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『ボトルネック』 著/米澤穂信  感想

2009.10.16 *Fri
ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫)
(2009/09/29)
米澤 穂信

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 ぼくはそれを見て、うっすらと笑った。



 さて。
 この小説、僕は読み終わったあとに、すげー腹が立ちました。
 こんな小説認めてたまるか、とすら思いました。
 けれど、心のどこかで、こいつは傑作だ、と思っている自分もいるんですよね。

 そんな小説。

 物語のSF展開だったりに期待している人は、読んでも期待外れだけですから読まない方がいいです。あと、ミステリ要素も面白くはありましたが、違和感覚えるだけで文句言う人は読まない方がいいです。ハッキリ言って、そういうところを気にする小説ではないと思います。




 以下、ネタばれありです。








 ぶっちゃけ、身も蓋もないいい方をしちゃえば、自分がいらん子だということを理解させられる物語ですね。

 正直、ライトSF風味を想像して読んでいた身としては、オチのダメージが大きすぎです。まあ、狙ってやっていると思いますし、ほとんどの人は同じようになったと思いますが。
 ほんとねー。リョウからすれば、自分がなしえなかったことを次々となしえている存在がいるのを見せつけられたら、絶望するなって方がおかしいでしょう。並行世界でのサキという存在は、ある意味でリョウの別バージョンみたいなもの。たとえば、AとBという選択肢を与えられてて、リョウが選んだ方はことごとく外れで、サキが選ぶ方は必ず正しいという、そういう実証を見せつけられたら、『自分』という存在に疑問を覚えない方がおかしいです。
 自分は必要ないんじゃないか、っていう疑問は、少なからず考えた経験があると思いますが、それを確証たるものまで見せつけられたら、はたして答えを出さずにいられるだろうか?

 主題としては、嵯峨野リョウという人間には、どんな存在理由があったか、ということなんですが。

 この話の中で、結局答えが出なかったんですよね。
 リドルストーリーといえば、先日出た『追従五断章』でも扱っていましたが、この『ボトルネック』ではその形式がとてもうまくマッチしているんですよね。この、もやもやとした感覚を残したまま終わるからこそ、読者はどうしてもすわり心地が悪く、本書のことを意識する。
 まあ、そういう終わりが嫌いな人には、本書は絶対にあわないと思いますけれど。僕は嫌いってまでじゃないけれど、正直あまりに後味が悪すぎてどうしても手放しに絶賛できない。すげーうまいんだけどね、ほんと。

 うーん、しかしこれは本当に初めての感覚です。普通ここまで嫌悪感覚えたら、二度と触れたくないって思うんだけどなぁ。



 さてさて。結局オチですが、これの解釈って、あんましっかりと言い切れないんだよな……。
 とりあえず、リョウが完全に一人になってしまった、というのだけは確かなんですよね。そこで彼は何を見たのか。ほほ笑んだことから、希望を見つけたのか、はたまたすべてに失望して途方に暮れた挙句の自嘲の笑いだったのか。
 個人的には、自嘲の笑いを浮かべてどん底まで落ち切ったところで、リョウは自分の存在を確かめられたんじゃないかなぁ、とも思うのですが。それまでずっと受動的で、内向的で、積極的に外に働き掛けなかったリョウは、これまで外からの影響だけで生活していたわけで、それを失ったことで自分の姿を発見したんじゃないかと思う。そこから這い上がれるかどうかは分からないけれど。

 あと、もう一つ。最後にサキから電話がかかってきますが、あそこで彼女は自分のことをツユというんですよね。リョウの世界では死んだはずのツユと。ここでは、サキの世界とリョウの世界は違う、ってことをわからせたかったんじゃないかなぁ、と思います。だから、サキの世界にあるようなものをないものねだりしていないで、自分の世界をしっかりとやれ、と。


 うーん、自分じゃこのくらいが限界だ。結局、ノゾミが願ったことに対してリョウがどう答えを出すかは想像できないし。

 とりあえず、多分単行本の方で米澤さんが『ボトルネックを外すだけじゃダメ』みたいな発言をしていたみたいですが、それを考えたら最後にリョウの存在に意味はあったのかどうかはわかると思う。


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『さよなら妖精』 著/米澤穂信  感想

2009.10.02 *Fri
さよなら妖精 (創元推理文庫)さよなら妖精 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
米澤 穂信

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 「人間は、殺されたお父さんのことは忘れても、奪われたお金のことは忘れません」




 つべこべ言わず、いいから読みなさい。
 そういいたくなるような話でした。ああ、面白かった。こういう形の青春ミステリーもあるんだな、と目からうろこの気分です。
 一応ジャンルとしては日常系ミステリーとなっていますが、それはどっちかというと味付け程度。ってかミステリー期待して読むんじゃないよ、と忠告したい。読ませる場所はそういうところじゃないんだから。青春の一ページと、それの終わり。そういったものが巨大なものを知ってしまうやるせなさとともに描かれている小説でした。
 これはほんと、古本なんかじゃなくて定価で買うべきだったなぁ、とちょっと後悔。うん、そのかわり、これからは米澤さんの本は全部新刊で手に入れてやる。

 とりあえず、おすすめ。いいから読めや。





 以下から、ネタばれありの感想。







 いろいろ考えさせられるような内容ではあるんだけれど、そんなことよりラストのやるせなさの方が強くてしんみりしちゃう方が多いんですよね。こういう結末にしかたどり着けなかったことに対する主人公の悔しさやら何やらがしんとしみわたってくるようで。


 結局のところ、この話の主題は主人公の守屋の青春の終わりを描いたんだなぁ、と読み終わった瞬間に思いました。
 自分には何かできるかもしれないと思いながらも、日常の中で何ができるかわからずにもがいている。そんな中で見つけた、可能性。マーヤという少女と触れ合うことで、自分を変えるのは彼女に関係するものではないのか、と思いながら追いすがっていく。
 けれど、それが最後のマーヤの兄からの手紙によって現実に引き戻される。確かに、彼自身は本気で何かを変えられると思っていただろうし、マーヤを救うこともできると思っていたかもしれないが、当事者たちからすれば滑稽以外の何物でもない。国際問題という大きな存在を前に、そういう素養も立場もない守屋は、ただひたすらから回ることしかできない。
 そのことを、僕には笑うことが出来ない。所詮、僕も守屋のように何かができると思いながら、何もできなかった人間です。彼のように、非日常的な存在が目の前に現れたら、それこそ自分にも何かが変えられるんじゃないかと勘違いしてしまっても仕方がないと思います。そして、その考えがおごりだとわかった瞬間が、すべてを思い出にしてしまう瞬間なのかもしれない、とそう思います。


 結局、戦争だなんだって今の日本人が言っても、それにどれほどの説得力があるか、って話なんですよね。ぶっちゃけ僕は戦争なんて知識でしか知らないし、それも漠然としたものでしかない。日本人のほとんどはそうじゃないかと思います。いくら自ら情報を集めたとしても、それはしょせん実体験とは違いますし、またどっちにしろ他人事です。当事者たちにしてみれば、同情されようがなにされようが、「結局あなたたちにはわからないでしょう?」が答えになるわけでして、いくら必死に守屋がユーゴスラビアとマーヤのことを理解しようとしても、理解はできても実感は出来ないわけでして。
 たとえば本書の感想を漁っていく過程で、戦争という事柄に対して主人公の考えの及ばなさを批判している感想が結構あったのですが、ではそういう人たちはどれだけ戦争というものを知っているのだろうか、とちょっと疑問に思います。確かに守屋の考え方は極端で、結局のところマーヤという人物を通してみるユーゴスラビアの戦争でしかないので、あまりにも稚拙な面はありますが、しかし誰だって似たようなものだと思います。それこそ、戦争なんて戦争を体験したことのある人にしかわからない。っていうか、何らかの事象は、同一の体験したことがある人にしか、本当の意味での理解はできないんですよ。特に戦争のような大きな事柄は、作中でもマーヤの語ることとニュースの語ることにちょっとした食い違いがあるのと同じで、一方の視点からは見れてももう片方の視点からはなかなか見ることが出来ない。守屋は守屋の視点でしかそれを見れないのだから、批判するのはお門違いだともおもうんですが。

 作中で文原が、『俺は、自分の手の届く範囲の外にかかわるのは嘘だと思っている』というセリフは、考えてみればこの小説の中でもとても重要なキーワードですよね。結局のところ、彼ら彼女らにとってマーヤという手の届く存在は本当でも、ユーゴスラビアという遠い国は、嘘、というよりも夢のようなもの。それを追い求めることを否定するわけではないですが、それをつかむためには自分の手の届く範囲が広くないとどうしようもない。所詮島国根性丸出しの人間にゃ到底無理、つーかわかった気になるのが一番悪いんじゃないかなーとか何とか思いました。(こうやって書いている状態でも、自分はわかった気でいるんだろうなぁと思うと、なんかやるせない)



 よし、真面目な話は終了。


 さてさて。キャラ話ですが、太刀洗さんが最後までかわいそうな役割だなぁ。最後の心情吐露がとても痛い。マーヤの最期を知ってギリギリの状態だったからこそ飛び出た本音がかわいそう。そこをぶつけられて、守屋も余計にダメージ受けたように思います。
 白河に関しては、守屋がマーヤにバレッタをプレゼントした時に詰め寄ったところが印象的すぎです。うーん、っていうか、はたから見ても太刀洗の想いはまるわかりだったのだろうなぁ。そういう誰かのためにかぶっていた猫をはぐ姿がなかなかいい感じ。
 文原に関しては、最後まで自分の関わるべき位置を定めていたところが潔い。彼のそういう態度があるからこそ、守屋の稚拙な憧れが際立つんですよね。どうせならもう少し彼と守屋の会話がもっと欲しかったところ。
 最後にマーヤですが、ああ、もうこの娘いいな。古典部シリーズの千反田えるにキャラが似ていますが、こういうキャラクターの方が話を進めやすいというのはあるのでたぶんわざとでしょうね。彼女に関しては、いろいろ不明な点が多い(日本語のうまさ、日本に具体的に何をしに来たのかは、説明はあったけれどどうも具体的ではないんですよね)ので、あまり釈然としませんが、まあそこを求めるのは無粋ですかね。あんまり突っ込んでしまうと、彼女がユーゴスラビアのどこ出身なのかが分かってしまうでしょうし。



 正直、この話だけで終わるのはもったいないなぁと思う物語ですが、完結しきっちゃっているのでどうしようもないですね。うーん、やるせないって言うかなんていうか。こういうのを青臭いって言い捨てるのは簡単ですが、誰にだってこういう感情がある時代はあったってことを分かってほしいなぁ。
 なにはともあれ、面白かったです。うーん、ほんと米澤さんがどんどん好きになっていく。

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『追想五断章』 著/米澤穂信  感想

2009.09.27 *Sun
追想五断章追想五断章
(2009/08)
米澤 穂信

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 すべてはあの雪の中に眠っていて、真実は永遠に凍りついている。




 というわけで、米澤穂信の新刊、やっと手に入りました。

 しかし、分量と文体の割には、構成に無駄がないからか、さくさくと読めた気がします。一つ一つの要素が次への布石になっていて、最後にしっかりと謎解きがされるという、ミステリとしては基本の方式ですが、題材が題材だからか、新鮮に読めました。
 僕としてはすごく面白かったのですが、物語としての盛り上がりはそれほどないので、そういうものを期待する人にはお勧めできないかもしれません。そもそも、帯の煽り文章が『青春すぎ去りしあとの人間を描く』ですしね。
 個人的には、最後の『雪の花』に至るまでに、主人公の視点から断章の執筆者である北里の視点にシフトできれば、それこそぐっと来る余韻が感じられるのではないかと思いました。



 それでは、ここから先はネタばれありで。




 この作品のキモである、叶黒白の短篇を、いかに読むかが、楽しめるか楽しめないかの境だなぁ、と思いました。
 僕自身、あまり時代がかった文体は好きではないので、はじめの『奇跡の娘』の文章では、ちょっと戸惑いました。けれど、これに関しては、最初は流し読みしても終わりでどういう問題が浮上するのかはしっかりと読めると思うので、次に続けることができます。
 その次の『転生の地』で僕は面白いな、と思うことができたので、ゆっくりと物語の中に入っていくことができました。もしここで入れなかったら、次の『小碑伝来』はもっと文体が堅いので、ちょっときついかもしれないなぁと思いました。
 そして、この断章をよく読んでみると、結末は確かにしっかりとあてはまるけれど、何か坐りの悪い気持ちがするように思えてきました。まあ、それが結局はわざとやっていたせいなのですけど、そういうところもうまく作ってあるなぁ、と純粋に思います。(そして、それをバラバラにした北里の真意も、娘を思う気持ちとしてしんみりとなれてうまいと思う)


 物語の主人公である芳光のキャラも、この話としてはきれいにマッチしていたと思います。
 芳光は、話に深入りはしますが、しかしそれによって何か自分が強く変わることはありませんでした。もちろん、最終的にはこの件が終わったことで、実家に帰ることを決意しますが、それは結果として生じただけで、内面が変わることは一切なかったと思います。というより、変わりたいと願って断章探しをしていたけれど、変わることができなかった、という方が正しいのでしょう。
 そのため、彼の視点は非常にドライに感じます。一つ一つの断章を集め、それを読む。その時の芳光の心情はあまり描かれないので、読者は自分自身の気持ちで断章を読むことができます。そうすることで、最終的に『雪の花』において、読者はそれぞれの気持ちで北里の真意を想い、話を追えることができるのではないでしょうか。このはっきりしないところが嫌いな人はだめでしょうが、こういう雰囲気が好きな人にはたまらない話だと思います。


 しかし、思い返せば思い返すほど、この話は主軸以外はひどく現実くさい物語に思えてきます。そういうところが、本書を読み終えた後の脱力感や物足りなさを感じるのではないかと。
 実際、主人公は実家に帰っちゃうし、途中まで手伝ってくれた笙子はあっさりと調査からおりちゃうし、といろいろ現実的すぎる問題が多くあります。まあ、だからこそこの小説がおもしろいと思えるのですが、そこを肯定的に見るか否定的に見るかで評価が完全に分かれるところなんでしょう。ってか、正直空想の中でくらい夢を見たいと思っている人には、絶対にお勧めできないですよね。



 そんなわけで、個人的にはかなり楽しめました。ってか、米澤さんはほんと少しずつバリエーションを増やしているなぁ。どの米澤が好きかはその人次第。まあ、僕は今のところ全部好きです。

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『インシテミル』 著/米澤穂信  感想

2009.09.10 *Thu
インシテミルインシテミル
(2007/08)
米澤 穂信

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 結城理久彦は、車が欲しくて応募した。



 何この表紙詐欺。
 というわけで、米澤穂信版クローズドサークル。バトロワじゃないよ、あくまでミステリだよ、な物語。

 面白かったです。こういう系統の作品は、ありふれている分作者の力量がまっすぐに問われるのですが、そこはさすが米澤穂信。エンタメとしての面白さも忘れず、それでいてミステリにおける最低限を保っていると思います。
 ただ、本格好きの人はそこまで面白くないかも。僕みたいなライトミステリ好きは気軽に読めて「おもしれー」と言えるんですが、ミステリとして凝っているかといえばそこまでひどく凝っているとは思えませんし。まあ、気軽に楽しむ分には十分面白かったです。っていうか、一気読み推奨。これは時間をおくともったいない。






 そんなわけで、こッから下はネタばれあり注意。







 話の内容の方は、いい感じにライトミステリーだったと思いますけど、所々でミステリーを皮肉っているところも面白かったです。まあ、物語の都合上、登場人物たちがミステリーっぽい行動を起こすのは仕方ないのでスルーすべきですが、たとえば渕さんみたいに論理的解決が通用しない相手がいる、というのを出してきたのは面白かった。極限状態で、人間がどうなるかなんてその時にならないとわからないんだから、できることは想像することだけだけれど、ああいう反応をとるのがほとんどだろうなぁ、と思ったりします。
 あと、凶器のメモ書きに注意を払わなかったり、とかも、ミステリに精通していたり、少しでもかじったことがあれば気になるかもしれませんが、ぶっちゃけそんなん気にしている余裕ないですもんね。まあ、そこの穴をついたからこそああいうトリックが完成されるんですが。


 登場人物について。

 主人公のキャラは、いい感じにひょうひょうとしていて、それでいて危機感がゼロでないところがよかったなぁ、と思います。これで自分が殺されることを考えていなかったら問題ですが、そういう恐怖もちゃんと描いてくれましたし。
 そして、解決編でのノリは、身の程をわきまえているけれど、自分の身の丈に合ったところは強引に行くところがかっこいい。そして、そういう立ち位置を貫いているからこそ、最後にああいう選択ができるんですよね。しかし、もったいないなぁ、五千万近く。

 須和名さんに関しては、結局最後のあのためだけの装置だったのか……。なんだかんだで、彼女の最後の評価の所為で、この物語で用意されたものが全部低レベルと切って捨てられているのが面白かった。そういうところ、米澤さんも本格というほどではないと理解してやっているんじゃないかと思えます。……これ、続編があるとしたら。自分でハードル上げているだけではあるけれど。

 関水に関しては、正直結構いいキャラしていただけに、犯人だとわかってちょっと衝撃でした。しかし、肝っ玉大きいなこいつ。いくら覚悟してきていると言っても、一日目の段階でお金の計算から凶器のことまでやりきったんだから。結局彼女がどうしてお金を欲していたのかは不明でしたが、ある意味語らぬが花だろうなぁ、とも思います。語らせるつもりなら、最初からもっと伏線張っただろうし。

 安東に関しては、いろいろすごく残念。自尊心ばっかり強くてギリギリのところでそんな風に崩れ落ちるなんて。始まりの動機と終わりの姿があまりにも憐れすぎて……。結構いいキャラしていたんだけどなー。


 しかし、最初はだれがだれか判別するの大変だったけれど、ちゃんと登場人物に個性をつけてくれたのと、自己紹介のページをひとつにまとめてくれたおかげで案外早く把握できた。そういうところも、うまいなぁ、と思った作品でした。


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『儚い羊たちの祝宴』 著/米澤穂信  感想

2009.08.26 *Wed
儚い羊たちの祝宴儚い羊たちの祝宴
(2008/11)
米澤 穂信

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 バベルの会はこうして復活した。




 というわけで、米澤穂信の短編集。使用人と主人にまつわるお話が五つ掲載されています。

 この中の短編のうち、『玉野五十鈴の誉れ』だけは、『Story Seller』で読んだことがあって、すごく面白かったのを記憶していたので購入。ぶっちゃけ、ストーリーセラーでは、インパクトが飛び抜けてたのは有川さんだったけど、一番面白かったのは米澤さんだったしなぁ。

 ちなみに、五つ全部面白かったです。どれもオチがうまく利いていて、読み終わった後の読後感がいい。バッドエンドも多いですけど、それで胸糞悪くならないところが素晴らしいなと思います。


 ホント、おすすめですよぉ。







 それでは、ここから先は各話のネタばれも含めて。






○身内に不幸がありまして
 「会長、実は……。身内に不幸がありまして」

 オチが……オチがぁ……。
 何となく最後にお嬢様の述懐が始まったところでオチが読めてしまいましたが、余計にやべぇよ。最高の殺人の理由だな、おい。
 特に、夕日の思いがただの使用人としての思いからかけ離れてしまったのが分かってしまったあとだからこそ、余計に切ないって言うか、やるせない。

 しかし、三年目まではこれでいいとして、次の四年目もやる気なのだろうか、このお嬢様は。それとも、今年でバベルの会のお泊り回はおしまいってわかってたのかな? 大学ってことは四年制でいいと思うんだけど……。



○北の館の罪人
 「殺人者は赤い手をしている。しかし彼らは手袋をしている。これは光次が言ったことだがね」


 二段オチが素晴らしい。
 使用人のあまりは実は……けれど、早太郎様も実は……で、最後に赤い手袋。うわぁ、すげぇ。
 ほんとうに最後まで欲がなくて、完全に死んだ人間として生きた早太郎の生き様がすごい。最後のあまりの絵を、どういうつもりで書いたのかいろいろ想像していくとなかなか興味深いです。

 しっかし、腹黒いなこの使用人は。まあ、厳密な意味では違うんでしょうけど。



○山荘秘聞
 「口止め料です。どうぞ、この山荘でのことはご内密に」


 この使用人の屋島さんは最高の萌えキャラ。異論は認めない。
 というわけで、オチでときめいてしまいました。うわ、なんだこの使用人の鑑みたいな女。こんな使用人を雇っておいて放置するなんて、どんだけ宝の持ち腐れやねん!
 コレクションを見せたくなる気持ちはよくわかります。うん、そして自分の手柄を見せびらかしたいのもよくわかる。そのためだけにがんばる屋島さんがすげぇ健気。もう、あんた誰かの嫁に行けよ、そうすれば一生その人に尽くせるから!

 内容はホラー的でしたが、はじめの流れ的に越智さんが生きているのはたぶん確実だろうなぁと思っていたので、あんまり心配はなかったです。しかし、熊の手かぁ。



○玉野五十鈴の誉れ
 「ここにおります、純香さま。玉野五十鈴は、ここにおります」


 『Story Seller』で一度読んでいたのですが、改めて読んでも面白かったです。

 純香と五十鈴の関係は、主人と使用人という関係の理想の形だなぁと思います。建前としての主従もしっかりと保ちつつ、心はしっかりと伝えあっているという。こういう信頼関係は、なんだかいいなぁと思います

 最後。おばあさまの最後はすげぇスカッとします。そのあと五十鈴と再会できたらいいなぁと思うのですが、どうなるんだろ。続きは、野暮なだけですけどね。



○儚い羊たちの祝宴
 わたしは


 アミルスタン羊。
 よし、覚えたぜ。(何のために……)

 ちゃんと匂わせながらも、最後にアミルスタン羊の正体を明言せず、ただ描写だけで知らせたのがナイスだと思います。っていうか、ある意味ホラーだぜこれ。
 厨嬢の設定とかは、実在にあるみたいなので、しっかりそういうのも調べていてすごいなぁと思いました。っていうか、その設定があるからこそ、最後のオチが映える。平然とバベルの会を売る鞠絵怖ぇ。ってか、肉がついていないって……。

 表題作だけあって、インパクトがすさまじかったです。それでいて、後味がそれほど悪くないのが素晴らしい。いやあ、さすが米澤さん。面白い物語、ごちそうさまです。



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プロフィール

西織

Author:西織
大学に入学を果たしたただの読書好き。

拍手がえしに関してはこちらでご覧ください。
http://blogvote.fc2.com/pickup/emptyreader


年齢:19
誕生日:九月九日
血液型:A型
趣味:読書
夢:作家(前途多難)


主に好きな作家
・西尾維新(番外位)

・奈須きのこ
・辻村深月
・佐藤友哉
・竹宮ゆゆこ

上記の作家の全ての作品を愛しています。

主に好きな漫画家
・児玉樹
・荒井チェリー
・椿いづみ
・福本伸行

漫画の神
・手塚治虫


補足
西尾維新の傑作はきみぼくシリーズだと思って日々を生きています。あのよさをわからない人間が多くて残念に思う。(とくに四作目)
そんな僕は生粋の西尾信者なので、いくらでも語れますし、いくらでも語りつくしてやりますよ。


『空っぽの知識』の別館ですが、よろしくお願いします。
http://tukimaturi.blog89.fc2.com/

初めての方は、カテゴリ内の『未分類』を先に読んでください。



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