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『デンデラ』 著/佐藤友哉  感想

2009.07.16 *Thu
デンデラデンデラ
(2009/06)
佐藤 友哉

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 「おい、大目標を立てろよ。お前の大目標はなんだ? お前は何になりたいんだ?」



 佐藤友哉、新生!

 いやあ、面白かった。
 佐藤友哉の本で、躊躇なしに誰かに進めることができる本は初めてかもしれない。まあ、もちろんユヤタン成分も多分に含まれるので、あうあわないはあると思いますが、細かい点に目をつむれば普通にエンターテイメントしていてびっくりしました。
 普段の佐藤友哉は、怒りの感情を前に出しまくって物語自体を勢いで引きずりまわすような、ハッキリ言って万人受けはしないものを書いていると思うのですが、この作品はちゃんと一つの物語として、一定以上の水準を保ってなお、彼の主張もエッセンスとして加えられているところがすごいと思います。

 物語の舞台は、『姥捨て山』という民話をモチーフとした世界。村のおきてで、七十歳を過ぎたらお山参りと称して子が自らの親を山に捨ててこなければならない、というその伝承を、佐藤友哉なりにアレンジした物語。
 今年お山参りになった斉藤カユは、お山でその命が終わるのを静かに待っていた。が、次に目を覚ました時、そこは死の世界ではなく、老婆だけで構成された村、デンデラだった――


 お勧めです。はい。もし読んでない人で興味があったら、ぜひ手に取ってください。千七百円とお高いですが、それだけの分量は十分あります。






 それでは、ここからは内容を踏まえた感想。






 しかし、この物語は注目すべき要素が多くて、どこから語っていいのやらわからなくなります。
 老婆やデンデラが表す社会風刺的な見方や、各々の思想のぶつかり合い、閉鎖された社会の中での政治、隠された過去の解明、弱者と強者の戦い、などなど。
 一つ一つは、そこまで掘り下げられているわけではないので主軸になるとまでは言えないのですが、そういった要素が複雑に絡まり合うことで、ちょっとしたカオス状態になっているのは確か。その混沌とした物語がちゃんと成立しているところが、面白いと思います。本当に、帯のあおり文通り、「あらゆるジャンルがカオスとなって描き出す、現代の「普通小説」


 いろんな要素に振り回される様子を、斉藤カユという視点から見ていった場合のシュールさがおもしろいと思いました。彼女は、最初から最後まで事件の渦中に入っていながら、自然とどこか傍観しているところがあるように思えるんですよね。それは、彼女がまだデンデラにやってきて一番日が浅い、というのがあるのでしょうが。
 考えて悩むよりも、行動しながら模索していく、斉藤カユの姿勢は、それまで自己主張を持っていなかったということを鑑みるととても自然に感じて、彼女がどういう決断を最後に下すのかはとくに気になりました。最終的に、彼女は自分の中で踏ん切りをつけて村に下りていきますが、それが意味することを想像するとなんだか切なくも温かい感じがします。
 本当に、最後の文章はよかったな、と思います。いろいろと深読みしようとすればできるのでしょうけれど、その情感を思い浮かべるだけで十分な気がしました。



 他の要素のついて。

 羆との戦いは、マジで殺伐としていて面白かったです。老婆ばっかりでかなうのか? とか思ったりもしたのですが、この世界の老婆は足腰がしっかりしているので大丈夫でした。まあ、そんな細かいところ気にしていたら何にも面白くはないですけど。
 途中に羆からの視点を入れたのもよかったな、と思います。双方の『生きる意志』がぶつかり合うところが見ものでした。どちらも必死ですからね。気分的にはやっぱりデンデラ側を応援したくなるのですが、羆の方も生き残る理由をしっかり持たせることで、その必死さが伝わってきました。

 っていうか、この世界観でラノベみたいな戦いを雰囲気崩さずにやったところは本当に凄いと思う。鏡家サーガでもこれくらい違和感なくバトルやれればいいんですけどね。


 そして、羆の事件が収まった後に、伝染病疑惑を持ってきたのは本当に構成がうまい。
 サスペンスとしての魅せ方が良かったんですよね。佐藤友哉ってこんなに構成うまい作家だっけ?って、読み終わった後に思わず思ってしまったくらいです。
 そしてその伝染病も、実は食傷だった、っていうどんでん返しもうまい。ちゃんと伏線の張ってありましたし、無理がなくすとんと結果が落ちてきました。おいおいユヤタン、いったいどうしたんだ。あなたがこんなにきれいに物語を紡ぐなんて。


 いや、ほんと。こうしてたまに傑作を書いてくれるから、佐藤友哉は侮れない。



 本当はもうちょっといいたことがあったような気がしますけれど、あんまりやってもぐだぐだになるのでこの辺で。

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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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