This Category : 辻村深月

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『V.T.R』 著/辻村深月  感想

2010.02.20 *Sat
V.T.R. (講談社ノベルス)V.T.R. (講談社ノベルス)
(2010/02/05)
辻村 深月

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 一人ぼっちにならないで。アタシはあなたを愛している。




 チヨダ・コーキの鮮烈なるデビュー作!

 というわけで、『スロウハイツの神様』のスピンオフになります。
 思い切ったことするなぁ、辻村さん。と思いましたが、本人も結構楽しんで書いているところは見え隠れしたので、無茶振りと言うわけではなかったようです。
 ……しかし、ほんと小ネタがすごいみたいです。感想あさってて知ったんですが、これチヨダコーキがデビューしたとされる日にちがなんとドラえもんの誕生日と言うね。他にも色々あるみたいなので、探してみるのも手かもしれません。






 ではでは、ここから下はネタバレあり。









 とりあえず、スピンオフとしてみた場合はかなり楽しめる内容になっています。
 ああ、コウちゃんはこんな作品でデビューしたのかぁ、と思うと、思わずスロウハイツを読み返したくなる感じ。確かに、スロウハイツで語られていたチヨダ・コーキの要素が垣間見れる内容でもありますしね。



 ただ、作品単体としてみた場合、もうちょっと長さがほしかったなぁ、って感じ。
 すくなくとも、ティーとアールの過去の話はもう少しあった方がよかったと思うのだけれど、どうだろう。結局のところ、この話の根本にあるのは二人の愛の絆なのだけれど、そこがあまりピンと来なかったなぁというのが率直な感想。
 まあ、その辺の甘さを架空の作家のデビュー作ということでわざと作ったというのなら、辻村深月の作家としての懐の深さが垣間見れるところかもしれないけれど。他にも、設定の甘さとかはわざと作っているようにも思うけれどね。うーん、しかし、コウちゃんならもうちょっと突き詰めたんじゃないか、と思ってしまうところがあったり。でも、考えてみたらスロウハイツの神様で出てきたチヨダ・コーキはすでに大成してしまっているのだからそう思うだけで、デビュー作はそうしてみると甘いものかもしれないですね。

 あと、ティーの一人称の描写がどこか無理している感じがしていました。チャラ男? 情けないヒモなら、もうちょっと自嘲気味で、それでいて現状に酔っているような一人称だったらよかったのに。まあ、それは読み進めていくうちに違和感なくなっていったんですが。
 ……しかし、表紙のティーがイケメンすぎてむかつくなぁ(笑)



 あ、ちなみに、叙述っつーかオチは普通に読めました。
 まあ、確証はなかったんですけど、Jの銃を置き忘れたって話の時に、多分そうだろうなぁと思ったらその通りだったので、そこまで驚かなかったり。そのかわり、地味なところ(キディちゃんなんか)は、なるほどと納得しましたし。時系列なんかはうまく練られているなぁと読み返しながら思いました。(でも、冷静に考えたらJの家族殺したときの年齢とかって無理が……)
 オチにしてもなぁ。あまりトランス=ハイについて描写しすぎるとぼろが出るからかもしれないけれど、もうちょっと情報公開してくれたら深みますと思う。とくに女は殺さない理由については、なあなあなままにしないでほしかったかも。


 とりあえず、いろんな人間に会う中で、ティーとアールの二人から視点をそらさずに見ることができたら、最後のティーの独白が見事にくると思います。





 そんなわけで、内容としては面白かったので、もしよかったら、今後もチヨダブランドを書いてもらいたいものです。どうせなら、スロウハイツの神様の冒頭で問題になったレベルのものとか、レディ・マディとか。ただ、長期連載ものだとちときついものがあるか……。


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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 著/辻村深月  感想

2009.09.30 *Wed
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
(2009/09/15)
辻村 深月

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 「あの、奥……それと」




 辻村さんの本気を久々に見た気がする。

 本書は、講談社創業百周年記念の、書き下ろし100冊企画のうちの一つ。本書を、辻村さんは一年かけて書いたらしいのですが、確かにそれだけの意気込みは感じる内容でした。
 はじめはちょっと内容がつかみづらくてきつかったんですけれど、途中から一気に面白くなってページをめくる手が止まらなくなりました。序盤のわかりにくさがあるからこそ、後半が生きてくるというのはわかるんですけどね。

 しかし、これは女性にしてみたら痛いところつかれた、という要素がたくさんあると思いますが、男の目線から見ると、やっぱり全部を理解できていないだろうなぁ、と思えるところがあります。もちろん、自分なりにちゃんと読み込んでそれなりの解釈は持っていますが、それでもやっぱり根本的なところで男と女は違うので、『理解した』と言いきるのはおこがましいかな、とも思ってしまいます。
 まあ、そんなこと言っても、面白かったことは確かです。ほんと、タイトルは特にすばらしい。







 では、下からはネタばれも含めて。







 とりあえず、問題となっているのは、女性同士の付き合い、母娘関係の二つがかなり重点的に書きあらわされてました。
 あー、もう。そこは辻村さん。『太陽の坐る場所』のときのようなぎすぎすした人間関係を描いてくれます。このときにすごいと思うのが、必要以上にことを荒げないで、ただ自然な会話の中にずれのようなものを入れて、ちょっとした感情の機微を入れているところなんですよね。別に、嫌な会話をしようとしているわけではなく、会話の端々に厭味な部分が出てしまう、というのは誰にでもあることだと思います。
 相手の一言に気を使ったり、相手の行動に合わせたりするのは現実では当たり前のことですが、だからこそ共感できる部分があるようにも思えます。男のプライドと女のプライドでは、見方が違うんだろうなぁ、と思わされました。


 みずほがチエミを追う過程で話をする旧友や関係者たちは、それぞれ一人一人違う視点からチエミを見ていて、それぞれがしっかりとした個性を持っているんだなぁ、とも思えます。ただ、ひとつだけ共通するチエミと母親の仲の良さが、人から聞くにつれてどんどんエスカレートしていく過程が、物語の一つの伏線として活用されていてすごいと思う。そういう関係だったからこそ、チエミが母に自身のことを告白した時に母の怒りが違和感なく受け入れられるんですよね。
 また、その話を観測するみずほの側で、別の母娘関係を語っていることが、非常に効果的だったと思います。どっちの親も、娘のことを想っているからこそ出た行動で、そのことを気にしつつもついつい干渉してしまう、という積み重ねが、奇妙な距離感を生んでしまったというのがわかります。

 一章のラスト付近で、みずほが母の手紙を見たときに感じた思いは、だからこそとても残酷だったと思います。『お母さん、これは、ひどい』。娘の気持ちを他人に確認する、という行為は、娘を信頼していないということにつながる。みずほの母は、自分の行動を正しいと思っていながら、それでも最後の最後で娘に拒絶されるのを嫌がったのでしょう。信頼し合うことができるほど近い位置にいるはずなのに、とても距離感が遠い、そんな親子の切っても切れない糸のような不器用さが、切なかったです。

 そんな風に、ひとつの母と娘の関係を見せられた後だからこそ、チエミとその母の関係が際立つように思います。幡目から見れば異常すぎるほどの過保護。他者から見ると限りなくいびつな関係ではあるけれども、その間には確かに愛があった。
 この親子に対しては、感情移入するよりも気味が悪いと思う方が多いようにも思いますが、それでも最後の母が娘に向けた言葉は、純粋だと思います。ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。それまで大事に大事に箱の中にしまっておいた娘を、やっと認めてあげた。子離れも親離れもできていなかった二人は、半強制的にさせられたわけですが、それでも二人の間にいびつながらも強固なつながりが残っていたことが、切ない。そういう物語だったと思います。



 このタイトルがここまでの効果を発したのは、チエミの親子の話の中で、さらりと流された過去の一つだったからでしょうね。疑問だけを提示しておきながら、必要以上に機にしなかったからこそ最後に「なるほど」と思わされたように思います。
 しかし、終わりがさわやかだって言う人が多いが、冷静に考えると二人とも傷だらけなんですよね。みずほは母との関係はおそらく今以上によくはならないでしょうし、チエミに至っては取り返しのつかない状況に追い詰められて、唯一よりどころにしていた子供さえいない。そんな痛みだけの状況で終わってしまったのも、ある種の象徴のように思えるのですが、どうでしょう。
 まあ、みずほに関しては、なんとか折り合いをつけて生きていきそうですけどね。




 さてさて。本筋はこれくらいで。

 個人的に一番怖かったのが及川さん。いやあ、確固たる自信から来るプライドってのは、正直苦手なので怖かったっす。がんばれば何でもできる、というのは確かですが、がんばることをがんばるのが大変だってのを分かってもらえないのはきついものですよ。
 一番嫌なやつは、やっぱり大地。なんだこのDQN。自分の非を他人になすりつけるやつが一番最悪だ。男でプライド高い奴はこうなっちゃうから嫌なんだよなぁ。

 逆に、よかったのはやっぱり翠。うーん、最初は変なやつが今さら出てきたなぁ、とか思いましたが、ここまで純粋なのはどうなの?と思うくらい純粋。この子の物語はちょっと中途半端でもありますし、どこかで登場してくれないものだろうか。

 あと、みずほについては、考えてみたら『凍りのクジラ』の理帆子の焼き回しだよなぁ、と思ってみたり。ただ、みずほは理帆子よりもしっかりしているか。それと、啓太さんのようないい男をつかまえるあたり、要領もいいかも。



 久しぶりに辻村さんの作品でしっくりきた気がします。やっぱり辻村さんは連作だったり短編だったりより長篇だよなぁ。それと、今回は露骨な名前ネタがなかったので、違和感もあんまりなかったですし。
 ただ、このまま完全に女性関係の話ばかりによるのはちょっと残念なので、もう少し中立の話も書いてほしいなぁ。特にスロウハイツ並みの物語をもう一度読んでみたい。がんんばれ、辻村先生。

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『ふちなしのかがみ』 著/辻村深月  感想

2009.07.19 *Sun
ふちなしのかがみふちなしのかがみ
(2009/07/01)
辻村 深月

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 その向こう側は、決して覗いてはいけない――。




 へい。というわけで、六月末に出たばかりの、辻村深月の新作。
 といっても、どうも内容は全部『野生時代』で連載されていたものを単行本にまとめただけのようですが。まあ、読んでない身としては関係ないです。

 とりあえず、扱いとしては辻村深月版ホラー&サスペンス小説、ってことでいいかな。
 サスペンスだったら『こどもたちは夜と遊ぶ』でもやっていたけれど、あれはホラー要素はなかったからなぁ。あんまホラー読んだことない僕が言うのもなんですが、真面目にホラー小説やっていたと思います。
 ただ、何だろう。ちょっとおとなしすぎるかなぁ、という感じも受けました。短編集なので、好みはそれぞれ分かれるとは思いますが、これといった大きな魅力がある、って感じじゃないんですよね。『太陽の坐る場所』の時にも思ったけれど、地味な物語を描くのはうまくなったけど、いまいち強く惹きつける魅力が減った気がする。こんなこと思うのは僕だけかもしれないですが。

 まあ、とはいっても面白くないわけではないので、ちょっとしたホラーが好きな人にはお勧め。それこそ暗がりから誰か覗き込んでるんじゃないかと妄想するのが好きなプチホラー好きな人はいいんじゃないかな。(襲われるのが好きな人は物足りないと思うけれど)




 ここからは、内容踏まえてそれぞれの感想。



○踊り場の花子

 話のオチだったり流れだったりは好きなんですが、いかんせんちょっと長い。もうちょっとコンパクトに行った方が衝撃が強かったかもなぁ、と思います。
 特に、職員室でタバコを吸うのは誰?ってところですでに犯人はわかりきっているんだから、そこから引き延ばすのはどうかなぁ、とか思いながら読んでいました。
 ただ、ラストは一気に突き抜けた感があります。無限階段。先生のおびえている様子がじかに伝わってくるようでよかったです。



○ぶらんこをこぐ足

 ちょっとよくわからなかった話。そもそも、誰が誰なのかを理解するのに時間がかかって、要するにどこが決め手なのか分からず、雲に巻かれた気分です。
 まあ、単純に読解しようとする意志が弱かっただけなんですが。途中でつまんねー、ってなってしまったんですよね……。多視点から事件を見る、っていうのは好きな方ですけど、それが現在過去と入り乱れてどこに飛ぶのやら全く分からんからちょっと萎えました。ってか、だれか解説して、マジで。



○おとうさん、したいがあるよ

 解説してほしい話、その二。
 んーと、とりあえず、主人公の見ている世界で、現実と幻想がごっちゃになっちゃったってのはわかるんですけど、結局それで何がやりたかったんだろう。死体が示すものもよくわからなかったし……。
 こういう、隠喩されたものを解き明かすのってあんまり得意じゃないので素直にお手上げです。わからん、誰か解説してください、ほんと。



○ふちなしのかがみ

 一番面白かった。
 ってか、やっとオチが理解できた話。
 この話の完成度は高いなー、と思いました。オチが理解できたからそう思えるんですが、なるほどなるほど。そうくるかー、って感じでしたね。
 辻村さんの名前トリックはもう嫌ってほど使い繰り返されていますが、それが久しぶりにうまくはまった気がします。まあ、はじめはそのトリックの所為でワケワカメだったんですが、それを理解して読み返すとなんか深みがずいぶん違うように思える。
 とりあえず、この話が読めただけでも買った価値はあったかな、と信者の僕は思いました。



○八月の天変地異

 ちょいいい話。
 辻村さんらしい、といえば辻村さんらしい話で、なんかちょっと安心しました。あんまり好きなタイプの話ではないんですが、不気味な話が続いた後にこういうのが来ると何となくほっとできる。
 しかし、小学生書くのうまくなったなぁ、ほんと。『ロードムービー』のときもうまいと思ったけれど、『ぼくのメジャースプーン』の秀才小学生がウソみたいに、違和感がないです。
 話自体はあんまり斬新、というわけじゃないですけど、辻村さんの筆力が読ませてくれるなぁ、と思いました。




 とりあえず、以上。
 うーん、しかし、本当に普通以外の感想が出てこないのが苦しいかも。
 正直僕の中では、『凍りのクジラ』→『ぼくのメジャースプーン』→『スロウハイツの神様』とウナギ登りに面白さが増していった印象が強すぎるので、『ロードムービー』以降はちょっと物足りない気もするんですよね。文章とかは格段にうまくなっていると思うんですけれど。
 次の長篇では、ぜひスロウハイツ並みのものを期待したいです。

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『太陽の坐る場所』 著/辻村深月  感想

2009.07.05 *Sun
太陽の坐る場所太陽の坐る場所
(2008/12)
辻村 深月

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 「太陽はどこにあっても明るいのよ」



 やっと読めた、辻村深月さんの作品。

 読み終わって、なんだかもやもやしたものを解消するためにネット徘徊して感想を読んでいくと、見事に評価が真っ二つだったのに笑いました。ああ、なるほどな、って感じです。

 とりあえず自分なりに噛み砕いて考えた場合、この小説は一部の、それもかなり限定された層にはとても共感を得ると思いますが、他の層の人から見たら、「何言ってんの?」ってことが多くあると思います。そのある層ってのは、学生時代を終えて十年前後経って、社会に進出して慣れ始めた人たち。それより上の世代は、もうそんな青いこと覚えてないよ、って言うでしょうし、それより下の世代は、まだ大人になる実感を持てないために共感しきれない。
 僕自身も、まだ学生の身分なのでちょっと想像に頼るところが多かったのですが、そういう目で見たら非常によくできているな、と思います。人をねたむ気持ち、自分をよく見せたい気持ちってのは誰にでもあると思いますが、20代後半という限られた年代におけるその感情を描ききっているのは秀逸。

 感想を漁っている段階で、人間性が描かれていないという意見と、ここの人物の心情描写がうまいという意見の両方が出てきているのも、たぶんその所為だと思います。良くも悪くも、読む人を選ぶ。あと、単純にミステリ的な仕掛けやどんでん返しの面白さだけを求める人にはあまり勧められないです。
 あと、冷静に考えたら、この小説を連作短編と取るか長篇と取るかでも全然印象が変わってきます。いい読み方は連作短編としてとらえる方ですが。




 そんなわけで、ここからは内容を踏まえた感想。






 まあ、ぶっちゃけて言いますと、僕はあんま感情移入できませんでした。
 そりゃあね、まだ高校卒業して一年もたたない人間にその感情を持てって言う方が無理な話ですけどね。作者の辻村さんが28歳の時に書いた小説なので、やっぱり自分のことをある程度投影している部分もあるんだと思います。

 人に対するねたみやそねみ。自分はもっといいはずだ。自分はもっと成功していなきゃならないんだ。

 そういった思いも、確かに持ってはいますが、一番強く感じるのはやっぱり二十代の後半くらいになってからなのかもな、と思いました。まだ僕くらいの年齢だったら、これから先の未来、何にだってなれる可能性がありますが、二十代の後半ともなるとほとんど立場は決まってきてしまっているころでしょうし。諦めかけて、でもあきらめられない。そういったもどかしさを感じさせるところもあるように思います。


 先ほど言ったように、この小説を連作短編として読んだ方がいいと思ったのは、それぞれの登場人物の気持ちの鬱積を、きちんと書ききっているからです。
 まあ、読めばわかると思いますが、それぞれ章がある登場人物に関しては、ちゃんとオチがついている。キョウコという名の太陽を中心に動き回る登場人物たちですが、それぞれ自分たちの中でひとつ峠を越えています。
 僕としては、聡美の章と紗江子の章が、いいなぁ、と思います。紗江子の章は一番わかりやすい形でありますが、聡美の章はあとでじわじわくる。自分のしたいことで成功してやる、っていう気概は僕も少なからず持っているので共感できたのでしょうが。

 というわけで、それぞれ分けて感想を。


・出席番号二十二番
 成功したものと成功できない自分。そこに対する劣等感を描いた話。といったところだろうか。
 最後に聡美がキョウコからかけられた言葉。自分が立てなかったステージにいる彼女からかけられたあの言葉は、嬉しい、とも悔しい、ともつかない、ひどく切ない思いだと思います。ただ、それで聡美が何か一つ自分の中で区切りをつけられるんじゃないか、と思えるのです。


・出席番号一番
 女としてみてもらえないことに劣等感を覚え、女らしい同性に対して嫉妬する話。ってところだろうか。
 紗江子の気持は、想像では分かるけど、男の僕では完全に理解できるわけではありません。ただ、どんどん真崎に覚えれていく姿は、一種の狂気も感じさせる気がする。女って怖いな、と思えるひとつめ。
 最後の貴恵が本当に救いです。っていうか、このラストは本当によかった。友情オチという、ベタで非現実なものかもしれませんが、そういう救いがあってもいいと思う。


・出席番号二十七番
 女としてのプライドを守ることにすべてをかける女の話。と言っていいかな。
 まあ、一番嫌な人間の話ですね。
 とりあえず、ここまで嫌な女を、等身大に描けたところがやっぱりうまい。嫌な人間といっても、やっぱり心の中ではいろいろ悩んだりもするんだよ、ってところをちゃんと描いていたので、リアリティを感じるな、と思います。あとで読み返したら一番読み応えがあるかもしれないです。
 こいつだけは最後まで救いがないんですよね。まあ、救われるほど弱い人間じゃない、ってのが理由の一つかもしれませんが。嫌なやつでもちゃんと自分なりに努力しているところが見れるので、嫌な人もできればもう一度読み返してみてほしいかも。


・出席番号二番
 唯一男視点の話。表すとしたら、器用貧乏な男が子供から大人に完全に孵化するところ、って感じがしました。
 いろいろ暗躍するけれど、あんまいいところがない彼。高校時代からずっと運と縁のなさがもう泣けてくるな……。
 この作品での立ち位置も、どっちかというとキョウコをつなげるための最後の綱みたいな感じに見えてしまいます。というか、それ以上の解釈ができません。読み込みが足りないだけかもしれないですが。


・出席番号十七番
 過去の因縁と決着をつける話。でいいと思います。
 人によって、この部分が蛇足に感じる人もいれば、絶対に必要だと思う人もいると思います。個人的には、あった方が話のしまりがよくなるとは思いますが。一応伏線というか、各登場人物の勘違いが判明したりもしますし。
 二人のキョウコの、成功と失敗。その対比としてはあまりうまく描けているかは謎ですが、二人とも相手にわだかまりが残っているところがなんだか良かったなぁ、と思います。二人が対話することで、それが少しだけ落ち着いた。完全になくなったわけではないでしょうが、ひとつの決着がついたのはよかったと思います。




 ちなみに、今回のメインの叙述である二人のキョウコに関しては、まあ騙されはしましたけど、そこまで驚きは少なかったなぁ。やっぱいい加減慣れてきているんだと思います。辻村さん、毎回名前ネタ持ってくるし。
 あと、個人的に一番初めに話だけ出てきた女流シナリオライターが嬉しかった。ああ、環頑張ってんだなぁ。


 というわけで、こんなところです。

 僕も就職して、数年たったらもう一度読み返したいな、と思う本です。

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『ロードムービー』 著/辻村深月  感想

2009.04.12 *Sun
ロードムービーロードムービー
(2008/10/24)
辻村 深月

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 『冷たい校舎の時は止まる』から生まれた珠玉の短編集




 辻村深月、初の短編集。

 買うかどうかものすごく迷っていたところで、図書館で見つけたのですが……。うーん、これは買いかな。
 とりあえず、ハードカバーなのがちょっと惜しい気がする。『冷たい校舎の時は止まる』とのリンクがすごいので、この作品だけじゃ理解できない部分とかもやもやするところが残ってしまうので。ノベルズで出していたら、もう少しわかりやすかったかもなぁ。

 まあ、とはいっても、未読でも十分にいい内容だと思うんですけどね。問題は、『冷たい校舎』を読んだことがある人で、登場人物を忘れてしまった人。僕もその一人だったんですが、もう途中「え? これだれ?」「この人、何の意味があるの?」と考えまくりでした。
 とくに、実を言うと『冷たい校舎』は持っていないので確認しようがないし。仕方がないので、最後にはwikiを利用しましたけど。


 とりあえず、各章の感想を。



・ロードムービー

 二人の小学生が家出をする話。

 トシちゃんの真相にはやられました。あー。確かに、アカリがどうして男子をいじめるんだろうと疑問は覚えていたんですけど、こういうことか。小学生って、男子も女子もごちゃまぜに考えるところがあるから些細なことかなぁとも思ったんですが、小学5・6年生にもなると、意外といろいろ考えるものですからね。

 この話が、一番きれいに完結しているなぁと思いました。リンクも気にならないレベルだし、トシとワタルの成長物語として徐々に明かされていく過程がよかった。


 で、リンクという面で見たとき、諏訪彗恵なんてキャラクター、『冷たい校舎』にいたかなぁと思って、wikiで確認したんですよね。
 ……あー。なるほど。桐野景子の子供の話か。
 そして、ついでにタカノおじさんってのは鷹野博嗣で、お姉ちゃんは深月なんだろうなぁ。……くそ、こういう風に見ていくと、すげえジャストな配置じゃないか。



・雪の先

 塾講師の主人公が、塾生の中学生から告白される話。

 この話は、まあ千晶視点で見ればきれいに終わったように見えるんだけど、読者視点で見たら、「は? お前彼女いないの?」って感じです。
 これはリンクの弊害だな……。一応、エピローグで予測できないことはないとはいえ、電話をかけてきた女性が彼女じゃないと誰がわかる……。いや、キャラクターを見たらわからないでもないんですけどね。

 主人公の『僕』は、片瀬充で、電話をかけてきた女性はたぶん佐伯梨香かと。いや、ほとんど消去法なので間違ってる可能性はありますけど。
 あと、東大の同級生ってのはたぶん鷹野だろうなぁ。

 まあ、リンクしてることを気にしないで、千晶の気持ちになって読んだら、最後の『僕』の救いは結構いいと思います。



・雪の降る道

 病気で寝込んだヒロくんのために、みーちゃんがいろいろやる話。
 最終的にヒロくんがみーちゃんを受け入れてハッピーエンド、ってのでいいのか?


 とりあえず、この話は鷹野と深月の過去話でしょう。
 っつか、それ以上のストーリーがほとんど頭に入ってこない。ヒロちゃんってなんなんだ……。いや、本当に死んじゃった友達がいたのか、それとももっと別の意味があるのか。『冷たい校舎』の方でその辺の話ってあったっけな……。

 とりあえず、菅原の兄ちゃんがかっこいいっす。でも、この話の中で菅原って呼び方と榊って呼び方の二種類でてきてるよね? それネタバレだよね……。
 一番、リンクが意味を持つ話だったなぁ。それだけに、『冷たい校舎』のことをほとんど忘れている身としてはちと辛かった。




 あー、やっぱ読み返そうかなぁ。『冷たい校舎の時は止まる』

 文庫版が出た時に買うべきだったんですけど、お金がなかったのもあってタイミングずらしちゃったんですよね。まあ、丁度いい機会ですし、今度買って再読してみます。


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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
http://tukimaturi.blog89.fc2.com/

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