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『ジョーカー・ゲーム』 著/柳広司  感想

2009.04.20 *Mon
ジョーカー・ゲームジョーカー・ゲーム
(2008/08/29)
柳 広司

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 「死ぬなよ」





 このミスの2位を取ったり、週刊文春で三位に入ったり、本屋大賞の9位に入ったりでなんか人気見たいだったので、読みたいなぁと思っていたところに、古本屋で900円で発見。ちょっと悩みましたが、まあ六百円も安いのでと思って買いました。



 簡単に感想を言うと、面白くはあるけど、なんだか物足りない感じ。連作短編として、一つ一つの話はかなりきれいに作られているし、それぞれにちゃんとトリックとどんでん返しもある。けれど、なんだかあっさり終わってしまう感も否めないかんじです。
 まあ、この小説の主題として、『スパイとは”見えない存在”であること』というものがあるので、むしろあっけない感じこそがいいのではないかとも思います。影の暗躍者たちに、スリルあふれるような活劇を行わせるわけにもいかない。確かに、本当にスパイのような活動をするのなら、この小説で語られるような地味な、目立たない行動が本来の姿なのだろうと思う。本書ではそのことを前面に押し出してありましたし、絶対にその根底条件だけは譲ろうとしていませんでしたから。

 話のうまさならかなり良かったのですが、カタルシスを求める人にはちょっと物足りないかなぁ、と思います。



 まあ、それはそれとして。それぞれの短編の感想に行きます。


○ジョーカーゲーム
 表題作。
 D機関の異端性と、昭和十二年ごろという時代の背景を理解するのに、最も適した章だったなぁと思います。
 今でこそ当時の天皇制は行き過ぎていると思いますが、当時にしてみればそれが当たり前だったんですからね。特に軍人なら、天皇に仕えることこそが目的だったんですから、D機関の連中のような考え方は受け入れられないでしょう。
 僕たちの考え方からすれば、D機関の三好たちの考え方の方が近いのに、それでも三好たちの主張に対していらだちを覚えるような書き方は素直にすごいなぁと思います。


○幽霊(ゴースト)
 五つの短編のうち、個人的には一番面白い話でした。
 どんでん返し、というほどではありませんが、逆転の発想としてはうまいなぁと思いました。

 ここからD機関の学生にスポットが当てられていくのですが、登場人物に名前がないってのは、どうにもうまくとらえにくいな。
 あくまで『記号』ならあるけれど、名前がないわけでして。どこかの戯言遣いじゃありませんが、実際小説を読む上でこれほどやりにくいことはないですよね。まあ、この小説にとっては、それこそが必要不可欠なわけですが。


○ロビンソン
 タイトルとロビンソン・クルーソーの本の謎とか、うまい使われ方してはいたんですけど、ちょっと仕掛けに納得がいかなかったので微妙に思えてしまいました。
 D機関の内部がわかる話としては、五つのうち一番情報が多くはありましたし、また結城中佐の魔王っぷりもかなり伝わってきたんですけどね。んー、いくらなんでも異端すぎるんじゃないこいつら、と思わないでもない話でした。
 いや、面白かったんだけどさ。


○魔都
 あ、なるほど、と思いました。トリックと言えるほど巧妙なものじゃないですが、ちょっとした描写を完全に失念していました。
 最後の及川の開き直りっぷりがある意味すがすがしかったです。

 実際、こういう事件起きてたんだろうなぁ。


○X・X(ダブルクロス)
 D機関の内部の人間でその方針に違和感を覚える、という話で最後を持ってきたのはよかったと思います。
 この話の最後のシーンが、かなり良かったです。それまで魔王のような存在であった結城中佐が、最後に投げかけた言葉かと思うと、なかなか来るものがあります。
 あと、この章の主人公がちゃんとキャラが立ってたのもよかった要因かと。




 しかし、全編かけて思うことは、結城中佐以外、登場人物のキャラ立ちがほとんどないのが惜しい。
 最後の飛崎や、最初の佐久間はまだいいとしても、他のキャラクターがほとんど存在感がないので、どうにも話に感情移入しにくいのが難点。まあ、それこそがスパイなんですけどね。

 ロマンもなにもなく、ただ自意識過剰なスパイたちの活躍劇。そういう風に考えたら、なかなか面白いかもしれません。(まあ、実際つまらなくはなかったですしね)


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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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