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『神のみぞ知るセカイ 神と悪魔と天使』 著/有沢まみず  感想

2009.05.24 *Sun
神のみぞ知るセカイ―神と悪魔と天使 (ガガガ文庫 あ 4-1)神のみぞ知るセカイ―神と悪魔と天使 (ガガガ文庫 あ 4-1)
(2009/05/20)
有沢 まみず

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 「空気? なぜ、そんな空気なんか読まなければならないんだ? 場の空気? 堂々と乱せ、そんなもの! 誇り高く孤立すればいいじゃないか! たった一人で! それこそがもっとも自分にとってふさわしいののならば! 孤立する勇気を持て!」




 有沢まみずさんすげぇ、ってことで。

 いやあ、面白かった。はじめは有沢まみず版・神はどんな感じかな、程度に思って読んだのですが、予想外に原作に忠実だった。ってか、むしろ原作そのまんま。漫画であったストーリーをそのまま文章にしたんじゃない、ってくらい違和感がなかったです。
 ストーリーも結構練られてて、原作ネタもちゃんと回収する。こういうノベライズってなかなかないんですよね。オリジナルストーリーであるならなおさら、作者自身の『アク』が入るので、どうしても賛否が分かれてしまう。でも、このノベライズは完全に『神のみぞ知るセカイ』という世界観を模倣しきっていると思います。そしてその上で、『漫画』ではなく『小説』だからこそできることをやりきっている。そこが一番すごかったと思います。



 さて、内容の方ですが。


 ネタは、まだ漫画でもやっていない同時攻略。一応、電波系と普通少女、っていう要素は、マンガの方でも似たような系統はやっていたのですが、今回のはそれとは全然違うものになっていますね。
 しかし、ヒロインの背景の描き方がうますぎる。そこはさすがいろんな物語を書く作家だなぁ、と思うのですが、ホントにそれぞれの要素に合ったトラウマを描いてくれました。特に天美透の『永遠のプラス』は本当にうまかったと思う。理由がわかったときの感動は、物語に入り込んでいたこともあって半端なかったです。
 吉野麻美の方は、二重性格に見せかけて実は……というトリック。正直に騙されました。さすがに駆け魂が入っていない、ってエルシィが言った瞬間にわかりましたが、思えばそれまでにも伏線らしいものは結構ありましたよね。今どきそんなトリックも、と思いますが、こんな風にさらりと出されると攻撃力が高いですね。そういう描き方も、作家だからこそ、って感じだと思います。


 物語の後半、神・桂馬の「エンディングが見えた」発言のあとは、とにかく熱かったです。

 そこからはほとんどがヒロイン視点で語られるのが、またよかったなぁと思います。ヒロインの心の中に巣くっているトラウマの重みが理解できるし、そこに現れる希望(桂馬)っていう図式が自然と入ってくる。もしヒロインにしっかりと感情移入できていれば、桂馬の言葉がいちいち自分に突き刺さってくるような気分になってきます。

 吉野麻美の方の悩みは、正直誰でも体験したことがあるんじゃないかな、と思うので、特に感情移入しやすいと思います。それこそかなり社交的でマイペースな人でない限り、同様の悩みは抱えたことがあるはず。そんな中で、神からぶつけられるのが引用したセリフ。「誇り高く孤立すればいいじゃないか!」なんて、下手すれば負け惜しみのように聞こえるセリフも、桂馬みたいな信念を持った人間に言われたら説得力がある。そして、そうして「必ずしも集団の中にいなければならない」ということを否定されたことで、吉野麻美が本当に願っている思いが明かされる。その流れが、とてもきれいでした。

 天美透の方は、交流自体が少なかったうえに、吉野麻美があった後だからちょっときつかったかも、とは思いましたが、モノローグが完全すぎて個人的には言うことなしでした。マイナス、マイナスばかりの生活。そこにあるトラウマは、よく上流階級のお嬢様が持つような悩みと同じですが、自然と『マイナスチェック』の絶望感がしみこんでくる。自由が欲しい、のではなく、『プラスが欲しい』と言うところが、特に入り込みやすい理由だったと思います。天美透にとって、欲しいのは自由ではなくて認められること。そこをわざとずらしてきたところがうまかったと思います。そして、それを認めてくれるのが我らが神・桂馬。天美透を説得する場面は、原作に忠実でありながら、小説でしかできない『長いセリフ回し』ということをうまくかつようしてありました。最後の桂馬の、「信念があれば、すべてのマイナスはプラスに変わる」は、絶望の淵にいた天美透を一気にすくいあげた感じがありありと出ていました。



 そんなわけで、それぞれのヒロインに対してしっかりと決着をつけた神様かっけー、ってことでした。
 桂馬の魅力がしっかりと再現されていたところが、このノベライズの一番の成功点かな、と思います。それゆえに、ヒロインの影が薄い、という声もありますが、個人的には小説の二人のヒロインはモノローグがしっかりあったのでかなり感情移入できました。っていうか、『永遠のプラス』はほんとうまいわぁ。
 天美透の方の話のネタは、正直有沢まみずさん自身の小説でも使えると思うのに、そこをこのノベライズに持ってきたから余計に魅力が増した、って感じがします。うーん、やっぱすごいな。


 文章自体は、良くも悪くもラノベって感じで、マンガから入ってきた読者もすんなりと入りこめると思います。昔の有沢さんの作風の方が僕は好きなんですけど、こういうノベライズになったら、やっぱりこういう文章濃度の方がうまく感じるなぁ。


 そんなこんなで、値段分の面白さはあったと思います。有沢まみずと原作者・若木民喜に、そして神・桂木桂馬に盛大なる拍手を!



 PS:表紙のエルシィが邪魔に感じるのは僕だけじゃないはず!(神が見えないではないか!ww)
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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

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年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
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