。

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『ツ、イ、ラ、ク』 著/姫野カオルコ  感想

2009.10.08 *Thu
ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)
(2007/02)
姫野 カオルコ

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 それが恋というもの。




 予想以上に面白くてびっくりした。
 なんていうか、引き込まれていく面白さというよりは、ちょっと一歩離れた視点ですべてを俯瞰できることによる面白さでした。実際、物語自体が多数の登場人物が関係し合って進む物語ですしね。

 話の内容は、恋愛を主題に置いて現代を舞台にした大河ドラマって感じ。様々な登場人物がそれぞれを意識し合って、子供のころにありがちな自意識をうまく表わした物語だったと思います。
 うん、とりあえず、おすすめです。それほど盛り上がるわけでも、また悲しい話があるわけでもありませんが、なかなか最後の余韻はいい感じです。





 しっかし、感想書きにくいなぁ。まあ、いつもどおり面白かったところつらつらと上げていきますか。


 というわけで、ここからあとはネタばれあり。








 とりあえず、話自体は様々な登場人物の行動を追っていく、という形式で語られていますが、話の焦点は大抵森本隼子にあてられてましたね。
 どうしてそうしたのかなぁという疑問はあったんですが、どっちかというと隼子の話が本筋で、あとのはその味付けだったのだろうか。そう考えると、確かに『恋とは、『墜ちる』もの』という主題も、すとんと落ちてくるような気がします。

 実際、他の恋愛もいろいろと描かれていきましたが、隼子と河村だけは最後まで少し違った立ち位置で描かれていますからね。
 最初は、お互いそう言った気持ちはなく、ちょっとした自尊心によって流されていく二人が、次第に相手にからめとられていつの間にか墜ちてしまった。言葉で説明すれば陳腐ですが、そのさりげなさがすさまじかった。教師と生徒の恋愛というモチーフはありふれていますが、それでも全然気にならないところがすごい。
 それまで空想上でしか恋をしていなかった隼子が、いつの間にか自ら河村にのめり込んでますもんね。河村も河村で、最初は大人な態度で余裕を持っていましたが、次第に理性がなくなっていくという。そういう感覚を自然にトレースさせていくところがすごいなぁと思います。


 あと、なかなか面白いのが文体で、途中に入る新撰組のたとえ話とか、ちょっとした作者の一言的な文が、浮いているくせに妙にミスマッチしているように思います。これはこれでうまいなぁ、と思ったり。平坦な文章にちょっとした隠し味的なものでおさえられているところがいいですよね。
 また、どのエピソードも、無駄と言ってしまえばそれまでだけれど、人生の一場面を切り取っていったという感じで効果的に活用されていると思います。小学生、中学生、と子供時代を描いて、そこで突出した子供もいれば、ガキみたいな子供もいる、という多様性がしっかり描かれている。まあ、必要ないから高校編は飛ばしたんでしょうが、そこも描いてくれたらまた面白かっただろうなぁ、とちょっと思ったり。ま、それは蛇足ですか。



 そんなわけで、面白かったです。
 うーん、ほんと、こういう平坦な文章でも熱い恋愛って描けるんだなぁ、と勉強にもなりました。

 しっかし、解説で語られたように、ラストの文章はべたべたな終わりでいっそすがすがしかったんですが、あれを苦笑できるまでには僕はやっぱり人生経験を積んでいない模様。とりあえず、後年に読み返したいですね。

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『さよなら妖精』 著/米澤穂信  感想

2009.10.02 *Fri
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
米澤 穂信

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 「人間は、殺されたお父さんのことは忘れても、奪われたお金のことは忘れません」




 つべこべ言わず、いいから読みなさい。
 そういいたくなるような話でした。ああ、面白かった。こういう形の青春ミステリーもあるんだな、と目からうろこの気分です。
 一応ジャンルとしては日常系ミステリーとなっていますが、それはどっちかというと味付け程度。ってかミステリー期待して読むんじゃないよ、と忠告したい。読ませる場所はそういうところじゃないんだから。青春の一ページと、それの終わり。そういったものが巨大なものを知ってしまうやるせなさとともに描かれている小説でした。
 これはほんと、古本なんかじゃなくて定価で買うべきだったなぁ、とちょっと後悔。うん、そのかわり、これからは米澤さんの本は全部新刊で手に入れてやる。

 とりあえず、おすすめ。いいから読めや。





 以下から、ネタばれありの感想。







 いろいろ考えさせられるような内容ではあるんだけれど、そんなことよりラストのやるせなさの方が強くてしんみりしちゃう方が多いんですよね。こういう結末にしかたどり着けなかったことに対する主人公の悔しさやら何やらがしんとしみわたってくるようで。


 結局のところ、この話の主題は主人公の守屋の青春の終わりを描いたんだなぁ、と読み終わった瞬間に思いました。
 自分には何かできるかもしれないと思いながらも、日常の中で何ができるかわからずにもがいている。そんな中で見つけた、可能性。マーヤという少女と触れ合うことで、自分を変えるのは彼女に関係するものではないのか、と思いながら追いすがっていく。
 けれど、それが最後のマーヤの兄からの手紙によって現実に引き戻される。確かに、彼自身は本気で何かを変えられると思っていただろうし、マーヤを救うこともできると思っていたかもしれないが、当事者たちからすれば滑稽以外の何物でもない。国際問題という大きな存在を前に、そういう素養も立場もない守屋は、ただひたすらから回ることしかできない。
 そのことを、僕には笑うことが出来ない。所詮、僕も守屋のように何かができると思いながら、何もできなかった人間です。彼のように、非日常的な存在が目の前に現れたら、それこそ自分にも何かが変えられるんじゃないかと勘違いしてしまっても仕方がないと思います。そして、その考えがおごりだとわかった瞬間が、すべてを思い出にしてしまう瞬間なのかもしれない、とそう思います。


 結局、戦争だなんだって今の日本人が言っても、それにどれほどの説得力があるか、って話なんですよね。ぶっちゃけ僕は戦争なんて知識でしか知らないし、それも漠然としたものでしかない。日本人のほとんどはそうじゃないかと思います。いくら自ら情報を集めたとしても、それはしょせん実体験とは違いますし、またどっちにしろ他人事です。当事者たちにしてみれば、同情されようがなにされようが、「結局あなたたちにはわからないでしょう?」が答えになるわけでして、いくら必死に守屋がユーゴスラビアとマーヤのことを理解しようとしても、理解はできても実感は出来ないわけでして。
 たとえば本書の感想を漁っていく過程で、戦争という事柄に対して主人公の考えの及ばなさを批判している感想が結構あったのですが、ではそういう人たちはどれだけ戦争というものを知っているのだろうか、とちょっと疑問に思います。確かに守屋の考え方は極端で、結局のところマーヤという人物を通してみるユーゴスラビアの戦争でしかないので、あまりにも稚拙な面はありますが、しかし誰だって似たようなものだと思います。それこそ、戦争なんて戦争を体験したことのある人にしかわからない。っていうか、何らかの事象は、同一の体験したことがある人にしか、本当の意味での理解はできないんですよ。特に戦争のような大きな事柄は、作中でもマーヤの語ることとニュースの語ることにちょっとした食い違いがあるのと同じで、一方の視点からは見れてももう片方の視点からはなかなか見ることが出来ない。守屋は守屋の視点でしかそれを見れないのだから、批判するのはお門違いだともおもうんですが。

 作中で文原が、『俺は、自分の手の届く範囲の外にかかわるのは嘘だと思っている』というセリフは、考えてみればこの小説の中でもとても重要なキーワードですよね。結局のところ、彼ら彼女らにとってマーヤという手の届く存在は本当でも、ユーゴスラビアという遠い国は、嘘、というよりも夢のようなもの。それを追い求めることを否定するわけではないですが、それをつかむためには自分の手の届く範囲が広くないとどうしようもない。所詮島国根性丸出しの人間にゃ到底無理、つーかわかった気になるのが一番悪いんじゃないかなーとか何とか思いました。(こうやって書いている状態でも、自分はわかった気でいるんだろうなぁと思うと、なんかやるせない)



 よし、真面目な話は終了。


 さてさて。キャラ話ですが、太刀洗さんが最後までかわいそうな役割だなぁ。最後の心情吐露がとても痛い。マーヤの最期を知ってギリギリの状態だったからこそ飛び出た本音がかわいそう。そこをぶつけられて、守屋も余計にダメージ受けたように思います。
 白河に関しては、守屋がマーヤにバレッタをプレゼントした時に詰め寄ったところが印象的すぎです。うーん、っていうか、はたから見ても太刀洗の想いはまるわかりだったのだろうなぁ。そういう誰かのためにかぶっていた猫をはぐ姿がなかなかいい感じ。
 文原に関しては、最後まで自分の関わるべき位置を定めていたところが潔い。彼のそういう態度があるからこそ、守屋の稚拙な憧れが際立つんですよね。どうせならもう少し彼と守屋の会話がもっと欲しかったところ。
 最後にマーヤですが、ああ、もうこの娘いいな。古典部シリーズの千反田えるにキャラが似ていますが、こういうキャラクターの方が話を進めやすいというのはあるのでたぶんわざとでしょうね。彼女に関しては、いろいろ不明な点が多い(日本語のうまさ、日本に具体的に何をしに来たのかは、説明はあったけれどどうも具体的ではないんですよね)ので、あまり釈然としませんが、まあそこを求めるのは無粋ですかね。あんまり突っ込んでしまうと、彼女がユーゴスラビアのどこ出身なのかが分かってしまうでしょうし。



 正直、この話だけで終わるのはもったいないなぁと思う物語ですが、完結しきっちゃっているのでどうしようもないですね。うーん、やるせないって言うかなんていうか。こういうのを青臭いって言い捨てるのは簡単ですが、誰にだってこういう感情がある時代はあったってことを分かってほしいなぁ。
 なにはともあれ、面白かったです。うーん、ほんと米澤さんがどんどん好きになっていく。

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CATEGRY : 米澤穂信

プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
http://tukimaturi.blog89.fc2.com/

初めての方は、カテゴリ内の『未分類』を先に読んでください。



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